[特集/史上最高のCLラウンド16 08]ペップ得意のゼロトップにレアルの対応力が勝る

ラウンド16屈指の好カードは攻撃型同士の激突に

ラウンド16屈指の好カードは攻撃型同士の激突に

レアルに“デシマ”をもたらしたジダン監督。柔軟な戦い方をチームに植え付けている photo/Getty Images

 攻撃型同士の対戦だが、レアル・マドリードのほうが戦い方は柔軟だ。相手によってはカウンター主体の戦術を採ることもある。一方、グアルディオラ監督に率いられるマンチェスター・シティの戦い方は基本的に変わらない。ボール保持とハイプレスを軸としたプレイスタイルを尖鋭化させた特化型のチームであり、グアルディオラ監督下のバルセロナ、バイエルン・ミュンヘンもそうだった。

 グアルディオラ監督はバイエルン・ミュンヘンを率いていたときに、レアル・マドリードの高速カウンターに完敗した苦い経験があるが、おそらく今回もプレイスタイルを変えることはないだろう。センターバックとアンカーに負傷者も出ていてベストメンバーを組めていない事情もある。ヘタに変化するよりも、自分たちのスタイルを押し通したほうが勝機はあると判断すると思う。

 特にシティのホームで行われる第2戦は、おそらくシティがボールを支配する展開になるだろう。シティは押し込んだままハイプレスをかけてくるが、レアルはプレスをかわしてカウンターへ持っていく自信を持っているはずだ。2年前のファイナルではリヴァプールのハイプレスを巧みなパスワークで無効化している。そのときの主要メンバーであるクロース、モドリッチ、イスコは健在で、マルセロの出場は微妙だが選手は大きく変わっていない。シティのプレスを外してしまえば、ベンゼマやベイルのスピードを生かしたカウンターへ移行できる。カウンターにならなくても、押し返してしまえばシティの持ち味は出にくくなる。現状のシティが、レアルのカウンターを90分間ハイプレスで封じ込むような完璧な試合運びを完遂できるとは考えにくい。

かつて相対したゼロトップ レアルは対抗する術を心得る

かつて相対したゼロトップ レアルは対抗する術を心得る

さまざまなポジションをこなすベルナルド・シウバがゼロトップ戦術のカギだ photo/Getty Images

 シティは、いかに自分たちのスタイルを強化するかがカギだ。攻め込んだときにより多くのチャンスを作り、得点に結びつけ、ボールを失う機会を最小限にしてレアルにカウンターのチャンスを与えないようにする。そのための策としては、ベルナルド・シウバの「ゼロトップ」を採用するのではないか。

 フォーメーションは[4-2-3-1]。デ・ブライネをトップ下の右寄りに配置して、ハーフスペース先端への飛び出しと高質なクロスボールを生かす攻撃は、今季すでに定着させている。さらにB・シウバを「偽9番」とすることで中盤の支配力を強化するわけだ。

 FW左は定番のスターリング、右はマフレズかジェズスが務めることになるだろう。ジェズスはコパ・アメリカでブラジル代表の右ウイングとして新境地を拓いていて、ゼロトップ・システムで機能する可能性がある。

 ゼロトップ戦法では、ウイングが高い位置に張りだして相手のディフェンスラインを固定させ、CFが引くことで中盤の数的優位を確定させる。あるいは、CFがセンターバックを引きつけることで空くスペースを狙う。デ・ブライネ、ジェズスは空いたスペースを狙うにはうってつけの人材だ。

 ただし、レアルはこのギミックへの耐性があるはずなのだ。バルセロナのメッシにさんざんやられた過去があり、ゼロトップへの対策は出来上がっている。まんまとシティが仕掛けた罠に陥るとは考えにくい。

 進境著しいバルベルデをどこで起用するか、アザールが復調できるかどうかといった人選の問題はあるにしても、誰を起用しても攻守のバランスは大きく崩れない。シティの攻撃を受け止めながら反撃に出るプランは粛々と遂行されそうである。

 現在の状況を見るかぎり、レアルのほうがやや有利だと思う。グアルディオラ監督は大一番で相手の意表を突くのが得意だが、今回は打つ手が限られているのではないか。レアルのジダン監督もここぞというときに奇策を打つタイプであり、互いに何をやってくるかわからないところがあるが、今回は対応力でレアルに分があると考える。

文/西部 謙司

※電子マガジンtheWORLD241号、1月15日配信の記事より転載


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