長いシーズンの間にはどんなチームにも好不調の波があります。現在、J1は第7節を終えたところですが、順調に勝点を伸ばしているチームがある一方で、なかなか本来の力を発揮できていないチームがあります。
川崎フロンターレは指揮官が変わり、大久保嘉人が抜けるなどチーム編成に変動があるなか、シーズン序盤からケガ人が相次ぎました。それでも、中盤には質の高い選手が揃っていて、パスをつなぐサッカーができています。守備に関しても、守るときは守ると割り切っていて、粘り強い守備ができています。ACLでは4戦して4引分けですが、攻撃力のある広州広大と2試合を戦って1失点でした。
勝ちきれない原因は攻撃面にあり、点を取れるようになれば自然と勝点も伸びてくると思います。開幕当初は阿部浩之を前線に起用するゼロトップを採用し、うまくいくのではと思っていた矢先に負傷してしまいました。また、重要な役割を果たすと考えられていた家長昭博、効果的なラストパスを供給する大島僚太なども負傷離脱したことで、攻撃面に関しては迫力不足が否めません。
ただ、こうしたなかドリブル能力が高いハイネルが「個」の力で打開を試みることで良いアクセントになっています。パスをつなぐサッカーを指向する川崎フロンターレのなかで変化をつけることができる選手で、今後ケガ人が復帰したときに鬼木達監督がハイネルをどう起用するのか注目しています。
第7節を終えてサンフレッチェ広島は17位ですが、本来この順位にいるチームではありません。攻撃を支えていた佐藤寿人、ピーター・ウタカが抜け、新たに工藤壮人を獲得しましたが、まだフィットしていません。また、中盤では森﨑和幸がチームから離脱していて、青山敏弘に大きな負担がかかっています。
こうした状況を考えると、丸谷拓也、茶島雄介、森島司、高橋壮也といった若い選手たちの成長が重要になってきます。森保一監督のもと目指すサッカーは確立されていて、堅守をベースに自陣からしっかりとパスをつなぐスタイルに変わりはありません。若い選手を起用してどう結果につなげるかが、森保一監督に求められていることになります。
ベガルタ仙台は4バックから3バックへとシステムを変更したなか、渡邉晋監督がイメージする理想と現実がかみ合っていない印象です。開幕当初は勝利する試合もありましたが、第5節川崎フロンターレ戦あたりから両サイドのウィングバックの背後を狙われ、失点を重ねています。前からプレスをかけてもボールを奪えず、奪えたとしてもビルドアップするときに単純なミスが発生するなどチームがうまく機能していません。
失点が多いのは選手にとってショックが大きく、悪い影響をもたらします。内容を追求するのも大事ですが、ひとつの勝利がクスリとなって自信につながるので、結果を残すために5バックにしてスペースを消すといった割り切った戦い方も必要だと思います。
大宮アルディージャは開幕から6連敗しました。指向するパスサッカーが対戦相手にスカウティングされ、攻撃のスイッチを入れるためのパスを封じられているため、前線のドラガン・ムルジャにボールが収まっていません。そのため、大前元気や江坂任の良さを引き出せずにいます。ただ、決して悲観する内容ではなく、自分たちのサッカーをしようとするなか、相手にしっかりと対応され、焦ることでミスが出ています。自信を取り戻す“なにか”があれば、現状を打破することはできるのではないでしょうか。