[水沼貴史の欧蹴爛漫004]ボールを持ってないときが怖い、そして面白い! バイエルン攻撃のキーマン、トーマス・ミュラーの“動き”のスゴさとは[映像アリ]

ポジショニングやフリーランニングが秀逸

ポジショニングやフリーランニングが秀逸

ハインケス監督のもとで復活を遂げたミュラー photo/Getty Images

水沼貴史です。欧州の各リーグも終盤戦に差し掛かろうとしていますが、ブンデスリーガでは早くもバイエルン・ミュンヘンの6連覇が決まりそうですね。今回はそのバイエルンの選手の中から、ユップ・ハインケス監督就任以降調子を取り戻しているFWトーマス・ミュラー(ドイツ代表/今季の同リーグ6得点10アシスト)の魅力についてお話しします。ポイントはボールを持っていないときの、彼の動きや位置取りにあります。

まず彼の特長のひとつに、的確なポジショニングやこぼれ球への反応の速さが挙げられます。“ごっつぁんゴール”(編注1)を決めているだけのように思われがちですが、そのように見受けられる場面でも彼のポジショニングの妙が際立っていますね。特にアリエン・ロッベンやフランク・リベリがドリブルで敵陣に侵入した際によく見られるのですが、ミュラーは彼らが放つパスやシュートの高さ、コース、スピード、そして相手GKがシュートを防いだ際にどの地点にボールが転がるかを瞬時に予測し、こまめにポジションをとり直しています。しかも最前線のロベルト・レヴァンドフスキとポジションが重ならないように動いているので、相手DFとしては監視すべきポイントが増えて厄介でしょう。

また、フリーランニングのコース取りや動き出しのタイミングも特筆すべきものがあります。特に今季のブンデスリーガ第22節(シャルケ戦)でミュラーが決めた勝ち越しゴールには、彼の持ち味が滲み出ていました。ロッベンとアイコンタクトがとれたその瞬間に最終ラインの背後に抜け出したこともそうですが、横並びになっていた二人のDFの間を通過し、ニアゾーン(編注2)に侵入するという思い切った決断が良かったと思います。彼に抜かれたシャルケのDFふたりは、まさかあの狭いスペースを掻い潜られるとは思わなかったでしょう。レヴァンドフスキへのクロスに見せかけて相手GKのニアサイドを射抜き、ゴールを陥れるという彼の発想にも驚かされました。今後もバイエルンが敵陣に攻め込んだときは、彼のフリーランニングに注目してみて下さい。

“囮の動き”でバイエルンの攻撃を活性化

“囮の動き”でバイエルンの攻撃を活性化

ミュラーの持ち味を引き出したハインケス監督 photo/Getty Images

彼の特長をもうひとつ挙げるとすれば、高い決定力の持ち主でありながら、自身の得点や独力突破に固執しないことでしょう。自分がボールを受けるためだけに動くのではなく、自身が囮となって他の選手をフリーにすることもできるのです。むしろ、そちらのプレイの方が得意なのではないでしょうか。特にサイドで起用された時に目立つのですが、彼は状況に応じてサイドから中央にポジションを移し、サイドバック(主にジョシュア・キミッヒ)が攻め上がるスペースをきちんと確保します。従来のサイドアタッカーにありがちな強引な突破(球離れの悪さ)やサイドに張り続ける悪癖がないので、サイドバックを使った分厚い攻撃を重んじる指揮官にとっては打ってつけの選手です。

昨季は、カルロ・アンチェロッティ前監督のもとでの不振も話題になりました(リーグ戦29試合出場5得点)。就任当初[4-3-3]の布陣を採用していたアンチェロッティ監督には、多少球離れが悪くとも、ウインガーに単独でのサイド突破を期待しているふしがありました。私はこれが原因ではないかと思います。必然的に突出したスピードや足下の技術の持ち主がサイドで重宝されるようになりますが、ミュラーはそういったタイプではありません。そのために序列が下がってしまったのでしょう。その後も布陣を変えるなりして彼の活かし方を模索したアンチェロッティ前監督ですが、序列が下がったことを感じ取ったミュラーの失望は大きく、両者の関係がぎくしゃくしてしまったのかもしれません。

反面、2011年から2013年にもバイエルンで指揮を執り、かねてよりミュラーの特性を理解しているハインケス監督には、彼の“囮の動き”がバイエルンの攻撃にアクセントをもたらすという確信があるのでしょう。ターンオーバーを採用する場合でも、ハインケス監督はめったに彼を先発から外しません。まだまだ今季の公式戦は残っていますから、バイエルンの試合をご覧になる皆さんには、時に黒子役に徹するミュラーのプレイにも注目してほしいですね。

ではでは、また来週お会いしましょう!

※バイエルンの優勝が決まるかもしれないブンデスリーガ第27節(RBライプツィヒ戦)は、日本時間で19日の早朝2時にキックオフ!

【シャルケ戦/ミュラーのゴール動画】

参照元:youtube(ミュラーの得点シーンは2分37秒~)


水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。

(編注1)「あとはボールに触るだけ」の状況で決めたゴールの俗称。

(編注2)ペナルティエリア内の両脇の部分。


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