日本代表は今後も日本人監督の方がいい? 外国人監督のメリットとデメリット

新たに代表監督となった西野朗監督 photo/Getty Images

注目される「コミュニケーション不足」というワード

2018ロシアワールドカップ終了後、日本サッカー界はどのようなビジョンを描いて2022年大会を目指していくつもりなのだろうか。JFAの田嶋幸三会長がヴァイッド・ハリルホジッチ前監督解任会見で口にした「コミュニケーション不足」というワードは、今後の監督選びに大きな影響を与えることになるだろう。

コミュニケーション不足が具体的に何を指しているのかは分からないが、外国人監督を招聘する以上コミュニケーションに多少のズレが生じるのは仕方のないことだ。通訳を交えれば互いに言葉の意味は理解できるだろうが、本質的な部分まで理解するのは難しい。また言葉だけではなく、日本人独特の考え方や文化を外国人監督が完璧に把握するのも無理がある。そのコミュニケーションをハリルホジッチ前監督解任の理由にしてしまった以上、ロシアワールドカップ終了後に再び外国人監督を招聘すれば矛盾があると指摘されるだろう。コミュニケーションの問題といっても様々だが、そうした批判を避けるには日本人監督を指名するのが無難なやり方だ。

しかし、日本人監督を招聘することで生まれるデメリットもある。日本のサッカー界ではしきりに「日本人らしいサッカー」という言葉が叫ばれ、日本人の強みである技術や俊敏性を活かせるサッカーをすべきと考える者が多い。日本らしさにこだわるのもいいが、それにこだわりすぎると客観的視点から見た欠点に気付けない可能性がある。世界の強豪相手に勝つために不足しているものは何なのか。日本らしさにこだわってストロングポイントばかり見ていると、改善すべき部分が見えなくなってしまう。

一方でハリルホジッチ監督のように、外国人監督は日本の実力を客観的に見てくれる。やや後ろ向きかもしれないが、ハリルホジッチ監督は日本の実力と世界トップの実力を冷静に見極め、守備的なスタイルからゲームを組み立てる道を選ぼうとしていた。これと同じ道を選択する日本人監督がどれだけいるだろうか。

イビチャ・オシム監督は「考えて走るサッカー」、ハリルホジッチ監督は「デュエル」など分かりやすいワードが出てくるのも特徴的で、これは日本サッカー界に欠けていた新たなアイディアなのだ。このテーマを突き詰めることで成長した選手も多く、本場のサッカーを知る外国人監督だからこそ教えられることがある。このテーマはJリーグにも浸透し、現在FC東京やサンフレッチェ広島が速攻を1つの武器に好成績を収めているのもハリルホジッチ監督が何度も言ってきたデュエルや縦に速くといった言葉があったからだろう。

逆に外国人監督を招聘するデメリットは、4年ごとにスタイルがコロコロと変わってしまいやすいことだ。W杯での経験が豊富で、なおかつ日本人に合うサッカーを志向している外国人監督を呼び続けるのは無理がある。長期政権を託せるような監督がいればいいのだが、そのためにはまず本大会で結果を残さなければならない。結果が残せなければ、また4年周期で監督を代えることになるだろう。また、外国人監督には、日本の文化に馴染めるかどうかという難しい壁がある。今回のハリルホジッチの解任劇に、その難しさを感じ取った人も少なくないはずだ。

ザックジャパンとハリルジャパンで大きくスタイルが変化したことは、結果的に代表に混乱をもたらした。JFAの強化方針にもよるが、ワールドカップごとにサッカーの中身を変えてしまうのは大きなデメリットを生む。4年ごとにスタイルが変わればユース年代の選手や指導者の目指すものが定まらず、どういった選手が日本サッカー界に求められているのかが分かりにくくなってしまう。その点日本人監督ならばJFAの強化ビジョンのもと、4年を超えて長期的に代表を指揮することも現実的で、代表チームのベースとなる戦術をある程度固定させることができる。この一貫性は近年の日本サッカー界に欠けているものだ。

Jリーグが発足して25年。いわば外国人監督は日本サッカー界にとっての渡来人のような存在だった。まだ日本サッカー界が知らない知識を教えてくれる存在で、そうした教えを存分に吸収してから徐々に日本人監督へ舵を切っていくのが理想的なやり方だったはず。果たして今日本人監督に代えていくべき段階なのか、これには疑問も残る。日本人監督の理想的な条件としては、選手としてワールドカップを経験した者、海外のトップクラブで結果を残し、若い代表選手たちからリスペクトされる者、欧州で生まれる最先端の戦術を熟知し、日本サッカー界に新たなアイディアを植え付けられる人物だ。これらの条件を兼ね備えた指導者は少なく、最低条件ともいえるワールドカップを経験した指導者すらほとんどいない。そう考えると、まだ日本人監督体制へ舵を切っていくのは早すぎるようにも思える。

田嶋会長はロシア大会で勝つ確率を1%、2%でも上げるために監督交代を決断したとコメントしていたが、これは大きすぎる賭けだ。ロシア大会以降の明確なビジョンを持っての監督交代なら構わないが、ロシア大会のみのことを考えての判断ならば問題だろう。今後外国人監督招聘のハードルが上がるのは確実で、日本人監督しか選択肢がなくなってしまうかもしれない。日本代表はロシア大会以降も日本人監督で戦っていくべきなのか。今回のワールドカップより、今後の日本サッカー界の方が不安は大きくなっている。

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