ブラジル人選手が目指すべきはネイマールではない ”欧州らしい選手”になった赤い10番目指せ

コウチーニョこそ世界基準

今ブラジルのサッカー少年たちは、ほとんどの者がエース・ネイマールのような選手になりたいと考えていることだろう。今夏おこなわれたリオデジャネイロ五輪では母国を優勝に導き、所属するバルセロナでもリオネル・メッシらとともにゴールを量産。まさにスーパースターと呼ぶにふさわしいパフォーマンスだ。

誰もがネイマールのようになりたいと憧れを抱くだろうが、ネイマール以上にブラジルが必要としているタイプの選手がいる。それがリヴァプールの10番を背負うブラジル代表MFフィリペ・コウチーニョだ。コウチーニョはここ1,2年で評価を急激に高めており、バルセロナやレアル・マドリードでプレイするにふさわしい選手とまで言われている。

そのテクニックは異常なレベルにあり、先日の2018ワールドカップ南米予選・アルゼンチン代表戦でも左サイドのカットインから強烈なミドルシュートを叩き込んでいる。ボールを正確に操る技術、ドリブルのスピード、そして最近精度が増しているミドルシュートと、コウチーニョの存在感はネイマールにも劣ってはいない。
しかし、コウチーニョの魅力はこれだけではない。ユルゲン・クロップ率いるリヴァプールで見せているように、守備にも走れるところがこれまでのブラジル人選手との大きな違いだ。かつてインテルに所属していた頃のコウチーニョは自分勝手な個人技ばかりと批判も受けたが、そこでの挫折から学んだのか守備にも精力的に走るようになった。テクニックのある10番は過去のブラジル代表にもたくさんいたが、守備にも走れる者はそれほど多くはない。

以前からブラジルはどこか攻守分業制のようなやり方になってしまっており、攻撃はネイマールらずば抜けた才能を持つ選手に任せ、守備はカゼミーロやフェルナンジーニョといった相手を潰すことが出来る選手が担当してきた。しかし、そのやり方は欧州のトップレベルでは通用しにくくなってきている。これまで以上に全員攻撃、全員守備が徹底されている現代サッカーでは、分業制で勝ち抜くのは難しい。ブラジルは2014ワールドカップでドイツ代表に1-7と衝撃的なスコアで敗れたが、欧州のトップチームとの組織力の差を痛感させられるような内容だった。

攻撃、守備と各ポジションにエキスパートが揃っているものの、ブラジルの選手たちは得手不得手がはっきりしている。ネイマールも守備にはそれほど走るタイプではなく、カゼミーロら守備的MFの選手たちは攻撃にアクセントをつけるパスなどは得意としていない。その点、コウチーニョには目立った弱点がない。ボール奪取などが抜群に上手いわけではないが、守備をサボるケースはほとんどない。サイド、トップ下、インサイドハーフと複数のポジションに適応できることも強みだ。欧州らしい選手になったコウチーニョこそ、現代のブラジル代表が目指すべき1つのモデルと言える。

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