[MIXゾーン]コロナ禍での希望を感じさせた、最高の大阪ダービー

豊川(右)は絶好調の3戦連続ゴール(写真は浦和戦) photo/Getty Images

J再開後最多の動員数

 通算40回目となる大阪ダービーは、徐々にだがスポーツイベントがかつての日常を取り戻しつつある、そんな印象を深めた試合だった。観客は7月にJリーグが再開してから最多となる1万9553人。ソーシャルディスタンスを確保しつつ、声を出しての応援は禁止だが、それでもサポーターの熱気が伝わってくた。特に今年最初のパナソニックスタジアムでのダービーは、まだ無観客でおこなわれたとこともあり、待ちに待ったという気持ちが非常に強かったのだろう。そんなサポーターたちの想いに応えるかのように、両チームは「これぞダービー」と呼べる素晴らしい戦いを見せてくれた。

 90分を通じて見るとホームのC大阪に分があった。中9日と休養充分だけに、選手のコンディションに不安はない。一方のG大阪は中2日とこちらは極端に休みが少ない。コロナの影響で不規則なスケジュールが続いているが、ここまで極端なケースも珍しい。前半はその部分が試合展開にも出た。

「前半、同点だったが良いプレイができていた。思っているようにボールを動かせて、チャンスも作れていた」(ロティーナ監督)
 スコアこそ1‐1で折り返したが、C大阪がボールを保持し、チャンスの数もアウェイチームを上回った。ただ先制ゴールを決めたG大阪のMF井手口が「試合が始まる前のミーティングから、サッカーがどうこうより、人と人との戦いで負けないこと、気持ちを前面に出していこうという話をしていた」と話した通り、ダービーという特別な舞台、まして今年の最初の試合では敗れているG大阪にはコンディション云々を感じさせない気持ちを感じた。局面の激しさはいうに及ばず、走力の点でも厳しい時間帯の70分以降も持ち堪えて見せた。

 やはりサッカーは人間が行うもので、決してテレビゲームのようなパラメーターで測るものではない。特に後半に入ってからはG大阪の攻勢が高まった。ハーフタイムコメントでは宮本監督からG大阪の選手に
・簡単な試合にはならない。ここからが勝負
・守備は高い位置で連動した守備ができている。これをやり続けること
・3人目が絡んだ攻撃でゴールを目指すこと
の3点が伝えられたが、一番重要なのは気持ちの部分だったのではないだろうか。

 後半はG大阪のプレッシングがC大阪を押し込む。

「後半の立ち上がりからG大阪の選手がプレッシャーにきて、うまくいかない時間帯も続いたがしっかりしのげた」(左SB丸橋)

 C大阪は相手のプレッシャーを感じながら、それをしっかり得意の守備で分断し、そして再度流れを手繰り寄せようとした。好敵手との戦いにC大阪はそれをガッチリ受け止め、そして跳ね返すだけの力を持ち合わせていた。ただ残念ながら双方に最後のひと刺しは生まれなかった。それでも「結果は1‐1で、勿論勝ちたい気持ちは強かったが、充実したダービーだった」(MF清武)。

 大阪の二枚看板が互いに力の限りを尽くして戦い、充実した内容でサポーターも納得の試合だった。まさにこれぞダービー。これでホームのC大阪は4位、アウェイのG大阪は2位とリーグ上位でACL枠を争いライバルという構図は継続されることになった。素晴らしい戦いを見せてくれた両チームの選手に拍手を送るとともに、最高の雰囲気を作ったサポーターにも感謝の思いを伝えたい。


文/吉村 憲文

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