[欧州サムライ伝説 NEXT]攻守の要として遠藤航の観察力・統率力は磨かれる

初先発で勝利に貢献し、不動の地位を確立

初先発で勝利に貢献し、不動の地位を確立

攻守の要となってシュツットガルトを昇格に導いたことで、確実に評価を高めている photo/Getty Images

 2018年7月に浦和からシント・トロイデンに完全移籍し、徐々に試合出場を増やしていき、最終的に17試合2得点という記録を残した。1年後の2019年8月、今度はシュツットガルトへローンで加入した。しかし、タイミングは決してよくなかった。同チームは直前に行われたプレーオフで敗れ、1部残留を逃していた。ブンデスリーガ2部で新天地での戦いを迎えることになったのである。

 しかも、ティム・ヴァルター新監督のもと、選手も半数以上が入れ替わっていた。スタイルが確立されたチームに加わったのではなく、新たな監督、新たな選手たちと、新たなチームを作っていくというカタチだった。

 戦術理解度が高く、観察力にも優れる。戦況に応じて的確なポジションを取り、攻守両面で正確なプレイができる。球際の強さ、ボディコンタクトの良さもあり、身体は小さいが、空中戦も含めた1対1の競り合いに強い。こうした特長を持つ遠藤は、これまで所属したチームで守備的MF、右サイドバック、センターバックなどを務めてきた。複数のポジションをこなす能力もまた、大きな武器となってきた。

 ただ、それゆえに監督がレギュラーポジションが定めきらないときもある。シュツットガルトでもシーズン当初はベンチを温めることが多く、初出場は第12節ディナモ・ドレスデン戦まで待たなければならなかった。しかも、3-1で勝っている状況で、終了間際の89分に守備固めで中盤に起用されたものだった。

 それでも、真の実力を持つ選手はどこのチームでもどんな監督にも評価されるものだ。第14節カールスルーエ戦では[4-3-3]のアンカーを任され、初先発した。すると、豊富な運動量で攻守のつなぎ役を務め、3-0の勝利に貢献。その後、ウィンターブレイク中にペッレグリーノ・マタラッツォ監督への交代があったが、第34節ダルムシュタット戦まですべての試合に先発フル出場を果たしている(累積警告で出場停止だった第32節サンドハウゼン戦を除く)。

 第20節ザンクト・パウリ戦がそうだったようにマタラッツォ監督は[3-4-3]で戦うことがあり、そのときはダブルボランチの一角を務め、オレル・マンガラとコンビを組んだ。また、元ドイツ代表のホルガー・バドゥシュトゥバーがハムストリングを痛めた影響で最終ラインのコマが足りないときは、センターバックを務めることもあった。一例としては、第21節エルツゲビルゲ・アウエ戦では3バックの左センターバックでプレイし、この試合にも3-0で勝利している。

「 (遠藤は)このチームにとって、ベストプレイヤーのひとり」

 これは、元ドイツ代表で現役最後のシーズンをシュツットガルトでプレイしたマリオ・ゴメスの言葉である。ヴァルター監督が指揮した攻撃的に戦っていたシーズン序盤は、攻守のバランスを取るのがうまい遠藤にはなかなか出番がなかった。しかし、あまりもリスクをかけ過ぎることで、第9節から第11節に3連敗している。しかも、第11節ハンブルガーSV戦は2-6の大敗だった。ドイツ「kicker」誌によると、そんなときに「彼を使ってみてくれ」とヴァルター監督に提言したのがマリオ・ゴメスだった。そして、前がかりになりがちなチームのなかで遠藤は持ち前のバランス感覚を発揮し、第12節からシーズン終了まで出場を続けることになったのである。

大一番で移籍後初ゴール 遠藤がチームの危機を救った

大一番で移籍後初ゴール 遠藤がチームの危機を救った

28節ハンブルガーSVとの“直接対決”でFKに頭で合わせ、初得点をマークした photo/Getty Images

 ウィンターブレイク明けの後半戦は、自動昇格(2位以内)を目指した厳しい戦いが続いた。第26節ヴィースバーデン、第27節ホルシュタイン・キールに連敗したときは、大事な終盤戦を前に3位となり、一時期ピンチを迎えていた。しかし、そうした精神的な強さを求められるシチュエーションこそ、常に冷静で安定感があり、統率力もある遠藤の存在がより輝く。

 第28節ハンブルガーSV戦は2位との直接対決で、シュツットガルトにとって大一番だった。ところが、前半に2失点して絶体絶命となる。ここで奮起したのが遠藤で、47分にFKから移籍後初ゴールを奪い、チームに勢いを与えた。屈強な男たちに囲まれながら頭で決めたもので、高さでも十分に渡り合えることを証明したゴールだった。そして、この試合に3-2と逆転勝利を収め、チームは2位に浮上した。

 続く第29戦ディナモ・ドレスデン戦(○2-0)でも中盤で豊富な運動量を誇り、90分間に渡って攻守のつなぎ役を果たした。粘り強い守備、ボールを奪ってからの正確なパスはチームに欠かせない武器となっていて、この日は「kicker」誌のマン・オブ・ザ・マッチに 選出された。さらには、同節のベストイレブンにも選ばれている。

 この試合に先立って、コロナウィルスによる中断期間には来シーズンの契約についても発表があり、シント・トロイデンからシュツットガルトへ完全移籍することに。元アーセナルの敏腕スカウトで、現在はシュツットガルトでスポーツディレクターを務めるスヴェン・ミスリンタートは、「どのポジションでより輝くのか考える必要もない。(遠藤は)選手としても人としても優れていて、とても貴重な存在」と語っている。

昇格チームの要としてさらなる成長を期待できる来季

昇格チームの要としてさらなる成長を期待できる来季

17節ダルムシュタット戦。囲まれてもボールを失わないキープ力もみせた photo/Getty Images

 最終節を終えてシュツットガルトは2位となり、自動昇格を決めた。湘南→浦和→シント・トロイデン→シュツットガルトと実力でステップアップし、いよいよ来シーズンはブンデスリーガ1部が戦いの舞台となる。バイエルン、ドルトムントといったタレント揃いのビッグクラブと対戦し、中盤をコントロールしてチームを勝利に導く。そんな姿がみられるかもしれない。

 同時に、長い間キャプテンを務めてきた長谷部誠の後任として、日本代表をまとめる役割も期待される。各年代の代表でキャプテンを務め、リオ五輪でもキャプテンマークを巻いてプレイした。観察力、人望があり、統率力もある。誰もが納得したうえで人の上に立てる選手は、なかなかいない。数年後の日本代表、そしてシュツットガルトも、遠藤がまとめているかもしれない。

文/飯塚 健司

※電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)247号、7月15日配信の記事より転載

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