[粕谷秀樹]エメリのプランは柔軟なのか一貫性に欠けるのか 連携を磨けずに時間だけが過ぎていく

粕谷秀樹のメッタ斬り 019

粕谷秀樹のメッタ斬り 019

アーセナルで勝負の2年目を迎えたエメリ監督 photo/Getty Images

チームとしてどう動くのか

ノースロンドン界隈がかまびすしい。

トッテナムは精彩を欠き、マウリシオ・ポチェッティーノ監督とハリー・ケインが不調に終わった夏の移籍マーケットを嘆いている。内向きの不満はお家騒動の前兆といえるかもしれないね。

アーセナルも相変わらずフラフラしている。夏の移籍は大成功だったようにも感じられたけど、やっぱり守備が安定しないし、ウナイ・エメリ監督のゲームプランは柔軟なのか一貫性に欠けるのか、評価が分かれているようだ。
エメリは対戦相手をよく研究している。選手個々の可能性を信じ、来る日も来る日も同じメンバー、変わらないフォーメーションで臨んだアーセン・ヴェンゲル前監督とは、タイプが異なる指揮官だ。しかし、就任2シーズン目を迎えても、その手腕に疑問符が付きまとう。2-0のアドバンテージを守り切れなかったワトフォード戦、3ポイントを得たとはいえ、ストレスが溜まる一方だったアストン・ヴィラ戦など、先が思いやられる試合ばかりだ。

ポゼッションなのか、カウンターなのか、もう少しハッキリさせた方がよくはないかな。もちろん、ハイブリッド型が理想だけれど、エメリ体制下のアーセナルはどっちつかずでしょ。その結果、先発メンバーがコロコロ変わり、連携を磨けずに時間だけが過ぎていく。こんなことを繰り返していたら、いつまで経っても監督のコンセプトは伝わらないよ。チームとしてどう動くのか、一刻も早く明確にしないとね。

ジョージ・グラハムに率いられた当時は、「1-0 to the Arsenal」とメディアに揶揄された。そこにヴェンゲルがやって来て、心地よくボールをキープしながら、試合全体をコントロールするアタッキング・フットボールを根づかせた。これがアーセナルのスタイルというか、哲学であり、アイデンティティでしょ。

アーセナルのキャプテンを任されたジャカ photo/Getty Images

48グループの真似をしている!?

ところで、エメリの評価が大暴落しかねない出来事があった。つい先日、選手投票によってグラニト・ジャカがキャプテンに選ばれた。何やってんだ!? 48グループの真似事か!? キャプテンの選出は監督の任務じゃん。チームをまとめられるのはだれなのか、監督、コーチと選手の間に入り、時には嫌われ役にもなれる重要なキャストを選手投票で決めるなんて、どうかしているよ。監督の責任を放棄したと批判されても、言い訳できないな。

一軍の将に必要なリーダーシップが、アーセナルのような強豪を率いるカリスマ性が、エメリには宿っていないのかもね。マンチェスター・ユナイテッドのオーレ・グンナー・スールシャール監督と違って、強化担当に恵まれているよ。ポール・ポグバのような強烈なエゴを持った選手もいない。それでも、いろいろなものが燻ってきた……。

アーセナルは世界的なブランドだ。監督を務めるのはさまざまな覚悟と責任が必要だ。エメリは、このチームを率いる資格を満たしているのかな。かなり不安。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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