ユーヴェ、ピルロは解任は暗黒期の始まり? よぎる名門クラブたちの前例

解任の噂が過熱してきたユヴェントスのピルロ監督 photo/Getty Images

ピルロ体制は続投すべき

イタリアの絶対王者ユヴェントスも、長い低迷を経験してきた数々の名門クラブたちのような道を辿ってしまうのか。

2011-12シーズンから前人未到のセリエA9連覇を成し遂げ、1つの黄金期を作り上げたユヴェントス。この伝説がいつまで続くのかに注目が集まっていたが、今季は10試合を残して首位インテルに12ポイントも離され、大台の二桁を目前に連覇は途切れようとしている。それどころか、28試合消化して16勝8分4敗(勝ち点「56」)の4位。5位ナポリとの勝ち点差はなく、来季のチャンピオンズリーグ出場権の獲得すらも不確かな状況となっているのだ。こういった状況もあり、順位が入れ替わる可能性がある7日のナポリとの直接対決の結果次第では、指揮官を務めるアンドレア・ピルロの首も危ういとの報道もある。

もしナポリ戦に敗れたとして、本当にピルロの首を切ってしまっていいのだろうか。もちろん、今年1月にフランク・ランパードからトーマス・トゥヘルへ指揮権を移し、見事に完全復調してみせたチェルシーのようなポジティブな例もある。ただ、近年の欧州主要リーグを見てみると、黄金期が一定の期間続いたのちに苦戦を強いられ、チームを立て直そうとしてコロコロと指揮官を替えるチームは、なかなか浮上できないパターンが多い。2010年代に暗黒期に苦しんだマンチェスター・ユナイテッドやインテル、ACミランなどがいい例だ。
ユヴェントスは悲願の欧州制覇を目指し、チームに変化を加えるために2018-19シーズン終了後にマッシミリアーノ・アッレグリを解任してマウリツィオ・サッリを招聘。しかし、サッリ体制の2019-20シーズンはリーグ制覇こそ継続させたものの、苦戦を強いられた試合も多く、CLでもベスト16止まり。この結果を受けて、わずか1年でサッリ体勢に終止符を打ち、今季は監督未経験のピルロの未知数な部分に賭けた。そして、CL敗退に加えてスクデット獲得も絶望的となり、その賭けに失敗した今、3年経たずして3度目の監督交代劇を披露しようとしているのだ。

そもそも、監督未経験のピルロに託した時点で、こうなる事態は多少なりとも予想できたのではないか。今回、ピルロの解任に踏み切ることとなれば、次の指揮官以降も“結果が振るわなければすぐ首に切る”という流れができてしまう可能性が高い。その結果、ユヴェントスも長きにわたる低迷を経験した後者たちのクラブの例を辿る可能性も高くなってしまう。

可変システムを使うなど非常に流動的なサッカーで、これまでのユヴェントスとは全く違うスタイルに取り組んできたピルロ・ユヴェントス。同監督は選手を適材適所に当てはめるのではなく、どちらかといえば特長や才能を生かしつつも選手に自分の哲学を落とし込むタイプで、不慣れなポジションを任されている選手も多い。そのため、選手個々の簡単なミスが失点および、勝ち点の取りこぼしにつながっているケースが目立つ。さらに、怪我や新型コロナウイルス感染による離脱の続出も今季の苦戦を加速させており、経験の少なさからくる修正力の物足りなさに一抹の不安はあるものの、ピルロがどうこうというわけではないように思う。

そんな中でも調子の良かった年末年始には、ピルロが求めているサッカーを選手たちが表現できていた試合もちらほら見られた印象で、決して未来への期待感がないわけではない。選手たちのピルロ・スタイルへの慣れが必要であるならば、今季の結果にかかわらず、もう1年、いやもう半年様子を見ても良いのではないか。伊『Gazzetta dello Sport』によると、ピルロのイタリア代表時代の盟友で、ユヴェントスのOBであるファビオ・カンナバーロ氏も、最低でも「今季の残り10試合」は様子を見るべきだとして、次のように述べていた。

「冷静になってくれ。ユヴェントスがアンドレアを選んだとき、彼に経験がないことはよく理解していははずだ。彼には成熟するための時間を与えるべきで、それは理にかなっている。解任の判断は保留するのが正しい。彼は素晴らしい仕事をしているしね。若い選手たちを起用し、たくさんの勝者がいる複雑なロッカールームのマネージメントもしている」

「確かに、うまくいかないこともあるかもしれない。彼がミスを犯すこともあった。ただ、彼も人間だ。彼は守るべき遺産だよ。ユヴェントスが彼の立場を理解していなかった場合、彼らはなんのために昨夏に彼を選んだんだろうね。もし解任の判断を下すことになると、彼らは2度の過ちを犯したことになる。それに彼のせいだけではない。選手たちもピッチ内外でミスを犯しているよ」

ナポリ戦の結果を含めて、ピルロの去就はいかに。ユヴェントス首脳陣の判断に注目が集まる。指揮官を交代させることとなった場合、現時点ではアッレグリ氏の復帰策が噂されている。もしそうなると、ユヴェントスはジネディーヌ・ジダンを復帰させ、なんとか低迷を免れたレアル・マドリードのパターンを目指すこととなるだろう。ただ、これは振り出しに戻ることを意味し、この2年間がほぼ無駄に。首脳陣たちの責任が問われることとなりそうだが、はたして。

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