ベスト16で散った日本 ポーランド戦で見せられた経験と、ベルギー戦で足りなかった経験

あと1歩及ばなかった日本代表 photo/Getty Images

最もベスト8に近づいたのは大きな収穫

・悔やまれる2-0からのゲームメイク

ベスト8入りまであと1歩だった。日本にとってワールドカップ決勝トーナメント1回戦は3度目の挑戦だったが、これほどベスト8入りが見えたゲームはなかった。後半3分に原口元気、7分に乾貴士のゴールで2点をリードした時、サポーターの誰もが勝てると感じたはずだ。しかしベスト8入りへどのように試合を終わらせるのか。この経験がまだ日本にはなかった。得点を奪おうと焦って前がかりになってきたベルギーに対し、日本は対応が遅れてしまった。

グループステージ最終節のポーランド戦では0-1と負けていたにも関わらず、他会場の結果を考えて時間稼ぎをすることを選んだ。世界からはワールドカップにふさわしくない戦い方だと批判されたが、あの戦い方ができたのは日本の選手を含め西野朗監督の経験があったからこそだ。しかし、ベルギー戦では2-0とリードしたあとの動きが明らかに遅れてしまった。2点のリードを守り切るのか、それともこのまま追加点を狙うのか。どちらの道を選択するにしても、交代カードを切って選手たちに強烈なメッセージを出したいところだった。ポーランド戦では長谷部を投入して時間稼ぎへの明確なメッセージを飛ばすことができたが、ベルギー戦ではそれが少し遅れてしまった。2点をリードしたあともエデン・ アザールのシュートがポストに直撃したり、ロメル・ルカクのヘディングシュートがゴールの左へわずかに外れるなど危ない場面は増えていた。これらのシュートが入らなかったのは運が良かったのだが、この危険信号に対して日本側の対応は遅かった。

西野朗監督にジレンマがあったのも間違いない。日本は序盤から積極的にプレスをかけてベルギーのビルドアップを潰せていたが、やや飛ばし気味だった。特に上下動を繰り返す右サイドの原口元気、左サイドの乾には大きな負担がかかる。どこかのタイミングで交代させたかったが、日本のベンチには攻守両面において原口、乾と同じクオリティを持つ選手がいなかった。守り切るにしても、フレッシュなアタッカーを入れてカウンターのキレ味を増大させるにしても、どちらにしても選手層が不足していた。2-0はサッカーで最も逆転される恐れがあると言われるスコアだ。ここでチームとして対応をはっきりさせることができなかったのは痛い。ベルギーは高さのあるマルアン・フェライニを右サイドに入 れて長友佑都とのミスマッチを狙ったり、失点後にすぐ動いてきた。ビハインドを負っているのだから動くのは当然だが、リードしている時だからこそ日本の方が早く動きたいところだった。試合前から分かっていたことだが、選手層では明らかにベルギーが上だった。

そして最も悔やまれるのは後半ATのコーナーキックだ。本田圭佑のフリーキックからコーナーキックのチャンスに繋げたが、時間帯を考えれば無理をする必要はなかった。延長戦に賭けるべきだったが、ここで日本はリスクをかけてしまった。日本は今大会コーナーキックから何度もチャンスを作っているが、高さのあるベルギー相手には分が悪い。リスクをかけるタイミングだったのかは疑問が残る。そしてコーナーキックのクリアボールから相手にカウンターを許し、そのまま失点してしまうのは大会前におこなったスイス代表とのテストマッチでも起きていたことだ。その反省を最後に活かすことができなかった。あそこでポーランド戦で見せたしたたかさが欲しかったが、そこの経験はまだ足りなかっ たのかもしれない。

またベルギーのカウンターから最後にフィニッシュを決めたのはナセル・シャドリ。ベルギーが65分にヤニック・フェレイラ・カラスコに代えて投入した選手だった。交代で入ったシャドリだからこそ、自陣からスプリントをかけて日本のゴール前へ迫ることができた。シャドリだけではない。同点弾をヘディングから決めたのは65分にドリース・メルテンスに代わって入っていたマルアン・フェライニだった。結果的にベルギーはロベルト・マルティネス監督の采配がヒットしたことになる。日本に2点先行されたことはマルティネス監督も反省すべきところだが、そこから試合を戻したところは評価に値する。交代カードの差が試合を分けたのは間違いない。

・大きな課題は守備にあり。W杯を制すには守備が最重要

ただし、この敗北は日本にとって非常にポジティブな経験だった。ベスト8入りまで僅かな差だったのは間違いない。ベルギーと相性が良かったところもあるが、世界との差を改めて確認することができた。ワールドカップに出場している国の中でもトップレベルのパワーを誇るベルギー相手に競り合えているところもあり、ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督が口酸っぱく言ってきたデュエルが活きていた部分は間違いなくあったはずだ。球際で厳しく行かなければならないとの意識が選手たちに根付いていた。結果的に土壇場で西野ジャパンに代わったが、ハリルホジッチ前監督就任以降の3年間は決して無駄ではなかった。このベスト16入りは西野ジャパン誕生後の2か月間だけで成し遂げられたものではない。この意識はJリーグを通して日本の若い選手たちに伝えていくべきものだろう。日本が目指すべきサッカーも今大会で改めてはっきりした。ベスト16の舞台でベルギー相手に自分たちの攻撃が通用したのだから、この攻撃的な路線を今後も貫いていくべきだろう。この大会を機に日本代表は一新されることになるかもしれないが、世代交代してもスタイルの維持はできる。

残る大きな課題はやはり守備面だろう。ベルギー戦では3失点してしまったが、結局西野ジャパンはテストマッチを含め毎試合失点している。ワールドカップのようなビッグトーナメントを勝ち抜くうえで毎試合2、3点取らなければならないのはあまりに苦しい。最少得点でも勝ち点3を稼ぎ、時にはスコアレスドローで泥臭く勝ち点1を稼ぎたい。今回のベルギー戦では2点を先行できたが、一発勝負となれば相手も守備は徹底的に固めてくる。GKを含め安心して見ていられる守備の構築が上位進出には欠かせない。振り返れば2014ブラジルワールドカップを制したドイツ代表は決勝トーナメントに入ってからアルジェリア戦の1点、ブラジル戦の1点しか失点がなかった。それもブラジル戦の1点は7-0とリードした後半ATに決められたものだ。

2010南アフリカワールドカップを制したスペイン代表は決勝トーナメント以降全てのゲームを1-0で制している。ドイツもスペインも派手な攻撃に目が行きがちだが、相手の攻撃を凌ぐ守備力を備えていた。トーナメントを制するには守備が整っていることが絶対条件となる。日本は今回ベルギー相手に2点を奪えた。セネガルからも2点を奪えた。攻撃にこれ以上注文をつけるのは難しく、2点を取ったゲームでは確実に勝利がほしい。今大会で確立した日本のスタイルを維持しつつ、守備を整備することができれば本格的にベスト8入りの道が見えてくる。ベルギーに敗れたのは残念だったが、西野ジャパンが得た財産は非常に大きいものだった。
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