ついに鹿島も蹴散らした復調のG大阪 カギを握ったのはアンカー山本悠樹の戦術眼

苦手としていた鹿島も破り復調のG大阪(画像はイメージ) photo/Getty Images

ネタ・ラヴィ不在を感じさせないパフォーマンス

 長い長いトンネルを抜けリーグ戦3連勝中のG大阪。しかしこの試合の相手は過去19勝33敗13引分けと苦手にしている鹿島。しかも鹿島は現在9戦負けなしと開幕直後の不振から完全に復調している。ましてG大阪はボランチのネタ・ラヴィ、FWイッサム・ジェバリがともに代表召集でこの試合はベンチ外。苦戦が予想された。

 しかし一旦蓋を開けるとG大阪が圧倒的にボールを保持し、鹿島ゴールに迫る。15分、34分と早い時間に効果的にゴールを積み重ね。終盤の鹿島の反撃も1点のみに抑え込んだ。鹿島の岩政監督は「試合を通してガンバに上回られてしまったので(この結果は)仕方がないと思う」と完敗を認めた。

 攻守に躍動したG大阪だが、中でもネタ・ラヴィの不在を感じさせず、[4-1-2-3]のアンカーとして攻守のつなぎ役となり効果的な動きを見せたのが山本悠樹だ。サッカーというスポーツを理解する上でも彼の動きには非常に学ぶべきところが沢山あった。そこでポヤトス監督の評価とともに、山本悠樹のコメントでこの試合を振り返る。
 まずはポヤトス監督。

「(山本のことは)本当にスペシャルな選手だと自分自身は思っている。どこがスペシャルかというと考えるスピードの速さ、攻守においての先読みしていく力、頭の回転がすごく速い。それが今日の試合でも出たのかなと思う。G大阪にとって本当に未来に向けて重要な選手で、最近自信をつけてきて、リーダーとしての自覚というのが出てきた。試合の中でいい表現が彼の中でできているんだと思う。本当に素晴らしい選手だ」

 その判断の速さ、そしてスペースを見つけ出す賢さに賛辞を贈った。

 では山本本人はどのようなことを考えながら試合を戦っていたのかが気になる。

「スカウティングでも(鹿島の選手が)間に入ってくると聞いていたし、サイドハーフが内側に入ってきて色んなパスコースを作られるみたいな話があった。360℃どこに立たれているのかを気にしながら、ダワンにも伝えながら、後ろともコミュニケーションを取りながら、どこに立たれたら嫌かなと。後はロングボールを蹴ってきたので、そのセカンドボールへの反応は試合を通してやろうと思っていました。それがいい形でできたと思う」

「前半1回だけ仲間選手に走られて、『これがしたいんやな』って後ろと話した。あそこにボールが入るのが一番危ないと思ったので、それを可能な限り回数を減らすということで。(鹿島は)1対1だと強さあるのですぐにサポートに入った」

 過去の対戦成績を考えると「結構鹿島は嫌やなって感じがあったが、あんまり(プレスに)来なかったのか、来れなかったのかは分からないが、僕はあんまりボールを触らないでおこうかなと。外回りで進めそうなシーンが多かったんで。あとは(鹿島の)ツートップを(意識的に無駄に)走らせる。同サイドに寄ったら染野選手や鈴木選手がついてきているのが分かったので、そういう時はさっさとはたいて、走らせとけみたいな感じで。多分それの連続だと思います。走る距離の連続性は上回れると思っていたので。走らせると中盤が空いてくるので、落ち着いてボールを持てるシーンが多くなったと思う。アンカーに入る時はそういうことの繰り返しで、ちょっとずつ自分のところが空いてくるみたいな考え方ができるようになった」

 黒川と半田のところはG大阪のストロングだと思うので、今日だったら(相手の)サイドハーフの守備を超えてしまうだけで、鹿島からすれば嫌な感じがあったと思う。鹿島の選手は真面目なんで、逆サイドに振るとスライドするので、それで何度も黒川が空いていた。それで早い段階で2点目取れたのはチームとして大きかった。スカウティングも含めてチームとしてはまっている感じがした」

「(CB福岡からのボールは)あの形を監督もやろうといっていた。練習でああいうシーンも多かった。ウイングが中を取って、サイドバックを上げるみたいな形で相手を押し込めたことが多かった。スカウティング通りできた。それがダメージを与えたと思う」
 
 会見で監督はチームがスペースの認知ができていたと話していたが、山本から見えていたスペースが何だったかという問いには次のように答えた。

「両サイドハーフがスライドをがんばることで、ウイングがSBと同じタイミングで内に入ってきて上がると、ウイングに(相手の)SBがつかなくてはいけないが、サイドハーフは前にプレスをかけるのが得意な選手が多かったので、そういうところで最後に数的優位を作れていた」

「(鹿島が)ツートップ、ダブルボランチで僕のところに誰が出てくるのかというのがあった。途中まで横並びだったので(1トップの)宇佐美まで見えた。(相手に)アンカーがいるとあの道は見えない。ダブルボランチだとあそこまで見える。同サイドを寄せた時に、逆サイドのボランチが必ずしぼるので、逆のインテリオールまで飛ばせば逆サイド持っていけるなと思った。システムにもよるが、アンカーに入る時はそういうところを見つけようとしている」

 173cm64kgと決してサイズに恵まれているわけではないが、球際の強さも身に着けつつある。

「(局面は)ボール保持者が何をしたいのかを考えて対峙するところと、自分のタイミングでいけるというシーンが増えている。それはここ何年かの積み重ねでゲームで失敗と成功を繰り返してつかんできているもの。でもまだまだ」

 最後にこの試合に勝ったことの意味は?

「僕も鹿島に勝てていない中で苦手意識があった。その中でこれだけボールを保持して、自分たちの形で点も取れて、自分たちのやってきたものが間違っていないと思えている。それをどう表現していくかだと思う。自分たちのやりたいことをもっと表現したい」

「監督のやりたいことを理解できるし、なかなか勝てなかった中で期待をしてもらい、申し訳ない気持ちがあった。結果が出ているのが嬉しい。いいサッカーをしてくれる監督と出会えて良かった」

 ネタ・ラヴィが復帰する次節以降はインテリオールになるのか? それともイスラエル代表を押しのけてアンカーでプレイするのか? 完全復調したG大阪に、楽しみなスターが生まれた。


文/吉村 憲文

記事一覧(新着順)

電子マガジン「ザ・ワールド」No.292 最強ボランチは誰だ

雑誌の詳細を見る

注目キーワード

CATEGORY:インタビュー

注目タグ一覧

人気記事ランキング

LIFESTYLE

INFORMATION

記事アーカイブ