[水沼貴史の欧蹴爛漫016]あのマンCを苦しめた! “31歳”ナーゲルスマン監督の何が凄い?

2016年よりホッフェンハイムを指揮

2016年よりホッフェンハイムを指揮

ホッフェンハイムで辣腕を振るっているナーゲルスマン監督 photo/Getty Images

水沼貴史です。2日と3日にUEFAチャンピオンズリーグのグループステージ第2節が行われ、私も数試合をチェックさせて頂きました。今節はレアル・マドリードやバイエルン・ミュンヘンをはじめ、強豪クラブの苦戦が目立ちましたが、今回はマンチェスター・シティをあと一歩のところまで追い詰めたホッフェンハイムについてお話しします。87分にDFシュテファン・ポッシュがゴール前でのボール処理を誤り、それがシティの逆転ゴールに繋がってしまいましたが(1-2で敗北)、攻守両面で組織力の高さを見せつけた彼らには好感を持てました。シティの選手に自分達の守備組織を崩され、GKオリヴァー・バウマンのもとへ危ないシュートが飛ぶ場面はそれほど多くはなかったと、私は思います。今年7月に31歳になったばかりのユリアン・ナーゲルスマン監督が、ホッフェンハイムにどのようなサッカーを植え付けてきたのか。彼が実践している戦術の魅力についてご説明しましょう。

“可変型システム”により分厚い攻めが可能に

“可変型システム”により分厚い攻めが可能に

マンC戦ではアンカーで起用されたホーフマ photo/Getty Images

組織的な守備で相手の攻撃のパワーを削ぐことに長けるナーゲルスマン監督ですが、格上相手でも守備一辺倒の戦いをせず、攻撃に惜しみなく人数をかけるのが特長です。では、シティ戦で彼がどんな布陣を採用したのかを見ていきましょう。

この試合、ホッフェンハイムは相手ボール時に[4-3-3]の布陣を敷いていましたが、アンカーのユスティン・ホーフマを中心とする3人のセントラルMF(ホーフマ、ケレム・デミルバイ、フロリアン・グリリッチュ)が適度な距離感を保ち、自陣バイタルエリアのスペースを消していました。彼らが中央を固めてシティのパスワークを寸断していましたし、サイドにボールが展開された時も、両サイドバック(パヴェル・カデラべク、ジョシュア・ブレネット)と両ウイングFW(イシャク・ベルフォディル、ジョエリントン)が連係し、ボールホルダーを挟み撃ちにできていたと思います。

また、ナーゲルスマン監督はマイボール時にホーフマを両センターバック(ポッシュ、ケヴィン・アクポグマ)の間に組み入れ、3バックを形成させるという工夫を施しています。これと同時に(4バック時の)両サイドバックを敵陣深くまで押し上げ、マイボール時に[3-2-5]という、超攻撃的な布陣を敷いていたのが魅力的でしたね。シティ相手にも複数人が連動した分厚い攻めができていました。

攻撃時にホーフマを最終ラインに下げた理由についてですが、ボールを失った際に相手に中央を突破されることを防ぐという、リスクマネジメントの意味合いがあったと私は思います。今後ホッフェンハイムのサッカーをご覧になるときは、ナーゲルスマン監督が攻撃時と守備時でどのように布陣を使い分け、チームを機能させているかに注目してほしいですね。大胆な攻撃の裏で守備を疎かにしない、彼の卓越した手腕が分かると思います。

最新の映像機器を使って各選手に正しいポジショニングを身につけさせるなど、ナーゲルスマン監督の工夫に溢れた指導には驚かされています。ホッフェンハイムをクラブ史上初のチャンピオンズリーグ本選出場に導いた彼ですが、来季よりRBライプツィヒを率いることが決定しています。ホッフェンハイムでのラストシーズンで、彼がサッカー界にどのようなインパクトを残してくれるのか。新進気鋭の指揮官の活躍ぶりから、今後も目が離せません。

ではでは、また次回お会いしましょう!


【ホッフェンハイム対マンチェスター・シティ/基本フォーメーション】

※以下のツイートをクリック→左の画像をクリックでご覧頂けます。


参照元:Twitter


水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。

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