イタリア代表の大人数招集はアリ?ナシ? 底上げと結果にはつながっているが……

1度の代表活動で多くの選手を呼び、意思統一や底上げを図ってきたマンチーニ監督 photo/Getty Images

所属クラブからの反感もちらほら

3月の代表ウィークで北アイルランド代表、ブルガリア代表、リトアニア代表、それぞれに2-0で勝利。イタリア代表は3年半前の悪夢を払拭すべく、ワールドカップ本大会出場へ向けてヨーロッパ予選で3連勝スタートを切った。

ロベルト・マンチーニ監督が2018年5月にイタリア代表の指揮官に就任して以降、黒星はわずかに2つ。同年9月に行われたUEFAネイションズリーグのポルトガル代表戦(0-1)の敗戦を最後に、直近25試合も無敗が続いている。ベテランの安定感はもちろんのこと、中堅が着実に経験を積み上げており、DFアレッサンドロ・バストーニやDFジャンルカ・マンチーニといった将来が有望な若手たちもきっちり台頭。年齢層を見ても、イタリア代表はバランスの良いチームになってきたのではないか。

さらに、新型コロナウイルスの感染拡大により、代表活動が難しい状況となっているが、イタリア代表はチームとしての成熟度や全体のレベルも間違いなく上がっている。その要因の一つとして、他国とは違った招集の仕方にあるだろう。周りのライバル国は1度の代表活動で、20数名をチームに招集するのがほとんど。しかし、イタリア代表は若手や所属クラブで結果を残している選手たちを積極的に声をかけ、毎回のように30名以上もの選手を招集しているのだ。過去には40名を超える大所帯となることもあった。その甲斐もあってか、チームとしての底上げや意思統一ができているように思う。
ただ、この招集の仕方は少なからずリスクも伴う。怪我などももちろんだが、代表活動は国を跨ぐことが多々あり、新型コロナウイルスに感染する可能性が高まる。国によっては、帰国後に隔離期間を要する場合もあるだろう。その結果、代表活動に参加した選手は所属クラブでの活動に制限が加わることもあり、所属クラブの指揮官などから反感を買ってしまうかもしれない。代表クラスの選手となれば、所属クラブでは重要なタスクを担っている選手がほとんどだ。もしそんな選手が新型コロナウイルスに感染し、数週間の離脱を余儀なくされることとなれば、所属クラブとしては一大事。それが優勝争いや欧州コンペティションの出場権争い、残留争いをしているチームであるならばなおさらだ。

セリエA第28節終了時点で全試合に出場して9ゴール6アシストの活躍を見せ、3月の代表ウィークでイタリア代表に招集されたが、1試合もベンチにすら入れなかったMFロベルト・ソリアーノ。実際に、同選手が所属するボローニャのシニシャ・ミハイロビッチ監督が、現役時代の盟友でもあるマンチーニ監督の招集の仕方や起用法に憤慨している。伊『la Repubblica』など複数の伊メディアによると、「マンチーニがソリアーノを3試合もスタンドに座らせるとは思わなかった。彼はイタリアで最高のMFであることを証明しており、その判断は正しくなかったと感じているよ。もしそうなるとわかっていたら、彼は我々と一緒にいた方が良かったに違いない。気に入らないね。彼は今季、9つのゴールを決めて我々をたくさん助けている。彼にプレイさせてあげてくれ。もし私がソリアーノだったら、マンチーニに文句を言っていただろう」などと話していたという。

イタリア代表の大人数の招集は、アリかナシかといえばアリだろう。間違いなく結果にもつながっている。ただ、代表とクラブは「持ちつ持たれつの関係」であり、選手の所属クラブとの関係悪化でこの良い流れを壊したくはない。セリエAでは再び新型コロナウイルスの感染者が増えてきているなど、状況が状況だけに、マンチーニ監督は起用の仕方を含めて今後は多少慎重になった方が良いかもしれない。

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