[水沼貴史]アーセナル優勝の行方や三笘の躍進…… プレミアリーグは後半戦も目が離せない

水沼貴史の欧蹴爛漫075

水沼貴史の欧蹴爛漫075

シーズンの半分を終えて、首位を独走するアーセナル photo/Getty Images

成長を感じられる首位アーセナル

水沼貴史です。早いもので、欧州サッカーの2022-23シーズンも折り返し地点を迎えています。そこで、今回はプレミアリーグの前半戦の振り返りと、後半戦の見どころについて少々お話をしたいと思います。

W杯があるシーズンなのでよりタイトとなり、どのチームにとっても非常に難しいシーズンとなっているであろうプレミアリーグ。そんな今季のプレミアリーグを語る上で、欠かせないのがアーセナルです。

近年は苦しい時期が続いていたアーセナルですが、今季はここまで19試合を消化して16勝2分1敗の勝ち点50。黒星がわずかに1つで、1試合消化が多い2位マンチェスター・シティに勝ち点差「5」をつけて首位に立っているのです。3位ニューカッスル、4位マンチェスター・ユナイテッドとはすでに11ポイントも差があり、アーセナルを追いかけられるであろうクラブは、すでにシティくらい。ミケル・アルテタ体制4年目にして、素晴らしいシーズンを送っています。
中でも、今季はFWブカヨ・サカが絶好調。W杯のピッチに立って自信をつけたこともあるでしょうが、タフなプレミアリーグでも無双状態となっています。ボールを取られないような身体の使い方もできるようになりましたし、凄みがより一層増しました。なかなか止めることのできない選手になっていると思います。

また、今季はチームとしても非常に成長を感じられます。アルテタが指揮官になって以降、若い選手たちが多く起用されてきました。当然、成長過程のチームには若い選手たちに「経験を積ませなければならない」や「自信をつけさせなければならない」など、多くの課題がありました。それらを一段階クリアし、自信が確信へと変わっていっている時期に来ているように思いますね。

勝者のメンタリティなど、若さによる勢いだけではない部分も見えてきています。なので、非常に粘り強い戦いができていますし、最後の最後できっちり勝ち切れる展開も多くなりました。要所要所で選手同士がコミュニケーションをとる場面も多く、チーム内の雰囲気も抜群。今冬の移籍市場ではブライトンからFWレアンドロ・トロサールを獲得しましたし、優勝争いを行う上で不安材料があるとすれば、怪我人が相次いでしまわないかぐらいですかね。

ニューカッスルでチーム内得点王の活躍を見せるアルミロン photo/Getty Images

躍進ニューカッスルが堅守で躍進

今季のプレミアリーグを盛り上げている3位ニューカッスル(10勝9分1敗)も忘れられない存在です。とにかく彼らは面白い。私は個人的に、MFミゲル・アルミロンとMFジョエリントンに以前から注目していました。特にアルミロンは、頑張っているけれどなかなか報われない選手という印象がありましたが、今季はここまでチーム最多となる9ゴールの大活躍。ようやく個人としても、チームとしても結果が表れています。

また、彼はウイングとして攻撃面で結果を残すだけでなく、その献身性で守備面でもチームに貢献しています。アルミロンやジョエリントンはチームメイトが相手と1対1になりそうな場面でもきちんと戻り、2対1の数的優位を作れる。その甲斐もあってニューカッスルはリーグ最少失点(11失点)を維持し、堅守を披露していますね。ここまで1敗しかしておらず、これをやれば勝てるという形も前半戦で見えていますし、彼らも非常に素晴らしいシーズンを送っているでしょう。後半戦はいかにして勝ち切れる試合を増やせるか、これがトップ4フィニッシュの鍵となるのではないでしょうか。

今季は苦しい戦いが続くリヴァプールとチェルシー photo/Getty Images

不振に陥るリヴァプールとチェルシー

近年プレミアリーグを牽引してきたシティは今季も相変わらずの強さを発揮していますが、一方で苦戦を強いられているのがリヴァプールとチェルシーです。リヴァプールに関して言えば、怪我人が多く出てしまったというのが大きな要因かもしれません。また、中盤を中心に編成なども変わってきており、もしかしたら年齢的な部分もあるかもしれませんし、過渡期に差し掛かっている可能性があります。ただ、シーズンはまだ半分残っていますし、クルゲン・クロップが今後どのようなマネジメントをこなっていくかに注目したいです。

チェルシーに関しては、正直、私はちょっと厳しいのではないかなと感じています。ブライトンの指揮官であったグレアム・ポッターを引き抜きましたし、選手もいるにはいるが、なかなかハマらない印象。夏に加入したFWラヒーム・スターリングは苦戦を強いられており、冬に加入したFWジョアン・フェリックスもデビュー戦で退場してしまいましたからね。ポッターは色々な策を持ってる監督なので、色々と試そうとしている様子はうかがえます。アーセナルのように我慢して長く指揮官を任せることができればチームが強くなる可能性は大いにあるでしょうが、チェルシーなのでそれもわからない。ある意味、将来はフロント次第なのかもしれませんね。来季以降の続投へ向けて、後半戦で少しでも巻き返せるか。そうはいっても、CL圏内までまだ10ポイント差なので、ちょっとしたことをキッカケに上向く可能性はあるかもしれません。

圧巻のパフォーマンスを披露し、多くの称賛が寄せられる三笘 photo/Getty Images

三笘の活躍や残留争いも目が離せない

日本人として目が離せないのがブライトンでしょう。トロサールが退団してしまいましたが、MF三笘薫が素晴らしい活躍を見せていますし、他にもMFアレクシス・マックアリスターやMFソロモン・マーチなど素晴らしい選手たちがいます。シーズン途中に監督が交代しても戦術が細かいところまでしっかり浸透していて、選手たちが違和感なくプレイできているように感じますし、チームの連携が引き続き良い。結構効いていたアダム・ララーナの負傷は少々気になりますが、見ていて面白いチームなので、後半戦も台風の目になってほしいです。

そして、今季のプレミアリーグは6ポイント以内に8チームがひしめき合う下位も大混戦。ウェストハムやエヴァートン、サウサンプトンなども残留争いを余儀なくされています。ウェストハムは「選手が揃っているわりには」、ウルブズは「ハードワークしているわりには」など……。ぞれぞれ特徴はあるものの、結果がついてこない。14位のレスターまで含めて、残留争いは近年で最も熾烈な戦いとなるかもしれません。

もちろん、後半戦最大の見どころは、アーセナルが2003-04シーズン以来19年ぶりとなる優勝を果たせるか。ただ、このまますんなり逃げ切らせるのではなく、シティ、ユナイテッド、トッテナム辺りはしっかりプレッシャーをかけていってほしい。かけなければならないチームだと思います。そして、追っていきたいのはやはり、プレミアリーグでも圧巻のパフォーマンスを披露している三笘。ステップアップを含めて、今後のさらなる活躍に期待です。今季のプレミアリーグはアーセナルが順位的に頭一つ抜け出していますが、中位のチームも下位チームもどちらに転ぶかわからないような状況となっているため、最後まで本当に目が離せない試合が続くはずです。最後まで楽しみましょう!

それでは、また次回お会いしましょう!

水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。YouTubeチャンネル『蹴球メガネーズ』などを通じ、幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている

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