[特集/次世代を担う超注目ヤングスター 03]期待の若手から大黒柱へ チームを背負うヤングスターたち

コパ・アメリカ優勝を経てジェズスの飛躍に期待

コパ・アメリカ優勝を経てジェズスの飛躍に期待

ガブリエウ・ジェズス(22)175cm、73kg。マンチェスター・シティ所属。昨季は出場時間が限られていたが、一定の結果を残していた。今季は勝負のシーズンとなりそうだ photo/Getty Images

 才能はすでに十代ではっきり表れているものだ。その選手がどこまで行けるか、その可能性はすでに示されている。

 ただ、それは可能性にすぎず、実際にどこまで行けるかは才能以外の部分にかかっている。例えばドリブルで必ず抜ける才能があり、それが世界のトップでも通用するなら、その選手はトップまで行ける可能性がある。しかし、実際には多くの選手がそのはるか手前でキャリアを終える。ドリブルの才能を発揮できるのは90分間の2、3分間にすぎないからだ。その2分で決定的な仕事ができるとしても、残りの87分間のクオリティが低ければ試合に出ることさえできない。得意分野のスペシャリストであるだけでは不十分で、その他の分野でも少なくとも平均値のプレイはできなければならない。

 若くしてプロデビューする選手には間違いなく才能があるわけだが、チームの中心として活躍できるかどうかはまた別の問題なのだ。ただ、才能の大きさからいって、チームを背負って立つべき若手はいる。

 ガブリエウ・ジェズスの得点力は十代のころから明白だった。マンチェスター・シティに移籍してきてからもそれは発揮されている。とびきり俊敏で、正確なラストタッチができる才能は、ジェズスが世界の頂点まで行ける可能性を示している。しかも、ジェズスは点取り屋にありがちなエゴイストでもない。守備もしっかりできて、味方のためにハードワークを厭わない。つまり欠点のないタイプである。しかし、ジェズスはまだ世界最高のストライカーとはいえない。

 才能も才能以外の能力も持ち合わせているジェズスにとっての課題は、セルヒオ・アグエロとの競争に勝つことだ。同じ才能を持つ者は1人ではなく、ビッグクラブでは常に競争がある。それに勝たなければ頂点にはたどり着けないわけだ。

 今のところジェズスとアグエロは甲乙つけがたい。シティでは、毎試合必ず味方がチャンスを与えてくれる。ゴールゲッターとして、どちらがより高い確率でチャンスを得点に変えられるかというシンプルな勝負になる。ただ、ジェズスに1つ有利なのは多様性だ。

 コパ・アメリカでブラジル代表の優勝に貢献したジェズスのポジションはウイングだった。ドリブルやパスでも優れているジェズスは新しいポジションで新境地を拓いた。シティの右ウイングにはベルナルド・シウバ、リヤド・マフレズがいるので、ジェズスはCFとして起用されている。ウイングとして起用される機会は少ないだろうが、プレイの幅が広がったことはCFとしても生きてくるだろう。伸び盛りのジェズスがアグエロを完全に凌駕する日もそう遠くないかもしれない。

クラブの重心になるべき2人の生え抜き

クラブの重心になるべき2人の生え抜き

トレント・アレクサンダー・アーノルド(20)175cm、69kg。リヴァプール所属。若冠20歳ながらすでに欧州屈指のSBと評価されている若き才能。昨季は正確なクロスを武器に12アシストを記録し、プレミアリーグ史にその名を刻んだ。 photo/Getty Images

 トレント・アレクサンダー・アーノルドはリヴァプール生え抜きの20歳、プレミアリーグのDFとしてアシスト記録を更新するなど昨季は大活躍だった。右足から繰り出すクロスボールの精度が素晴らしく、セットプレイのスペシャリストでもある。

 左サイドのアンドリュー・ロバートソンもそうだが、リヴァプールのサイドバックは少し特殊なところがある。プレイスタイル自体はむしろオーソドックスなのだが、強度が異質なのだ。例えば、中盤で味方がボールを奪いそうになった瞬間には、もうリヴァプールのサイドバックは走り始めている。自分たちのボールになってからアクションを起こすのではなく、その前からすでにスタートを切っているのだ。判断力も凄いが、自分たちのボールにならずに敵のボールになったときには踵を返して戻らなければならないわけで、そのハードワークを全く厭わないところにリヴァプールの特殊さがある。

 すでに右サイドバックとして盤石のA・アーノルドだが、上下動とクロスボールだけでなく、組み立てにどれだけ関与できるかがさらなる成長のポイントになりそうだ。すでにその徴候も見えているので、規格外のサイドバックに化ける可能性は十分にある。

 マンチェスター・ユナイテッドで5シーズン目を迎えるマーカス・ラッシュフォードには、昨季すでに背番号10を与えられている。ユナイテッドのエースナンバーは7番だが、10番もかつてズラタン・イブラヒモビッチやウェイン・ルーニーなどが着用した栄光のナンバーだ。

 トップスピードでのテクニックが素晴らしく、速さとパワーと上手さを兼ね備えた怪物だ。名将アレックス・ファーガソン監督が退任して以来、迷走が続いているユナイテッドを蘇らせるキーパーソンはラッシュフォードだろう。ルート・ファン・ニステルローイやクリスティアーノ・ロナウド、ロビン・ファン・ペルシーなど、ユナイテッドの栄光は常にストライカーの活躍とセットでもあった。

 すでに経験も十分に積んできたラッシュフォードは期待の若手ではなく、重圧を背負って得点を決め続ける真のエースになるべき時である。味方からのパスを待つだけでなく、自ら切り拓いてゴールを決められるのはラッシュフォードの強みだ。チームの総合力でライバルのシティやリヴァプールに劣るユナイテッドだが、その差をひっくり返す個の能力を秘めている。

ドルトムントを支える攻守の若手2本柱

ドルトムントを支える攻守の若手2本柱

ジェイドン・サンチョ(19)180cm、76kg。ボルシア・ドルトムント所属。イングランド代表の各年代でエースとして活躍し、昨年10月には当時18歳ながらA代表デビューも飾っている。昨季はリーグ戦34試合に出場し、12ゴール17アシストを記録して大ブレイク photo/Getty Images

 ボルシア・ドルトムントの攻守を支える若手2本柱も忘れてはいけない。イングランド代表アンダー世代の最高傑作、ジェイドン・サンチョ。シティの秘蔵っ子だったサンチョはトップチームとの契約寸前にドルトムントへ移籍した。そのおかげで、我々はおそらく少し早く彼の存在を知ることができた。まだ18歳だったが、シティでベンチに座る時間を我慢できなかったのだろう。

 180センチと大きな選手ではないが、アジリティが高く、ピタリと吸い付くようなボールタッチの才は従来のイングランドのプレイヤーにはあまり見られないタイプである。ドリブル、パス、シュートと何でもできる万能アタッカーだ。

 今のところサンチョの挑戦は吉と出ている。近年のイングランドは育成年代が躍進している。他の欧州諸国に比べると遅れていたものの、国立育成センターを設立した効果がはっきり出たのが2017年で、サンチョがプレイしたU-17代表は世界一になった。ただ、才能ある若手もプレミアリーグのビッグクラブではなかなか起用されない。経験と実績のある選手でポジションは占められているからだ。英国を出て、ドイツに出場機会を求めたサンチョの行動はそんな閉塞状況への突破口であり、その点でイングランド代表の将来を左右する挑戦といえる。

 U-20ワールドカップでフランス代表のキャプテンを務めたダン・アクセル・ザガドゥも破格のセンターバックである。196センチの長身、岩のような肉体は圧巻。昨季はドルトムントで17試合に出場した。

 ザガドゥはその身体能力だけでなく、フィードの正確さや冷静な判断力も秀逸である。さらに左利きということも大きい。左サイドバックの左利きはもはや常識だが、センターバックの左側を担当する選手も左利きが望ましい。それだけパスを出すときのアングルが広がるからで、自陣からのビルドアップが重視されている近年は左利きのセンターバックの価値が上がっている。

文/西部 謙司


※電子マガジンtheWORLD No.236、8月15日発売号の記事より転載

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