2019年のJ1に関しては、またFC東京が勝ち切れなかったという印象です。15年ぶりに優勝した横浜FMの攻撃的なサッカーが目立ったのはたしかですが、一方でFC東京は昨シーズンに続いて終盤戦になって勝点を伸ばせず、優勝を逃す結果となりました。
苦戦が予想された敵地8連戦の最後に3連勝を飾ってホームに戻ってきましたが、気合が入り過ぎたのか味スタでの湘南、浦和との連戦にいずれも引分けて状況を苦しくしました。2試合ともにチャンスはありましたが、生かすことができませんでした。ディエゴ・オリベイラ、永井謙佑の2トップは強烈でしたが、その他の攻撃のカタチは……と考えたときに来シーズンに向けた補強ポイントが出てくると思います。
J1昇格1年目だった大分は、今シーズンの優秀監督賞に輝いた片野坂知宏監督のもと対戦相手に応じて柔軟な判断で臨むスタイルを貫き、9位でシーズンを終えました。途中、スカウティングされて苦しむ時期もありましたが、信念を曲げずに戦うことで素晴らしい成績を収めました。ただ、来シーズンは各クラブが大分のサッカーをより研究して臨むのは間違いなく、さらに難しい1年になるでしょう。
浦和、名古屋はどちらも資金力があり、戦力も他クラブに比べれば十分に揃っています。しかし、成績が奮わず両チームともにシーズン途中に監督交代があり、結果として不本意な順位で1年を終えています。来シーズンに巻き返すためにも、クラブの考え方、理念、チームの強化方針をもう一度見つめ直さないといけないかもしれません。
とくに、浦和に関してはサポーターにおんぶに抱っこの状態であるのに、埼玉スタジアムに空席が目立ちました。また、最終節のG大阪戦後に行われた社長の挨拶でのブーイングに現状への不満が表れていて、これはヤバイと思いました。選手の世代交代も含めて、クラブとしてこれからどういう方向へ進んでいくのか──。いろいろな面で過渡期を迎えていると思います。
最後に、シーズン終了を受けて今年もすでに数名が引退を発表しています。元日本代表では昨シーズンの中澤祐二、楢崎正剛などに続いて、栗原勇蔵、明神智和、田中マルクス闘莉王、坪井慶介、佐藤勇人などがユニホームを脱いでいます。少し寂しくなりますが、若い選手たちが出てくることを期待します。
「気持ちを前面に押し出す選手が少ない」
闘莉王は引退会見の場でこうコメントしたそうです。私も同じ気持ちで、淡々とプレイする選手が多く、気持ちを表に出さないため観戦者に伝わってこない部分があります。ビーチサッカー日本代表ではラモス瑠偉監督が“大和魂”を植え付け、W杯で史上最高位に並ぶ4位となりました。
気持ちを前面に押し出し、熱く、必死にプレイする。私はそういう選手たちを見てきたし、戦ってもきました。時代に関係なく、選手たちは「勝ちたい」という感情をもっと表に出していいと思います。素直に気持ちが伝わってくると、やはり意識を持っていかれます。そうした選手に、もっとたくさん出てきてほしいです。
取材・構成/飯塚 健司
※theWORLD(ザ・ワールド)240号、2019年12月15日発売の記事より転載
名良橋晃:サッカー解説者、サッカー指導者。元日本代表。国際Aマッチ38試合出場。J1通算310試合出場23得点。現在はS.C.相模原ジュニアユース総監督を務める。
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