優秀な人材が多すぎるがゆえの悩み イングランド代表に“才能流出”の危機

ワン・ビサカはイングランド代表の選手として国際Aマッチの試合に出場していないため、まだ代表の選択が可能となっている photo/Getty Images

守備職人は他国の代表を選択するのか

イングランド代表の右サイドバック争いは、今後どのような展開を迎えていくだろうか。優秀な人材が揃いつつも、その競争が激しすぎるあまりにスリーライオンズからは人材が流出することとなってしまうかもしれない。

トレント・アレクサンダー・アーノルド、カイル・ウォーカー、キーラン・トリッピアー、アーロン・ワン・ビサカ、リース・ジェイムズ、タリク・ランプティ……。パッと思い浮かぶだけでも、これだけの優秀な選手がいるイングランド代表の右SB。現時点ではA・アーノルドがこの定位置争いを一歩リードしているように思えるが、他の選手も今後のプレイ次第で出場機会を掴むことは可能だろう。それぞれ特長の異なる選手が集まっているだけに、ガレス・サウスゲイト監督も試合のたびにこのポジションのスタメン選びには頭を悩ませているはずだ。

しかし、そんな贅沢を言っていられるのも今のうちなのか。同じポジションに優秀な人材が揃うのはチームにとっては嬉しい悩みだが、選手からしてみれば決して喜ばしいことではない。安定した出場機会を得られないのであれば、選手が他国の代表に鞍替えするという可能性も今後は出てくることだろう。
複数のルーツを持つ選手が多い欧州において、これは決して珍しくない話だ。実際、イングランド代表の右SB争いが激しすぎるあまり、先日はランプティが「状況をよく見極める必要がある。このまま注目され続ければ、いずれか(イングランドとガーナ)の代表からは声がかかるだろうね。まだどちらを選択するかは決めていないけど、何が起こるか見てみようじゃないか」と発言。世代別代表ではイングランドを選択していたものの、A代表ではガーナを選択する可能性に含みを持たせている。

そんなランプティに続き、もう一人の有望株もイングランド代表以外のチームを選択する考えを持っているようだ。英『The Athletic』によると、ワン・ビサカも父親の出身国であるコンゴ民主共和国代表への鞍替えを検討中なのだという。長い足を活かした鋭いタックルを武器とし、その守備力には定評のある同選手。怪我などの不運が重なった部分はあるものの、彼はなかなかA代表に招集されないことに不安を抱いている様子。今年開催予定のEURO2020でメンバーから漏れることとなれば、この守備職人は選出資格を持つもう一つのナショナルチームを選択する可能性が高いと同メディアは伝えている。

ランプティ然り、強豪国の若い選手が他の代表選択を検討する気持ちは理解できる。わざわざ激しい競争に身を投じる必要はないと考えるのは、プロとして至極当然の判断と言えるだろう。

加えて、コンゴ民主共和国代表の右SBは、ちょうどもうすぐ世代交代の時期にある。現在同国でこのポジションのレギュラーを務めるのは31歳のイッサマ・ムペコ。国内リーグでプレイしている30代の選手とあって、ワン・ビサカが彼から定位置を奪うことはそう難しいことではないと言えそうだ。こうして考えてみても、ワン・ビサカはイングランド代表にこだわる理由はそこまでないと言えるか。

優秀な若手が次々と頭角を現す一方で、才能の流出が危惧されるイングランド代表。はたして、サウスゲイト監督は今後ワン・ビサカやランプティのような若手をどのように扱っていくのだろうか。未来のチームを考えるうえでも、EURO2020のメンバー選考は非常に重要となってくる。

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