どれだけ優れた能力を備えていても、他のライバルたちがそれよりもさらに上のレベルでプレイしていれば試合には出られない。ビッグクラブに所属する若手たちは、これを日々痛感させられていることだろう。下部組織からうまくトップチーム昇格の権利を勝ち取っても、ワールドクラスが集うスカッドでは出番が限られる。そんな境遇に置かれているヤングスターは少なくないはずだ。
しかし、そういった状況を打破しようと、レンタル先で奮闘している選手もいる。今冬ドルトムントからフランクフルトへ渡ったU-21ドイツ代表FWアンスガー・クナウフもそのひとりだ。
クナウフは2020年のトップ昇格以降、ドルトムントでの出番が16試合のみだったプレイヤー。同クラブでは常にトップとセカンドチームを行き来する状況だったものの、今冬に1年半のレンタル移籍でフランクフルトへと向かった同選手は大きな成長を遂げようとしている。2月に行われたブンデスリーガ第21節のシュツットガルト戦で新天地デビューを果たすと、彼はここまで最前線や右ウイングバックとして機能。先日行われたヘルタ・ベルリン戦では移籍後初ゴールも挙げるなど、現在はレンタル先で貴重な戦力として扱われている状況だ。
その能力はかねてより高く評価されていたが、フランクフルトへ向かったことで成長が加速した印象のクナウフ。彼の未来はこのレンタル移籍によって一気に拓けてきたと言っていい。だが、同選手がここまで順調にフランクフルトで存在感を示すことができているのは、本人の意識も関係しているのかもしれない。ドルトムントではなかなかトップチームでの出場機会を得ることができなかったが、それは自分の実力が足りなかったからとクナウフは次のように語る。
「(ドルトムントで出番が増えなかったのは)監督のせいじゃないよ。BVBには多くのトッププレイヤーがいるんだ。そんな巨大なスカッドとなっているだけに、僕のような選手が常に多くの出番を得られないのは当たり前なのさ。他の若い選手に言いたいのは、どんな状況でも受け入れることが大切ということだね。3.リーガ(ドイツ3部)でプレイしていても、それに関して深く考えたり、嘆いたりしてはいけないと思う。僕はブンデスやCL、3.リーガと短い期間にあらゆる環境でプレイしたけど、それは今でも美しい時間だったと思っているよ」(独『Sport 1』より)
なかなかトップでの安定したプレイタイムを得ることができなくても、冷静に自分の置かれた状況を冷静に判断してそれを受け入れていたというクナウフ。トップチームでの出場機会に恵まれないことに不満を漏らさず、素直に自分に足りない能力を磨き続けていたからこそ、現在の彼はフランクフルトで飛躍を遂げているのかもしれない。フランクフルトで輝き始めたドルトムントの若き才能。今後クナウフのさらなる成長には大いに期待したいところだ。