[特集/Jを進化させる理想家vs策士 03]大分トリニータ・片野坂知宏インタビュー 後編

我が道を行く「理想家」と対極にあるのは、柔軟な戦術やマネジメントでチームを導く「策士」であると考える。その筆頭格と言えるのが、大分トリニータの片野坂知宏監督だろう。2016年に大分の監督となり、同年にJ3で優勝してJ2へ昇格。2017年の9位を経て、2018年に2位となりJ1昇格を決めた。就任からわずか3年で2度のカテゴリー昇格である。J1でも第18節を終えて5位と上位をキープしている。まさに台風の目。旋風を巻き起こしている大分は、いかにして作られたのか? 戦術の選択、選手へのアプローチなど、チーム作りについて指揮官に聞いた。

九州全体のサッカーを引っ張る存在になりたい

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プレミアクラブの戦い方も参考にしていると語る片野坂監督「グアルディオラのサッカーは面白いです」 photo/Kazuyuki Akita

 サッカーは常に進化しており、監督は新しい情報を入手するべく、幅広くアンテナを張っていなくてはならない。片野坂監督も海外サッカーをチェックし、ときには選手たちにVTRを見せることがあるという。また、監督としての将来像もしっかりと持っている。そのために、いまなにをしなければいけないかをしっかりと認識し、チーム作りに取り組んでいる。心のなかに、強い覚悟を持ちながら──。

―海外サッカーをチェックする時間などはあるのですか?



片野坂 ありますよ。プレミアリーグ、ラ・リーガをよく見ますね。マンチェスター・シティが好きで、グアルディオラ監督のサッカーは参考になりますし、見ていて面白い。リヴァプールも前の3人(フィルミーノ、マネ、サラー)のポテンシャル、迫力がすごい。あの3人の良さを引き出す戦術、あのメンバーでできる戦術をやっているクロップ監督は、さすがだなと思います。CL王者にも導き、常に勝たせる監督ですね。グアルディオラ監督とクロップ監督の良いとこ取りではないですが、マンチェスター・シティの良いところと、リヴァプールの良いところを合わせた攻撃ができたら良いなと思っています。実際、トリニータはしっかりとボールを繋いで相手のプレッシャーを外してサイドから得点を狙う部分と、ボールを奪った瞬間に素早い攻撃でカウンターを仕掛ける部分などいろいろな攻撃にトライしています。サッカーは相手がいるものなので、しっかりと使い分けができるようにやっていきたいです。

―試合を見て参考にするのですか?



片野坂 トリニータに合いそうな戦術、プレイを映像で見せたことがあります。自分たちがやりたいサッカー、目指すサッカーがあるなか、いいシーンがあれば『こういうのがしたいよね』と積極的に取り入れています。サッカーは常に進化しているので、トップレベルを見てどういうことが必要になっているのか、どうすればチャンスになるのかを検証することはとても大事です。そこには常にアンテナを張っています。

―大分トリニータが持つポテンシャルを考えると、今後どのようになっていかなければいけないと思っていますか?



片野坂 J1でタイトルを取ったことがあるチームで、県民の誰もが知っている誇りだと思います。地方ではトップレベルの試合をなかなか見られる機会が少ないので、J1に残留して九州全体のなかでサッカーを引っ張っていく存在になっていけるといいですね。そのためにはトップがJ1にいることも大事ですが、アカデミーも充実させる。トップがこういうサッカーをしていて、ユース、ジュニアユース、ジュニアも同じように面白いサッカーをする。そして、良い選手がトップにあがってくる。そういうクラブ
になっていくのが、トリニータとしてやっていくべきことのひとつだと思います。

―アカデミーとの連携はどのようになっているのですか?



片野坂 U-18の山崎(哲也)監督はトップで2年間コーチをしていたので、私がどういうサッカーをしているか理解したうえでトライしてくれています。U-18もボールを繋ぎながら攻める面白いサッカーをしています。これを継続しながら、トップにあがる選手を育ててほしいです。トップのトレーニングにU-18の選手を呼んで一緒にやることもあります。継続的に良い選手を輩出することがクラブの強みになってくるので、アカデミーの選手を大事にしていかなければいけないと思っています。

―数年後を考えたときに、どんな監督になっていたいですか?



片野坂 攻撃が好きなので、『攻撃的なサッカーをする監督』と言われていたいですね。『勝たせる監督』という評価もしてもらいたいです。そのためには、攻撃で上回り、点を取って勝つチームを作り上げないといけない。もちろん、攻撃だけではダメで、守備もしっかりやる。攻撃、守備の両面を構築しながら、そういう印象を残せるように取り組んでいきます。

―監督という職業について、“辛い”と思ったことはありませんか?



片野坂 J3、J2、J1とステップアップしてきているので、そこまで“辛い”というのはまだ感じていません。ただ、私ひとりでは決してできないというのは感じています。スタッフの協力、選手の理解がなければできないことで、全員が同じベクトルを持ってやってくれています。この部分では、本当にみんなのおかげだと思っています。とはいえ、私はいつでも責任を取る覚悟でやっています。トリニータを勝たせることができない。うまくマネジメントできない。そうなったら、続けるべきではないと考えています。常に覚悟を持って取り組んでいますが、いまは良いチームを作れているのかなと思っています。

インタビュー・文/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD No.235より転載

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