[粕谷秀樹]選手を守ろうなんて意識はこれっぽっちもない!! 監督と選手からUEFAに対する不満が続出した
粕谷秀樹のメッタ斬り 058
最終的に頓挫したものの、サッカー界を騒がせた欧州スーパーリーグ構想 photo/Getty Images
なんの相談もなく新しい大会が
自分たちだけで勝手に進めていたのだから、うまくいくはずがない。監督や選手はもちろん、スポンサーまで無視していたクラブもある。ヨーロッパ・フットボールの在り方を根幹から見直す重要な案件にも関わらず、物事の進め方があまりにも杜撰すぎた。一般大衆の心情も理解していない。
スーパーリーグ構想は、とりあえず頓挫した。
そう、あくまでも “とりあえず” である。なぜなら、FIFAとUEFAが主導する現行のシステムも問題山積だからだ。フットボールもビジネスであり、利益の追求を頭ごなしに否定するつもりはないが、ネイションズリーグの発足やチャンピオンズリーグの新フォーマットなどは、カネの臭いがプンプンする。
「一年400日の計算なのか」(ジョゼップ・グアルディオラ監督/マンチェスター・シティ)
「なんの相談もなく、なぜか新しい大会が始まる」(ユルゲン・クロップ監督/リヴァプール)
「現場の事情を無視し、利益最優先の日程を思いつくだけだ」(アントニオ・コンテ監督/インテル・ミラノ)
UEFAに対する不満が、あちらこちらから聞こえてきた。シティのイルカイ・ギュンドアンが「選手にどれだけ負担がかかるのか、まるで分かっていない」と語り、バルセロナのロナルド・クーマン監督も辛らつだった。
「チャンピオンズリーグの新フォーマットでは試合数が増える。結局UEFAは、少しでも多くの放映権料を得たかっただけだ。選手を守ろうなんて意識は、これっぽっちもない」
UEFAの会長を務めるチェフェリン氏 photo/Getty Images
無茶な日程を無理強いしている
ヨーロッパの主要14クラブとUEFA(FIFAも含む)の対立は、いまに始まったことではない。UEFAはヨーロッパの大会を運営しているだけで、経済的なコストやリスクはすべてクラブ側が背負っている。主要14クラブが、チャンピオンズリーグのマーケティングを独自に進める権利を欲するのは当然だ。
しかしUEFAが具体的な解決策を提示しなかったため、スーパーリーグ構想が暴発したとも考えられる。UEFAに責任がないとは絶対にいえない。
また、UEFAが発表したチャンピオンズリーグの新フォーマットには「1次リーグ10試合」と記されているものの、決定事項ではない。ドイツは8試合、スペインは12試合を希望し、イングランドは現行の6試合を主張しているという。UEFAもまた、根まわしが不足していたようだ。新フォーマットは見切り発車の感が非常に強い。
「スーパーリーグに固執したレアル・マドリード、バルセロナ、ユヴェントスには重い制裁を科す」
勝者のごとく振る舞うアレクサンデル・チェフェリン(UEFA会長)に、現場の不平・不満は届いているのだろうか。選手の疲弊を考慮せず、無茶な日程を無理強いする現状を反省しているのだろうか。スーパーリーグ構想の首謀者とされるフロレンティーノ・ペレス(レアル・マドリード会長)も、次のように語っていた。
「UEFAは収益を独占している。あらゆる意味で透明性が必要だ」
異を唱える者は少ないはずだ。UEFAとFIFAも欠陥だらけである。反旗を翻す者は、いつか必ず現れる。
文/粕谷秀樹
スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。