[水沼貴史の欧蹴爛漫010]レアルは自陣に引きこもるな! ハイプレスでゲームを支配せよ

レアルはハイプレスが得策です

レアルはハイプレスが得策です

逆転ゴールを演出したアセンシオ(写真手前右)とバスケス(写真手前左) photo/Getty Images

水沼貴史です。UEFAチャンピオンズリーグの準決勝・1stレグ(バイエルン・ミュンヘン対レアル・マドリード)をチェックしましたが、レアルの試合巧者ぶりが光っていました。前線からの連動した守備でバイエルン陣営を揺さぶり、カウンターで相手を沈めた戦いぶりは見事でしたね。今回は5月1日(現地時間)に行われる2ndレグで、両チームがどんな戦い方をすべきか見ていきましょう。

1点リードの状態(2-1)で2ndレグを迎えるレアル・マドリードですが、自陣に引きこもるような戦い方をすべきではないでしょう。相手の攻撃を自陣で受け止める構図を作ってしまうと、自分たちのゴール前でのフリーキックやコーナーキックが増え、失点のリスクが高まります。1stレグでもセットプレイから相手DFマッツ・フンメルスやニクラス・ズーレにゴールを脅かされていましたので、レアルとしては極力相手を自分たちのゴールから遠ざける、欲を言えば相手のMFやFWにボールが渡らないようにしたいところです。1stレグでは右のウイングFWに配置されたルーカス・バスケス、そして中盤のトニ・クロースやルカ・モドリッチまでもがバイエルンのセンターバックにプレッシャーをかけ、ビルドアップを封じました。特にサイドチェンジのボールをよく蹴るDFジェローム・ボアテング(バイエルン)に対し、モドリッチやクロースが巧みにパスコースを切っていたのが印象的でしたね。バイエルンのセンターバックとしては相手の陣形を横に広げるためのパスを前線に供給できず、窮屈な攻撃を強いられていたのではないでしょうか。レアルとしては1stレグと同様、バイエルンの最終ラインから中盤へのパスをハイプレスで寸断し、ショートカウンターに繋げる。この戦い方を続けるのが得策だと私は思います。1stレグではMFイスコが負傷による交代を余儀なくされましたが、代わりに投入されたマルコ・アセンシオがハイプレスを仕掛けてラフィーニャ(バイエルン)のパスをカットし、57分の逆転ゴールに繋げています。攻守両面でハードワークを厭わないアセンシオが、2ndレグでもイスコの穴を埋めてくれるでしょう。

また、1stレグで負傷したDFダニエル・カルバハルのコンディション、そして彼が欠場となった際に誰が右サイドバックに起用されるのか。この点がひとつ勝負のカギを握りそうです。頼みのナチョが負傷離脱中ですので、本職の右サイドバックは事実上アクラフ・ハキミのみとなりますが、19歳の彼が対面のフランク・リベリを抑え込めるかは未知数です。大舞台での経験が少ない彼がリベリを止めようと必要以上に気負ってしまい、自陣ゴール前やペナルティエリア内でファウルを犯してしまうことが想定されます。カルバハルが本調子であれば問題ありませんが、万が一の場合は1stレグの後半と同様、バスケスを右サイドバックで起用するのがベターでしょう。ジネディーヌ・ジダン監督に重宝されているアセンシオとバスケスが2ndレグでも期待に応え、サイドでの攻防で優位に立てるか。この試合をご覧になる皆さんには、まずはこの点にご注目頂きたいですね。

最低でも2点が必要なバイエルン SBの攻め上がりがカギ

最低でも2点が必要なバイエルン SBの攻め上がりがカギ

1stレグで先制ゴールを挙げたキミッヒ photo/Getty Images

一方のバイエルンですが、1stレグでは右サイドハーフのアリエン・ロッベンの負傷交代により、攻撃がリベリのサイド(左サイド)に偏ってしまいました。万が一ロッベンが出場できない場合は、右サイドバックのジョシュア・キミッヒの攻め上がりがより重要になってくるでしょう。レアルはハイプレスを仕掛けてくると思いますが、バイエルンの面々のパススキルをもってすれば、彼らの包囲網を掻い潜ることは可能です。キミッヒとしては1stレグの先制シーンと同様、前掛かりになったレアルのサイドハーフやサイドバックの背後を突く動き、または自軍のサイドハーフ(ロッベン、もしくはトーマス・ミュラー)を追い越す動きを増やしたいですね。また、負傷離脱中のダビド・アラバ(左サイドバック)の状態もキーファクターとなりそうです。スプリントの回数やリベリとの連係では、ラフィーニャと比べて一日の長があります。彼が復帰できれば理想的ですが、それが叶わない場合でもラフィーニャが1stレグ以上にオーバーラップを行い、リベリをサポートする必要があるでしょう。

1stレグで1得点に留まったバイエルンですが、チアゴ・アルカンタラのパスに反応したロベルト・レヴァンドフスキが終了間際に惜しいシュートを放つなど、それなりに決定機を作ったのも事実です。サイドバックのオーバーラップを活かしながら相手の陣形を横に広げ、それによって生じた中央のスペースにチアゴやハメス・ロドリゲス、ミュラーなどを走らせる。この攻撃を繰り返すことができれば、2ndレグでの複数得点も充分に見込めます。バイエルンの攻撃力が勝るか、それともレアルの守備力が勝るか。ビッグクラブ同士の熱き攻防を、どうか楽しんで下さいね。

ではでは、また来週お会いしましょう!

※UEFAチャンピオンズリーグの準決勝・2ndレグ、レアル・マドリード対バイエルン・ミュンヘンの一戦は、5月2日(日本時間)の早朝3時45分にキックオフ!

水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。



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