常識を覆す逆足SBの存在 特殊な環境で生まれた“ペップ・シティのリーサルウェポン”

今季は素晴らしい働きを見せるカンセロ photo/Getty Images

彼に似たタイプはいない

基本的にサイドバックは利き足のサイドで起用されることが多い。カイル・ウォーカーやトレント・アレクサンダー・アーノルドといったワールドクラスの選手たちはみな利き足のサイドで存在感を発揮している。

しかし、マンチェスター・シティのジョアン・カンセロは右サイドバックの選手だが、利き足の反対の左サイドでプレイすることが多く、攻撃面での貢献でいえば左サイドバック時の方が効果的だ。

それはカンセロのプレイスタイルとシティの戦い方が影響している。以前までのSBは外のレーンでプレイに関与することが多く、SBの攻撃参加といえばオーバラップからのクロスが一般的か。現在もその姿がオーソドックスなのだが、カンセロは中央にポジションを取り、サイドバックながらインサイドハーフのように振舞うことが多い。これはチームメイトのオレクサンドル・ジンチェンコも同じであり、ペップが多用する偽サイドバックといった動きだ。

前述したようにインサイドハーフのように振舞うのだが、本来のケビン・デ・ブライネやベルナルド・シウバのような本職の選手と違い、最終ラインからインサイドハーフの位置までポジションを上げるため、比較的相手からのプレッシングが弱い。本来はそのポジションでプレイすることはないため、相手が明確なカンセロ対策をしていなければマークをずらすことができる。そこにデ・ブライネ級のアイデアとパスセンスを持ったカンセロが比較的マークの薄い状態でプレイすることで多くのチャンスを生み出している。

また、右利きの選手が左サイドでプレイすることによってバイタルエリアでの攻撃の幅が広がることになる。左サイドから左利きの選手がシュートを打とうとすれば守備に入る右利きのSBに防がれやすいが、右利きの選手がシュートを打つことになれば、右利きのSBは逆足での守備となり、相手からすれば噛み合いが悪い。3アシストを記録したクラブ・ブルージュ戦や上位対決となったチェルシー戦でも左サイドから数字を残しており、シティでのカンセロは利き足の右ではなく、左がベストといっても過言ではないか。

SBが中央にポジションを取り、指揮官であるペップが求めるタスクの多さなど特殊な状況ではあるが、珍しいタイプとなっているカンセロ。型にはまらないところが彼の良さであり、今後彼のような自由奔放なSBは現れるのか。

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