リーグ王者を迎え入れるガード・オブ・オナーは“ナンセンス”だと英紙 「儀式」の名を借りた偽善と痛烈批判

今季リーグ制覇を果たしたリヴァプール Photo/Getty Images

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行うべきなのか

11人の選手と数名の審判団が、王者を拍手で迎え入れる。リーグ戦で恒例となった“ガード・オブ・オナー”は、今年も議論の的となったようだ。『The Athletic』が伝えている。

事の発端はチェルシーが今季のプレミアリーグ優勝クラブ・リヴァプールに対してスタンフォード・ブリッジで行ったガード・オブ・オナー。たった数十秒の光景に対して、現地のメディアもSNSも過剰なまでに反応したようだ。伝統か、敬意か、それともただの茶番か、この小さな儀式を巡る「論争」が勃発している。

チェルシー指揮官エンツォ・マレスカと、リヴァプールのアルネ・スロット両監督は、試合前インタビューから試合後会見に至るまで、執拗に“ガード・オブ・オナー”の是非を問われた。「やるべきか?」「伝統を尊重すべきか?」という質問に対して、両者は「伝統だから」と定型文のような答えを繰り返した。
また、選手たちの反応も冷淡だった。マルク・ククレジャは「必要ならやる」と短く語り、フィルジル・ファン・ダイクは「どんなガード・オブ・オナーも重要だ」と決まり文句を述べただけに留まった。これに対し、ワトフォードなどで活躍したトロイ・ディーニー氏は「バカげてる」と一刀両断。ピーター・クラウチやリオ・ファーディナンドも「恥ずかしい」「気まずい」と否定的な意見を表明している。

同紙が“恥ずべき例”として挙げたのは、2016-17シーズンのチェルシー対サンダーランド戦だ。退団するジョン・テリーの背番号にちなんで26分に試合を中断し、彼のためにチーム全員がガード・オブ・オナーを作った。BBCのガース・クルックス氏は「ここはハリウッドじゃない」と呆れていた。

スコットランドでは、レンジャーズが優勝チーム・セルティックに対しガード・オブ・オナーを行わなかった。指揮官バリー・ファーガソンは「これまでもやっていない。今後も続けない」と語る。

他競技では、ラグビーやクリケットでガード・オブ・オナーが“敬意の証”として自然に行われている。しかし、フットボール、特にプレミアリーグでは、あまりにも作為的であると同氏は指摘。選手が自主的に行うならまだしも、事前にクラブ主導で決定され、メディアに過剰に消費されるこの文化は、もはや“ナンセンスなパフォーマンス”に過ぎないとしている。

しかし、どれだけ批判があろうと、ガード・オブ・オナーは今後も行われるだろう。伝統で行われてきた「儀式」の本質が問われている。

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