アーセナルを苦しめる“自滅の刃” CL圏内返り咲きも十分あり得たはずが……

思わず手を出してしまったバーンリー戦のジャカ。この後レッドで退場に photo/Getty Images

自滅で失った勝点は「10以上」

「非常に力強いパフォーマンスがふたたび見られた。しかしプレミアリーグでは、相手にゴールをプレゼントしていては、そして相手のエリア内では冷酷にならなければ、勝つことはできない」

1-0で敗れたアストン・ヴィラ戦後の会見で、アーセナルのミケル・アルテタ監督はこのように話した。この試合で生まれた唯一のゴールは、2分にセドリック・ソアレスの単純な繋ぎのパスをかっさらわれたことによって生まれたものだった。アーセナルには多くの時間が残されていたものの、結局アストン・ヴィラのゴールをこじ開けることができないまま、終了の笛を聞くことになる。昨年末からはリーグ戦8戦無敗を続け、上位陣の足踏みもあって一時は返り咲きも期待されたアーセナルだが、ここにきて連敗。ふたたび暗雲が立ち込めはじめた。

今季のアーセナルの問題点は山のようにある。攻撃陣のクリエイティビティ不足、エースであるピエール・エメリク・オバメヤンの不調。さらに冬の市場で大量に整理しなければならなかったバランスの悪いスカッド、序盤に成功した可変システムに固執しすぎたアルテタ監督の判断など、枚挙にいとまがない。
だが最大の問題点は、自ら首を絞める“自滅”のケースが多すぎることではないか。

アストン・ヴィラにはホームで戦った第8節にも敗れているが、このときの先制点もウィリアンの不用意なバックパスを奪われたところからの流れだった。いずれも集中を欠いたプレイでの自滅である。

また、看過できないのはレッドカードの多さだ。第9節リーズ戦ではニコラ・ぺぺが、第12節バーンリー戦ではグラニト・ジャカが冷静さを失い、愚かな暴力行為で一発レッド。先日のウォルバーハンプトン戦も、前半終了間際に受けたダビド・ルイスへのレッドカードが試合の趨勢をすっかり変えてしまった。今季、アーセナルが受けたレッドカードは5枚とプレミア最多である。不運な面もあるが、少なくともぺぺやジャカの行為が原因で格下から得られたはずの勝点を逃したと言っても差し支えない。

監督のマネジメントが自滅を招いたケースもある。第11節のトッテナムとのダービーだ。この試合、アルテタは怪我明けのトーマス・パルティを先発に起用したが、無理な起用が祟ったのかふたたびトーマスは試合中に負傷。しかもトッテナムがカウンターを発動した最悪のタイミングでことは起こり、トーマスが動けないことで空いてしまった中央のスペースを使われて決定的な追加点を食らっている。無理にトーマスをピッチに押し返してプレイさせようとしたアルテタには批判が集中した。

いまのアーセナルは明らかに過渡期であり、ミスがなくとも単純に力負けしていただろう試合は多い。だが、少なくとも退場者を出した第9節リーズ戦(△1-1)、第12節バーンリー戦(●0-1)、第13節サウサンプトン戦(△1-1)、第22節ウルブズ戦(●1-2)は勝っておかなければならないゲームだった。ここで失った勝点は「10」。もしすべて勝っていたなら現在の勝点は「41」となり、暫定ではあるがリヴァプールを抑えて4位である。たらればは禁物だが、内容的にも十分あり得たはずの勝点だ。さらに今節のヴィラ戦もドローであれば「42」となり、3位レスターと並ぶことになっていた。

だが、現実は勝点「31」の10位。今季は混沌としたシーズンだけに、勝点1の持つ意味が非常に大きい。つまらぬ自滅によって失った勝点が、後半戦のアーセナルに重くのしかかる。

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