[MIXゾーン]G大阪が高尾瑠に見た希望 いつもの3バックとは違う強みが出た

長いトンネルから抜け出せないG大阪。高尾は宮本監督の打開策となることができるか photo/Getty Images

23歳が見せた積極性

 長い長いトンネル。ともにこの先の光を求め必死にもがいている。そんな試合だった。ホームのG大阪は、一時は優勝争いに加わるかに見えた状態から、まさかの急ブレーキ。首位川崎の姿は遥か彼方に遠ざかった。アウェイの湘南は勝ち星から見放され、前節を終えて最下位という状態。ただそれでも双方にとって与し易しの相手ではない。湘南はG大阪のポテンシャルを良く知っているし、湘南の走力はG大阪にとって脅威となる。実際のゲームでも両者の能力の一端が垣間見える展開になった。

 この試合でひとつ際立っていたのは、G大阪の3バックの変化。いつも三浦、昌子、キム・ヨングォンという、いわゆるストッパータイプの選手を中心に編成されることが多いが、この試合では右CBに配置された高尾の動きが目を引いた。

「最終的に相手陣内の右サイド深いところでの攻撃的なものというものというのは沢山いいところを見せてくれたと思う。そこでのプレイの質というところを本人にも伝えてあるので、そういったものが今日は出たと思う」(宮本監督)
 CBでありながら、前線に顔を出してチャンスを作り出すには、守備はできて当然、更に機動力とパス能力を同時に要求される。非常に難易度の高いミッションであるが、高尾は果敢に挑戦した。27分には中央をドリブルで持ち上がり、最後はフィニッシュにまで持ち込んだ。シュートはGKにキャッチされたが、その起用に見合うだけのプレイを見せた。

「やはり(三浦)弦太くんと(キム・)ヨングォンと(昌子)源くんが出ている時は前にボールを運べていなくて、うまく前にボールがつながっていなかった。僕がボールを運ぼうと思っていた。運んだら前線の選手がうまくプレイしてくれるので、そこは意識していた」

 チームの課題をいっちゃったよ感もあるが、実際にビルドアップ、チャンスメイクの点でG大阪がもがいているのは事実。高尾の起用がその最適解かはまだ分からないものの、宮本監督の選手起用は今後に期待が持てるものだった。ただし結果を伴ってそれは、明るいビジョンとなる。
 皮肉なのはこの試合で唯一のゴール場面となる74分の湘南の攻撃で、最後にマンマークを剥がされてしまったのが高尾だったこと。湘南が低いクロスをゴール前に入れたが、これをDF誰ひとり触ることができず、DF大野に決められてしまった。

「(三浦)弦太くんが(クリアで)触ると思っていたので、あそこで準備できなかったことで失点してしまったと思う」

 高尾がDFの選手である以上攻撃面の評価より、守備でのミスを悔いるのは当然だが、これを経験としていかに繋げられるかが一番重要になる。
 湘南としてはG大阪優勢のゲームを粘り強く戦い抜いて、9試合ぶりの白星を手に入れた。過去2試合、リードしながら追いつかれるという試合を繰り返してのドローだっただけに、期するものはあっただろう。最後はG大阪の攻勢にさらされながらも、気迫の守備で最後までゴールを守り抜いた。ここ3試合だけを見れば勝ち点は5と、明らかに復調傾向にある。チームコンセプトが明確だけに、やることはひとつ。そこにブレがないのがこのチーム(というよりクラブ全体)の良さでもある。

「だいぶ気候も涼しくなり、連戦ではあるが前半からしっかりとボールにプレッシャー、相手のカウンターの時に戻るところを選手がしっかりとやってくれた良いゲームだったと思う」(浮嶋監督)

 まさに試合を物語るコメントだろう。チャンス自体はG大阪に多かったが、それを阻止するための湘南のハードワークは見事。なんといっても一時期の異常な暑さが去ったことで、少しずつにせよ、選手の体力が90分キープできるようになったのが大きい。勿論連戦続きだけに、このスタイルのサッカーは選手に負担が大きいのも事実だが、それができなければこのチームに未来はない。秋口に差し掛かり、チームはどんなグラフを描くのだろう? 右肩上がりか? それともまた下方に向かうのか? 活きの良さが湘南の良さ。何にもひるむことなく戦う湘南の姿が見られることを願いたい。それがJリーグをもっとおもしろくしてくれることだと確信を持っていえる。

取材・文/吉村 憲文

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