まず、触れておかなければならないのは、説明不要の“スーパースター”クリスティアーノ・ロナウドだ。母国のスポルティングCPで名をあげてマンチェスター・ユナイテッドで活躍後、レアル・マドリードへと順調にステップアップ。全てを手にしたあと、2018年からユヴェントスで新たな挑戦を始めた。
キャリア初期はウインガーだった。個人技とスピードをベースに自ら仕掛けていくスタイルで存在感を放っていたが、徐々にポジションを上げていくと、いつしかC・ロナウドの仕事はゴールを奪うことに。
それがユヴェントスにおけるC・ロナウドの価値だ。長い距離を走ることはなく、守備に奔走するタイプでもない。しかし、チャンスをいかす決定力はピカイチ。左右どちらの足も使え、跳躍力も抜群。どんなパターンでもゴールにできるのが強みだ。
もちろん、そのための体調管理は怠らない。食事の徹底ぶりは有名な話で、“低脂肪高たんぱく”を基本に設計された献立を朝昼晩で2食ずつ、1日に計6回も食事をする。 また、睡眠に関しても専門家の意見を取り入れ、こまめな昼寝を導入。このように、日頃からコンディションには大いに気を配っている。だからこそ、瞬間的に発揮するパワーや瞬発力は衰えを感じさせず、ゴール量産につながっているのだ。
若手の頃は、圧倒的な個人技を有しながら、球離れの悪さなどで目立つこともあった。だが、自分の強みを理解し、その使いどころを完璧に把握したことで、チームが苦しいときに貴重な一撃を決め続けている。
2人目は、39歳を迎えた今でもACミランの前線に欠かせぬズラタン・イブラヒモビッチ。今季セリエA17試合で15得点を挙げている39歳だ。昨年1月の復帰時は懐疑的な見方もあったが、今ではミランの大黒柱と内外で認められている。
若手の頃は瞬間的なスピードで前に出て、リーチをいかしてズドン、というパターンがあったイブラヒモビッチだが、今はもうできない。ただ、プレイのベースとなっている技術力に衰えはなく、懐の深さで完全にボールを引き出すポイントになっている。イブラヒモビッチに当てておけばチーム全体の押し上げになり、ミランにとっての彼はたんなる得点源以上の存在だ。
1試合を通してたくさん動けるわけではないが、相手DFにマークされることを苦にしないため、フリーになるランニングは抑えることが可能。そしてもちろん、必要なタイミングでは動き出せるからこそ、ゴールを決められる。そのタイミングは長年の経験をへて磨かれており、だからこそ今季も得点を量産しているのだ。
トップチームの年齢がイタリアで最も若いミランで、イブラヒモビッチはチームの精神的な柱としても欠かせない存在。クラブ全体の拠り所になっている点も見逃せない。ビッグマウスが注目を集めることも多いが、それは自分を鼓舞するためのものでもある。優れた王がいるなら、絶対王政も悪くはない。ただただ玉座にふんぞり返る王ではなく、そのビッグマウスの裏に努力を重ねているからこそ、若きミランは彼を崇め、王のためにボールを運ぶ。
C・ロナウドとイブラヒモビッチの陰に隠れがちだが、セリエAを代表するベテランストライカーはほかにもいる。サンプドリアのファビオ・クアリアレッラは無視できない存在といえる。38歳にして5季連続の2桁得点を達成する驚異の安定感は今も健在。過去には2006-07シーズンから4季連続での2桁はあったものの、5季連続はパーソナルレコードである。特に2017-18シーズンと2018-19シーズンの成績は強烈で、それぞれ19ゴールと26ゴールを奪う活躍を披露している。
クアリアレッラはウディネーゼなどでプレイしたキャリア初期からスーパーゴールが多かった。言い換えるなら、シュート技術が高く、フィニッシュの引き出しが多い。強烈なボレーからオーバーヘッド、ループシュートと、多彩な技でスタジアムを沸かせてきた。
そういった器用さゆえに、さまざまなことができてしまったが、年齢を重ねることで余分がそぎ落とされた。それが今の姿である。ゴールを奪うことに専念せざるを得ない年齢となったことで、ストライカーとしての嗅覚がより研ぎ澄まされた。そうやって、クアリアレッラは2018-19シーズンの得点王になっている。
38歳の今季もサンプドリアをけん引しており、4月3日のミラン戦では相手のパスミスを見逃さず、いとも簡単にループシュートを決めた。本人は以前、「画家のように、事前にイメージを描くこと」と、自身のゴールの秘訣を話していたが、まさにイメージ通りの芸術作品だった。
何でもできる能力ゆえに選択肢が多すぎたが、その選択肢を得点に結びつくものに限定したことで、今もクアリアレッラは点取り屋として機能している。