水沼貴史です。一昨シーズンと昨シーズンのリーガ・エスパニョーラは終わってみればバルセロナの独走優勝でしたが、今シーズンは現時点でバルセロナとレアル・マドリードが勝ち点34で並んで首位の座を争うなど、白熱した展開となっています。今回は第2次ジネディーヌ・ジダン体制のもとで調子を上げてきているレアル・マドリードの現状、そして18日(現地時間)に行われるバルセロナとの“エル・クラシコ”の見どころについてお話しします。
8月から10月に行われた公式戦13試合で7勝4分け2敗と波に乗り切れず、おまけにマルコ・アセンシオ、ルーカス・バスケス、マルセロ、エデン・アザール、ガレス・ベイルらが相次いで負傷離脱と、試練続きだったレアル。先行きが心配されていましたが、直近の公式戦10試合では8勝2分けと驚異的な追い上げを見せています。チームの復調の原動力となったのは、一体どの選手でしょうか。
昨シーズンから在籍しているFWヴィニシウス・ジュニオール(19歳)、そして今年の夏に加わった同じくFWのロドリゴ・ゴエス(18歳)やルカ・ヨビッチ(21歳)など、何人かの若手がジダン監督より出場機会を与えられていますが、なかでもウルグアイ代表MFフェデリコ・バルベルデ(21歳)のパフォーマンスが光っていますね。彼の推進力溢れるドリブルやフリーランニング、そして球離れの良さがレアルの攻撃に好影響を与えていると、私は思います。
今のレアルの陣容に目を向けると、中盤の底へ下りてパスを散らすことが得意なトニ・クロースやルカ・モドリッチ、そしてドリブル突破に定評があるヴィニシウスやアザールなど、ボールを保持することが好きな選手が多い印象です。マイボールの際にタメを作ったり、独力で局面を打開できる選手が多い反面、彼らがボールを長く持ちすぎてしまった時に攻撃がスローダウンしてしまうという難点があります。
こうした問題が起きないように尽力しているのがバルベルデです。今シーズンの彼は何度も自陣と敵陣を行き来し、ドリブラーが揃う最前線とパサーが揃う自陣後方を繋ぐ“リンクマン”の役割を果たしています。ボールを持っている味方がパスの出しどころに困らないように何度も動き直していますし、基本的にワンタッチやツータッチでボールを捌くので、彼のところからレアルの攻撃がスピードアップしているような感じがします。ボールを捌いた後も足を止めず、果敢に前線へ飛び出せるのも彼の魅力のひとつですね。守備面でもハードワークできる選手なので、長くレアルのアンカーを務めてきたカゼミロの負担も今は減っているのではないでしょうか。
ここ数年のレアルにいなかった“ボックス・トゥ・ボックス型”のMFということもあり、彼がエル・クラシコという大舞台でどれほど実力を発揮できるかを私自身楽しみにしているのですが、もしかしたらジダン監督より守備力を買われ、リオネル・メッシのマンマークを命じられるかもしれません。攻守両面でハードワークできるバルベルデに対し、ジダン監督がどのようなタスクを与えるかという点に興味を持って頂けますと、より今回の大一番を楽しめると思います。この試合では成長著しい彼の真価が問われると言っても過言ではないですし、彼の出来がチームの浮沈のカギを握ると私は見ています。