[水沼貴史]“攻撃も守備もパワーアップ”の鎌田大地 選手としての自覚が彼を突き動かした

水沼貴史の欧蹴爛漫053

水沼貴史の欧蹴爛漫053

今季のブンデスリーガで、4得点9アシストをマークしている鎌田 photo/Getty Images 

磨きがかかっているのは

水沼貴史です。長谷部誠と鎌田大地の両MFが在籍しているフランクフルトが、今シーズンのブンデスリーガで現在4位と、上位戦線に食い込んでいますね。特に鎌田に関してはリーグ戦26試合を終えた段階で4得点9アシストと、好調ぶりが光っています。ゴール前での正確なスルーパスや強烈なミドルシュートなどを持っていながら、レギュラーに定着できない時期があった彼。如何にして主力の座を射止めたのかについて、今回はお話ししましょう。

鎌田自身の守備意識が高まり、彼が攻撃と守備の両面でチームに貢献できる選手になったこと。これが、現在フランクフルトを率いるアディ・ヒュッター監督からの信頼に繋がったと、私は思います。以前は相手ボールの時に前線に残り、味方のカウンターに備えることが多かったのですが、今シーズンはマメにプレスバックして、味方のボランチや最終ラインの選手をサポートしています。チーム全体でハイプレスをかける際も、相手チームの最終ラインに積極的にチェイシングするようになりましたね。

最近のフランクフルトは[3-4-2-1]をベース布陣にしていて、鎌田は2シャドーの右で起用されることが多いのですが、守備意識の高いFWアミン・ユネスと2シャドーでコンビを組むようになってからというもの、彼がユネスに触発され、守備も献身的に行うようになった感じがします。攻撃と守備の両方でチームに貢献できないと、フランクフルトでレギュラーを張り続けることはできない。こうした危機感や自覚が、今の鎌田を突き動かしているのではないでしょうか。

直近の試合では、鎌田と長谷部が良い連係を見せている photo/Getty Images 

多くの得点に絡めるようになった要因は

フランクフルトのベース布陣が[3-4-1-2]から[3-4-2-1]に変わったことで、鎌田が敵陣のペナルティエリアに侵入しやすくなり、フィニッシュやパスワークに多く絡めるようになりましたね。今シーズン序盤はトップ下に鎌田、2トップにバス・ドストとアンドレ・シウバが主に起用されていたのですが、鎌田の前に2人いる形ですので、彼がフィニッシュワークに絡もうにも飛び込むスペースが限られていました。ベース布陣が[3-4-2-1]になってからは、1トップのシウバの両脇のスペースに鎌田が飛び込むという約束事が徹底された感じがします。鎌田自身もこのタスクを忠実にこなしているので、直近の試合で得点に絡むことができていますね。

今シーズン序盤は鎌田がひとりでトップ下を務めていたので、彼の攻守の負担が大きかったのですが、2シャドーの一角でプレイするようになってからは、これが軽減されました。今は相棒のユネスが鎌田と同じようにゲームメイクを担ってくれますし、相手ボールの時には鎌田と連動して守備をしてくれます。1トップのシウバも、必要に応じてサイドのスペースに流れたり、中盤に降りてきてくれるので、鎌田と近い距離感を保てています。布陣変更によって各選手の役割が明確になり、鎌田も他の選手のサポートを受けやすくなったこと。これが彼の好成績の要因ではないでしょうか。

もう一つ触れておきたいのが、長谷部との関係性です。最近、長谷部が3バックの真ん中ではなく、ボランチでプレイする機会が増えているのですが、37歳となった今でも鋭い出足でボールを刈り取っていますし、質の高い縦パスも前線につけています。長谷部の一列前でプレイしている鎌田も、やりやすさを感じているのではないでしょうか。先月20日に行われたバイエルン・ミュンヘン戦(ブンデス第22節)では、前半に長谷部が敵陣でボールをインターセプトし、このボールが鎌田に渡って彼がペナルティエリア右隅から惜しいクロスを送るというシーンがありましたね。最近、長谷部が鎌田にマメにコーチングしている様子も見受けられますし、鎌田としても、自分がやるべきプレイを整理できている感じがします。

フランクフルトは4月3日に5位ドルトムントと(ブンデス第27節)、10日に3位ヴォルフスブルクと対戦します(同第28節)。来シーズンのUEFAチャンピオンズリーグの出場権確保(ブンデス4位以内)がかかっているフランクフルトにとっては勝ち点を落とせない連戦ですし、鎌田が日本代表にとって欠かせない存在に成長するためにも、チャンピオンズリーグという欧州最高峰の舞台にぜひ辿り着いてほしいですね。今月25日の日韓戦でも素晴らしいゴールを決めましたが、彼が順調に経験を積み、日本代表の主軸として定着できるか。この点を楽しみにしながら、フランクフルトや日本代表での彼のプレイを見守りたいと思います。

ではでは、また次回お会いしましょう!


水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。YouTubeチャンネル『蹴球メガネーズ』などを通じ、幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。

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