[MIXゾーン]G大阪は逆襲のキッカケつかんだか 過酷な連戦に見えた光

G大阪は何とか降格圏は脱した(写真はイメージ) photo/Getty Images

大分は苦しいシーズンが続く

 春先に新型コロナウイルスのクラスター発生で活動停止を余儀なくされ、更にACLへの出場。そのしわ寄せから真夏の連戦にあるG大阪。否応なしに試合はやってくる。エースのFW宇佐美をベンチに置くなど、ターンオーバーを使いながら苦しい台所を何とかやり繰りしての戦いが続く。それはこの試合も同様だった。

 対する大分の片野坂監督は「今日のG大阪戦も大事なゲームになることは重々承知の上で臨んだ」。

 松波監督も「順位も近い大分さん相手ということで選手たちも非常に気持ちが入っていた」と話したように、共に降格圏にあるだけに残留を目指す上で『6ポイントマッチ』になる。見る側にも互いが気合の入っていることが伝わってくる戦いだった。
 G大阪は3バックで左WBに小野瀬を起用。彼は普段右でプレイすることが大半だが、サイドのできる選手に故障が続いており、これもチーム事情に負うところが大きい。

「普段は右だが、右利きなので少しワイドからインサイドに入ってクロスだとかちょっと違うニュアンスのプレイができるというところで起用した。もうひとつはSBにケガ人が出ていて、黒川も連戦ということもあったので、そういう意味合いも両方ある」(松波監督)

 G大阪は3日前の鹿島戦でボールに対するアプローチが遅く、球際で勝てなかったとことをどう修正するかという問題もあった。

「怖がらずにというか強気でプレッシャーをかけにいくこととポジショニングを確認しながらやった中で、なんとか前半は無失点で抑えられた」(松波監督)

 ただ60分、G大阪の目論見は外れる。セットプレイから大分のCBトレヴィザンが決める。

「自分が点を決めるあたりまではゲームのイニシアチブを取れていて、自分たちの進めたい形でやれていたのではないかと思う」(トレヴィザン)

 更に大分は77分にもゴール中央でほぼフリーのFW呉屋がシュートを放つが、これはゴール上を遥か高く越えていってしまった。

 1点ビハインドのG大阪は79分にFWレアンドロ・ペレイラを投入。1トップで孤立気味だったFWパトリックとのコンビネーションが良くなる。

「前にパトリックを残して自分が少し下がった位置でボールを受け、自分が最後シュートを打てるスペースを作りながら攻撃できるように意識していた」

 84分、レアンドロペレイラは1.5列目でプレイすることで、起点となり、MF矢島のシュートのこぼれを豪快にボレーで叩き込み、ゲームを振り出しに戻した。

 ここからは前に出るG大阪、守備を固めてカウンターを狙う大分という構図に。

「終盤に相手が選手交代で圧を掛けてきて、ラインが下がったところからボールをはね返すのが難しくなった」(トレヴィザン)

 そして94分、G大阪は前線に入れたロングボールをパトリックが競り合いながら落とし、これを途中起用されたFW宇佐美がダイレクトボレー。教科書のような見事なシュートは激しくゴールネットを揺らした。

「パワープレーになって、パトリックが中に弾いてくれるだろうとは思っていたけど、まさかあんなに良いところに落としてくれるとは思っていなかった。ショートバウンドで難しいボールだったけど、ふかさないことを意識した」(宇佐美)

 劇的なゴールで熱戦に幕が下りた。

「長いボールやクロスをはね返すことができず、セカンドボールを拾われての個のフィニッシュで素晴らしいゴールを決められてしまった。最後はああいう形でパワーのある選手にボールを運ばれ、放り込まれて、またセカンドボールから取られた。この2失点はもったいなかった」(片野坂監督)

 大分は19位に留まり、苦しい戦いが続く。

 一方のG大阪は得失点で降格圏を脱出。ただしこの酷暑の中で連戦が続くだけに、まだまだ先は読めない。

「逆転できたのは選手たちがこういう過密日程の中で、本当に努力してコンディションを整えて、こちらの指摘も受け入れてくれた。(選手は)『何くそ』という思いはあったと思うが、やっぱり勝つためには必要なことだという話もしているし、それにしっかりと応えてくれた」(松波監督)

 この一戦を逆襲のキッカケにしたいところだ。

文/吉村 憲文

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