リヴァプールの攻撃を変えた男を知っているだろうか。同クラブのコーチ陣には、他のクラブではあまり見られない任務を託された人物がいる。“スローインコーチ”のトーマス・グレネマルク氏だ。
サッカーというスポーツにおいて、スローインというプレイはあまり注目されないことが多い。ピッチから出たボールを再びフィールドに返すための行為。これについて深く考えたことのある人は少ないのではないだろうか。セットプレイといえば、直接得点のチャンスとなるFKやCK。そのイメージは確かに強い。
しかし、スローインも試合を優位に進める上で重要な要素であることは間違いない。マイボールで試合を再開することができれば、そこからチームは主導権を握ってプレイできる。スタイルによっては、むしろFKやCKよりも重要な要素かもしれない。しかし、グレネマルク氏がチームに迎えられる前の2017-18シーズン、リヴァプールのスローインは悲惨なものだった。
英『GIVE ME SPORT』によると、同シーズンにリヴァプールがスローインからボールを保持できた確率はたったの45.5%だったという。これは当時のプレミアリーグで“ワースト3”の数字。ユルゲン・クロップ監督の下であまりボールポゼッションを重視しない戦術を採用していた2017-18シーズンのリヴァプールとはいえ、あまりにも寂しいスタッツと言えるだろう。
だが、2018年夏にクロップ監督自ら口説き落としたというグレネマルク氏をスローインコーチとして招聘すると、リヴァプールのスローインは劇的に改善される。マンチェスター・シティと熾烈な優勝争いを繰り広げた昨季、彼らが記録したスローインからのボール保持率はなんと68.4%にまで上昇。1シーズン前までプレミアで“最低クラス”のスローインをしていたチームが、欧州5大リーグにおいて一気にトップまでその順位を上げたのである。
リヴァプールはサイドからの攻撃が一つの形となっているが、その強みを発揮する上でグレネマルク氏がチームに授けたスローインの極意は間違いなく大きな要素となっていると言える。今季はクロップ監督お得意の“ゲーゲンプレス”を披露する機会も明らかに減り、厳しい日程をこなさなければならないプレミアで同監督はポゼッション型の戦術も併用するようになった。その甲斐あってか、リヴァプールは今季ここまでリーグ戦無敗の快進撃を続けている。
“無敗”という戦績ばかりが注目されがちなリヴァプールだが、その結果はチームを支えるコーチ陣の努力が積み重なったものと言って差し支えないだろう。“史上最強軍団”との呼び声も高い彼らの進撃は、グレネマルク氏のようなトップレベルの専門家たちによって支えられている。
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