[特集/激化するスクデット争い 02]残す課題は“守備の安定化”のみ インテルの攻撃的サッカーがついに開花

 2020-21シーズン、セリエAでここまで首位ACミランと3ポイント差の2位につけるインテル。アントニオ・コンテ監督体制2年目を迎え、彼らのサッカーは完成の域に到達しつつある。なかでも第17節終了時点でリーグトップの43得点を誇る攻撃陣の破壊力は抜群。直近2試合でこそ勝利を逃したものの、年末年始に8連勝を記録した勢いは本物と言えるだろう。現時点ではミランの後陣を拝しているものの、日程面などを考慮すれば分があるのはインテルか。守備の安定化さえ図ることができれば、ネッラズーリこそがスクデット争いの主役となれる。

シンプルだが止められない 強烈な“個”が生む破壊力

シンプルだが止められない 強烈な“個”が生む破壊力

ここまでセリエAで2位につけるインテル。リーグトップの43得点を誇る攻撃陣の破壊力は抜群だ photo/Getty Images

 年末年始にかけてセリエAで8連勝を飾ったインテルは、今季スクデット争いの主役だ。サンプドリア戦で久々の黒星を喫し、続くASローマ戦は終盤に追いつかれて勝ち点2を失った。それでも、優勝争いはこれからが面白い。インテルが主役を張れる理由は、十分すぎるほどにそろっている。

 現在のインテルは、FWロメル・ルカク中心のチームだ。「ワンマン」というフレーズはネガティブな印象を与えがちだが、圧倒的な個がどっしりと構えたチームはやることが明確かつ強固である。好調時のルカクを止められるDFが存在しないのだから、これを土台としない理由がないのだ。

 アントニオ・コンテ監督は、1年半前にルカクの獲得を熱望し、そこからチームづくりを開始した。ボールを奪ったら、まずルカクを見る。これこそ、インテルが採用する戦術のベースとなっている。そこで確実にボールが収まることで、チーム全体が押し上げられる。相手の意識がルカクに集まれば、周囲の選手には自由が生まれる好循環。じつにシンプルな戦い方だ。

 そのようにして発生させた自由を最大限に活かすため、昨夏にインテルはSBアクラフ・ハキミを補強。指揮官が獲得を熱望した2人の良さが融合したことで、彼らは現在の爆発的な攻撃力を得ることに成功した。2020-21シーズンのインテルにおける攻撃のキモは、間違いなくこの2人だ。

 年末のスペツィア戦では、そんな2人の良さを最大限に活かした得点シーンも生まれた。相手の攻撃をしのいで自陣左からアシュリー・ヤングが前線にフィード。ルカクが最前線で競り勝つと、衛星的に動いていたラウタロ・マルティネスが右前方へパスを送り、最後はハキミが仕留める。まさに電光石火。ルカクのフィジカルと、ハキミのスピードというオンリーワンの能力が合わさったからこそ生まれたゴールと言えるだろう。これほど鋭いカウンターを繰り出せるのは、セリエAでインテル以外にない。指揮官もご満悦だったはずだ。

 第17節を終えて、ここまで積み重ねたチーム得点数はセリエAトップの「43」。首位ミランが37得点という事実からも、インテルの得点力がいかに爆発的であるかは窺い知ることができる。

カギを握る守備の強化 安定の兆しは見えている

カギを握る守備の強化 安定の兆しは見えている

昨夏加入したハキミの売りは抜群の攻撃性能。第13節スペツィア戦では自慢のスピードを存分に活かして先制点を奪ってみせた photo/Getty Images

 それなら守備面はどうか。ここまでの17試合における23失点はリーグ6位タイ。正直、少ないとは言い難い。

 ただ、これはコンテもある程度割り切っているのだろう。指揮官はローマ戦後にも語っていたが、インテルはハイプレスでボールを奪うからこそ、多くのゴールが生まれている。その一方で後方にはスペースが生まれることになるが、プレスを掻い潜られた際に相手が決定機を迎えるのは当然。そういった考え方なのだ。もちろん、もっと失点を減らしたいというのが本音ではある。それでも、得失点差はリーグトップ。打ち合いに勝っていることは間違いなく、より恩恵の大きい攻撃にプライオリティを置いているに過ぎないのだ。

 ただ、インテルの守備力には今後も上積みの可能性があり、その点こそインテルがスクデットを奪還するカギになると言える。

 シーズン序盤には、今でこそ称賛を浴びるハキミですら非難の対象だった。しかし、コンテの下で彼の守備能力は時間を経るにつれて明らかに向上している。コンテの採用する3バックは適応にやや時間を要するシステムだが、実戦を重ねていく中でハキミのプレイも安定してきた節がある。昨季、不振で定位置を失ったミラン・シュクリニアルも同様だ。シーズン終了後には放出候補にもなった彼だが、ここまで出場したリーグ戦13試合ではチームのDFトップとなるタックル数(21回)と地上戦勝利数(38回)を記録しており、今季再び調子を上げている。「3バックに戸惑いがあったものの、今では適応した」。本人もこのように語っており、確実にコンテの目指す形はチームに根付いてきていると言っていい。その完成は近く、破壊的な攻撃に加えてディフェンス面もガッチリとハマれば、インテルはさらに勢いを増してくるだろう。

 ただ、CL敗退により生じた「セリエA優勝の義務」というプレッシャーにインテルが耐えられるかには注目したい。これは彼らにとって最大の挑戦かもしれない。ユヴェントス以外のチームは、この圧力に慣れていないため、立ちはだかる壁は想像以上に高いものとなる可能性がある。

 コンテはこちらにも事前に手を打っている。MFアルトゥーロ・ビダルとDFアレクサンダル・コラロフというベテランの獲得だ。

 正直、2人はここまで期待外れ。コラロフはシーズン序盤で低調なプレイをしているうちにポジション争いから脱落。ベンチが定位置となった。

 ビダルは年始のクロトーネ戦で軽率なファウルを犯し、PKを献上。前半のみで交代を命じられた挙げ句、試合後にコンテから名指しで非難された。それでも指揮官は後日、「私はニンジンとムチを状況に応じて使い分ける。それは長い付き合いの彼もわかっていることだ」と語り、“ハッパ”の一種だったことを明かしている。結局、ビダルを頼りにしているのだ。

 ルカクとハキミのように、ビダルとコラロフがコンテの狙い通りの働きをしてくれれば、若いチームに落ち着きをもたらし、守備力の向上にも貢献できる。ピッチ上の能力に加えてメンタル面も万全であれば、スクデット獲得は十分に達成可能なはずだ。

日程面でもインテルは有利 王者との直接対決が試金石に

日程面でもインテルは有利 王者との直接対決が試金石に

優れた攻撃力を誇るチームを作り上げたコンテ監督。守備に若干の不安は残るものの、指揮官はそれも織り込み済みか photo/Getty Images

 シーズン後半戦の日程面においても、インテルは他の優勝候補と比べてアドバンテージがある。

 チャンピオンズリーグ(CL)でグループステージ最下位という失態をさらしたインテルだが、今後はそれが有利に働くこととなるはず。彼らはシーズン後半戦で欧州コンペティションの試合をこなさずに済むからだ。これはセリエAのタイトルレースにおいて、有利でしかない。ユヴェントスはセリエAのタイトルを飽きるほど手にしている。当然、優先するのはセリエAよりもCLだ。首位を走るミランは現在最も一体感あるチームと言えるが、そもそもの選手層が2つの主要大会の同時進行に耐えられるものには見えない。どこかで息切れすると考える方が自然だ。

 18日にはユヴェントスとの直接対決が控えている。これは優勝への試金石。2016年9月以降、一度も勝てていない王者相手に結果を出すことができれば、チームの歯車はさらにガッチリとかみ合うに違いない。

 インテルの馬力は、どの優勝候補よりも強力。ここで挙げたすべての要素がかみ合えば、おのずとスクデット獲得の夢は近づいてくるはずだ。

文/伊藤 敬佑

※電子マガジンtheWORLD253号、1月15日配信の記事より転載

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