バルサ行きを断りまた一歩着実に成長 インテルのエースが持つ鋭い“先見の明”

15ゴール8アシストの大活躍で、インテルにスクデットをもたらしたL・マルティネス photo/Getty Images

インテルに11年ぶりのスクデット

進学や就職、転職など、人は人生を過ごしていく中で、時に大きな選択や決断を迫られることがある。プロサッカー選手で言えば、移籍がそれに当たるだろう。その選択が正解だったのか、不正解だったのかは、あくまで結果論に過ぎないかもしれない。もちろん、選んだ道が正しかったことを証明するために、少しでも成功の方向へ持っていくために、努力することも大事だ。ただ、成功者たちは正しい選択肢を選ぶ“先見の明”に優れていることは間違いないだろう。

インテルの10番を背負うアルゼンチン代表FWラウタロ・マルティネスは、23歳の誕生日を迎えた昨夏に大きな選択を迫られた。復活の兆しを見せるインテルに残留するのか、それとも憧れの大先輩リオネル・メッシを擁するバルセロナへ移籍するのか。2019-20シーズンに公式戦49試合に出場して21ゴール8アシスト(そのうちリーグ戦は34試合14ゴール5アシスト)と完全に覚醒したことで、変革期を迎えている“ブラウグラナ”が次世代のエース候補として、この若き逸材に目をつけたのだ。

一時は地元メディアなどによって「バルサ移籍で個人合意」とも報じられた。しかし、L・マルティネスは最終的にインテル残留を決断。バルセロナが経済的な問題を抱えていたこともあるが、このビッグディールを蹴ってインテルの一員として2020-21シーズンを迎えた。ただ、昨夏にバルセロナ行きが間近に迫っていたことは事実のようだ。実際、これまでなかなかバルセロナへの移籍に関して口にしてこなかったL・マルティネスだが、先日、『ESPN』のアルゼンチン版のインタビューに応じた際に、当時のことを「バルセロナへの移籍は本当に近かったよ。メッシとも話し合ったしね」と明かしている。
しかし、結果から言えば、インテル残留の選択はL・マルティネスにとって正解だったと言えよう。チャンピオンズリーグでは辛酸を嘗めさせられたものの、リーグ戦ではフィールドプレイヤーとしてチームで唯一全34試合に出場し、昨季を上回る15ゴール8アシストの大活躍。そして、ユヴェントスの一強時代に終止符を打ち、チームに11年ぶりのスクデットをもたらすとともに、自身初のタイトルを手にしたのだ。L・マルティネス本人も「バルセロナには経済的な問題もあったので、インテルにとどまることにしたんだけど、スクデットを獲得したとき、それが正しい決断であったことが証明された。このような重要なクラブでタイトルを獲得することは、本当に素晴らしいことだ」と喜びを語っている。

昨夏に移籍を選択していたら新天地のバルセロナに勢いをもたらし、より多くのタイトルを手にすることができていた可能性ももちろんある。ただ、バルサ行きを断ったことで、L・マルティネスはまた一歩着実に成長することができた。相棒ロメル・ルカクとともに、インテルの2大エースのひとりとしてチームにタイトルをもたらしたことも、自身の今後のキャリアにおいて糧となるに違いない。

また、『ESPN』のインタビューでは、ユース時代に受けたレアル・マドリードからの2度のオファーを断り、「まずはアルゼンチンで名を上げる」という一歩ずつキャリアを積み重ねていく選択を行なっていたことも明かしていたL・マルティネス。バルセロナへの移籍と同様に、レアルへの移籍で一段飛ばしや二段飛ばしで飛躍を遂げていた可能性もあるにはある。しかし、レアルクラスのビッググクラブになると、下部組織上がりの選手や若き逸材たちに、チャンスがなかなか与えられていないのも事実。もしユース時代に焦ってレアルへの移籍を決断していたら、23歳でこれほどの成功を収められていない可能性が高いのではないか。同選手が鋭い“先見の明”を持っていることは間違いないだろう。そんなL・マルティネスが、今後どのような選択を行なっていくのか気になるところだ。

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