ドルトムント時代の香川真司を超える日本人は現れるのか 久保建英の気になる現状

ドルトムントで爆発していた香川 photo/Getty Images

リーガへの挑戦が正解だったか分からなくなってきた

ベスト16入りを果たした2018ロシアワールドカップではMF香川真司が10番を背負ってチームを引っ張ったが、2022カタールワールドカップでは誰が攻撃を引っ張るのだろうか。期待の若手も続々と出てきているが、やや伸び悩んでいるようにも感じられる。

特に気になるのは、レアル・マドリードからヘタフェにレンタル移籍しているMF久保建英だ。スペインでも能力が高く評価されているのは間違いないが、レンタル先で結果を残せていない。今季前半戦はビジャレアルで出番を得られず、現在所属するヘタフェも久保のプレイスタイルにマッチしているかは微妙なところだ。久保のような攻撃的プレイヤーが結果を残すには、チームスタイルが合うかどうかが非常に重要だ。

今季のヘタフェは1試合平均シュート数がリーグワースト3位となる8.6本、ポゼッション率もワースト5位の45.7%となっており、ボールを保持してゲームを支配するチームではない。明らかな中堅クラブであり、ヘタフェの第一目標は残留だ。このチームで久保が真価を発揮するのは簡単なことではない。
レアルと契約を結んだ際には日本のサッカーファンも大きな興奮に包まれたが、今となってはリーガ挑戦がベストな選択肢だったのか疑わしくなってきた。例えば香川は2010年にセレッソ大阪からドルトムントへ移籍したが、当時チームを指揮していたユルゲン・クロップの構想が香川のスタイルにフィットしていた。香川が海外挑戦で成功を収められたのは、実力に加えてチーム選びが当たったからだ。

ドルトムントは2007-08シーズンこそ13位だったが、クロップを招聘してからは2008-09シーズンに6位、2009-10シーズンに5位と着実に順位を上げ、ブンデスリーガでも上位を狙える集団になっていた。その野心溢れる攻撃的な集団に香川が加わることになり、2010-11シーズンからのブンデスリーガ連覇に繋がった。

ヘタフェで奮闘する久保 photo/Getty Images

久保はカタールW杯で主力となるか

久保も才能は抜群で、将来的にワールドクラスのタレントになる可能性を秘めている。しかし、スペインの中堅クラブにレンタル移籍するパターンで順調に成長できるかは分からない。スペインより、攻撃的なマインドを持ったブンデスリーガの中堅クラブの方が強みを発揮できたかもしれない。

昨季レンタル移籍していたマジョルカでは自身の能力をアピールしたが、ビジャレアルでは明らかに評価が下がった。心機一転ヘタフェにレンタル移籍したものの、今季の戦いは久保の成長スピードを遅くしてしまった印象がある。現段階ではレアルでポジションを掴むことも難しいため、リーガ・エスパニョーラでのプレイが今後の成長に繋がるのか慎重に検討する必要があるのではないか。マジョルカやヘタフェといったクラブではリーガ・エスパニョーラの優勝争いを経験することも出来ない。ドルトムントで早くから優勝争いのプレッシャーを味わっていた香川とは充実度に差があり、成長スピードに違いが生まれても仕方がない。

2022年のカタールワールドカップ出場を目指す日本代表では、守備陣が1つのストロングポイントになりつつある。ボローニャで活躍するDF冨安健洋、シュツットガルトMF遠藤航、サンプドリアDF吉田麻也、マルセイユDF酒井宏樹など、欧州トップリーグで活躍する選手が増えているからだ。

一方、攻撃陣には少し不安が残る。香川の後継者となる存在が欲しいところだが、久保やFCポルトで出番を掴めないままUAEのアル・アインに向かったFW中島翔哉など、期待されたプレイヤーが伸び悩んでいる。攻撃面で創造性不足に陥る可能性も考えられる。

カタールW杯を迎える頃には久保が主力の1人になっているシナリオも予想されたが、今の成長スピードでは難しいか。香川はドルトムント在籍時の2012年に『EUROPIAN SPORTS MEDIA』が選ぶ欧州年間ベストイレブンにも選出されたが、当時の香川を超える日本人選手はまだ現れそうにない。海外でプレイする日本人アタッカーは増えているが、改めて当時の香川の凄さに驚かされる結果となっている。

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