[粕谷秀樹]ウェストハムが怒りと悲しみに覆いつくされる ふたりのデイビッドは失敗ばかりで……

粕谷秀樹のメッタ斬り 025

粕谷秀樹のメッタ斬り 025

今季もプレミアリーグで苦戦を強いられているウェストハム photo/Getty Images

トップ10は維持しておかないと

イングランド屈指の古豪ぐらいしか、好ましい表現が思いつかない。近ごろは〈堕ちた名門〉といわれても反論できず、シーズンの大半が怒りと悲しみで覆いつくされている。

1966年のワールドカップ優勝に貢献したボビー・ムーアとマーティン・ピータース、ジェフ・ハースト、その後もトレバー・ブルッキング、フランク・ランパード、リオ・ファーディナンド、マイケル・キャリックなど、イングランドのフットボール史に名を残す名手を数多く輩出したにもかかわらず、タイトルとは縁遠い日々が長く長く続いている。栄冠まであと一歩に迫ったのは、2005-06シーズンのFAカップが最後だ。しかし、決勝でスティーブン・ジェラード(当時リヴァプール)の一撃に屈した。

ウェストハムが苦しんでいるね。直近5シーズンは12位、7位、11位、13位、10位。サポーターが満足したのは、7位になった2015-16シーズンだけだ。その他4シーズンは勝率5割にも満たず、ヨーロッパリーグ出場権争いにさえ参入できていない。
今シーズンの陣容も悪くはないんだよ。名GKウカシュ・ファビアンスキが右太ももの肉離れで10月から戦列を離れているとはいえ、パブロ・サバレタ、イサ・ディオップ、マヌエル・ランシーニ、マーク・ノーブル、デクラン・ライス、フェリペ・アンデルソンなどなど、12月22日現在で15位の戦力じゃないでしょ。少なくともトップ10は維持しておかないと、あちらこちらから批判されても申し開きはできないよね。

解任の噂が後を絶たないペジェグリーニ photo/Getty Images

ペジェグリーニ監督は風前の灯

不振の責任は、共同オーナーのデイビッド・サリバン、デイビッド・ゴールドにもあるな。監督の人選がなにしろ滅茶苦茶だ。2010年1月にウェストハムを買収した後、ふたりのデイビッドは手を変え品を変え失敗を繰り返してきた。ジャンフランコ・ゾラ→アダム・グラント→ケヴィン・キーン(暫定)→サム・アラダイス→スラベン・ビリッチ→デイビッド・モイーズ→マヌエル・ペジェグリーニ。ポゼッションをしたいのか、カウンターなのか、人選に一貫性を欠いている。

そしておそらく、ペジェグリーニも来年早々にも解任されるだろう。ウナイ・エメリ(前アーセナル監督)、マウリシオ・ポチェッティーノ(前トッテナム監督)、マルコ・シウバ(前エヴァートン監督)の解任を早い段階で予測していた『sky sports』も、ペジェグリーニの解任オッズは12月22日現在でプレミアリーグ・ダントツの1.91倍。風前の灯火ってやつね。

ただ、後任はどうするの? アラダイスやモイーズが復職したら、サポーターがソッポを向く。この人たちが使えないってことは、みんな知っているよね。エメリやM・シウバに声をかける? いや、彼らにも心の傷を癒す時間は必要だよ。ポチェッティーノ? マッシミリアーノ・アッレグリ(前ユヴェントス監督)? 引き受けるわけないじゃん。だれもいなくなった。まさかのペジェグリーニ留任?

嗚呼ウェストハム……。今シーズンも怒りと悲しみに覆いつくされそうだ。

文/粕谷秀樹

スポーツジャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

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