[粕谷秀樹]無所属の大物に公式オファーは届いていないが…… ヴェンゲルとモウリーニョの今後を探る

粕谷秀樹のメッタ斬り 013

粕谷秀樹のメッタ斬り 013

アーセナルで長期政権を築いた名称ヴェンゲル photo/Getty Images

フットボールには関わっていきたい

マッシミアリーノ・アッレグリとルチアーノ・スパレッティが浮いている。ともに近代フットボールを支える名将で、もしマンチェスター・ユナイテッドの監督が空いているのなら、三顧の礼で迎えるべき人材だ。しかもアッレグリは英語の勉強をしているっていうじゃん。もう少し待っててね。たぶん11月くらいに……。

さて、アーセン・ヴェンゲルとジョゼ・モウリーニョも無所属だ。ビッグクラブの監督が解雇、退任するたびに次期有力候補に挙げられるけど、公式オファーが届いたことは一度もない。特にヴェンゲルの日本関連情報は憶測の域を出ず、誰かが具体的に動いた形跡はないようだ。実際ヴェンゲルも、『BBC』(英国公共放送)のインタビューにこう応えている。

「この先もフットボールには関わっていきたいが、監督ではないだろうね」
アーセナルを22年も率いていたから、違うベンチで同じ風景を見るって感覚にはなれないんじゃない。もうすぐ70歳。プレッシャーに苛まれる日々に心が、からだが耐えられるかって葛藤もあるんじゃないのかな。ただしフットボールには関わっていきたい……。答が出た。GMとかディレクターとか、フロント業務を希望しているね。業界に顔も利くし、若手の才能を発掘する眼力は誰もが求めるところだ。いい仕事だと思う。

就任の噂は絶えないが、未だ新天地が決まっていないモウリーニョ photo/Getty Images

身も心も削るような日々が懐かしい

「7月から新プロジェクトに加わる予定だ」

モウリーニョの発言がずっと気になっている。このところ失敗続きなので、ビッグクラブが関心を示すとは思えない。一部で噂されていたインテル・ミラノはアントニオ・コンテが、ユヴェントスはマウリツィオ・サッリが、それぞれ新監督に就任した。また、18-19シーズン限りという情報も流れていたパリ・サンジェルマンのトーマス・トゥヘルも、結局は留任。代表チームの監督は「60代の仕事」とモウリーニョの興味は薄い。

ヴェンゲルと異なり、まだまだ現場に未練があるはずだ。新戦力を発掘するより、身も心も削るような日々が懐かしい。しかし、モウリーニョのプライドをくすぐるような名門、強豪は、近年の成績からポルトガル人の野心家を敬遠する。好ましくない状況だ。

イングランドの一部メディアは、「ニューカッスルが新監督としてモウリーニョを招聘する」と報じていた。いま、ニューカッスルは買収交渉が進んでおり、7月1日からUAEの富豪シェイク・ハレド・ザイード・アル・ナハヤンが新オーナーに就任する、ともいわれている。クラブの顔をラファエル・ベニテスからモウリーニョにすり替えるってこと? モウリーニョの発言とも辻褄が合う。

そして6月25日、ニューカッスルはベニテスの退任を発表した。やっぱり、ストーリーは着々と進んでいるのかなぁ。でも、FCポルトからチェルシーに引き抜かれた後、インテル→レアル・マドリード→チェルシー→ユナイテッドとビッグクラブを渡り歩いたモウリーニョが、ニューカッスルで満足できるはずないじゃん。いまは焦らず、より大きなチャンスを待った方がいいんじゃないかな。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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