[MIXゾーン]決めきれない神戸は4連敗 “次の一手”はあるのか

イニエスタも天を仰ぐ photo/Getty Images

湘南はビッグセーブもあり3連勝と上向き

 サッカーには「GKがいいと試合が締まる」という格言がある。まさにこの試合がそうだった。ホームの神戸のGK飯倉、そしてアウェイ湘南のGK谷、共にビッグセーブを連発し、試合をピリッと締まったものにしてくれた。特に前半から劣勢に立たされた湘南は、谷のセーブがなければ勝ち点3を奪うことは絶対にできなかっただろう。

「前半、なかなか守備がうまくハマらない時間だったり奪ってもすぐにロストしてしまうという状態。我慢の時間帯というのは絶対にあると思ったが、今日は特に長くなってしまった。その中で最後のところで身体を張るということをみんなやってくれたので、僕自身もそこでいいパフォーマンスを発揮できたと思う」(谷)

 ビッグセーブはピンチの裏返しでもある。苦しい時間をいかに凌ぐか。特に湘南の場合は戦力の余裕があるわけではない。とにかく全員攻撃、全員守備。前半の湘南は守備に注力した。
「前半はなかなか自分たちのやりたいことがうまくできず、ミスも多く押し込まれる展開だったが、割り切って前半はゼロで守り切ろうという意識でやっていた」(MF岡本)

 サッカーは流れのスポーツだというが、90分の中で自分たちのプレイができる時間帯はそれほど多くない。まして相手に主導権がある場合、そこはひとつの割り切りが必要になる。

 その中でやはり特に目を引いたのは谷のプレイである。浮嶋監督も「本当に失点してもおかしくないところの反応だったり、勇気を持ったプレイがあり、彼が今日のゲームに関しては本当に良いシュートストップを見せてくれた」と振り返った。

 谷に関しては元々将来を嘱望された選手。前所属のG大阪では代表経験もある東口の牙城を崩せなかったが、出場機会を求めての湘南移籍がその能力を開放しつつある。谷に限らず分厚い選手層に出場機会の与えられない若手は、思い切って環境を変えることが一番重要だと筆者は断言できる。特にビッグクラブの若手の場合は。同時に若い選手の力を欲しているクラブは沢山ある。

 話を戻そう。神戸から見れば決めるところを決めておけば、まったく問題のない試合だった。前半だけで試合を終わらせることもできたはずだ。0‐2という結果に「調子という前に弱い。力がないかなと思う」(SB西)

 西からすれば自虐的に今のチームを断罪するしかできないのかもしれない。「今日は相手のGKが良かったから仕方ない」といい始めたらキリがなく、しかも結果的に4連敗を喫することになったのには何かしら原因がある。それが何なのかを探しているが、濃い霧に覆われたままだ。素晴らしいセーブも、結果的にそれが報われなかった飯倉はオンライン会見に出席することすらなかった。本来なら彼が一番のヒーローといわれてもおかしくない内容だったのだが……。

 神戸がチャンスを外し続けたこともあり、後半に入って流れは拮抗したものに変わった。特に湘南がトップにMF中川を投入したことによって、前線からのプレスが徐々にかかり始める。そのことで湘南の走力を活かせるようなった。やはり神戸としては湘南が手を打ってくるハーフタイムまでに試合を決めておく必要があったということだ。これで4連敗となり、今月下旬に迫るACLにも暗い影を落としている。

「今日の試合も勝ちにいったが、こういう結果になったのは私自身の責任だと思っている。カウンター対策の練習もしていた中で、カウンターから失点した。もう少ししっかりチームに落とし込む必要があった。ACLの前に浦和との試合がある。今のロッカールームの中は非常に難しい状況があるが、膿を出し切ったと思い、もう一度ホーム最終戦に向けてしっかりと準備をしたい」

 こう話した三浦監督に次の一手はあるのだろうか…。

文/吉村 憲文

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