話は変わりますが、2月下旬より開催が見送られていたJリーグの再開日が決まりましたね。一時期は全選手への実施が難しいという話も出ていたPCR検査を2週間に1回、Jリーグ全56クラブの選手やスタッフ、そしてレフェリーを対象に行える環境も整いました。村井満チェアマンをはじめとする多くの関係者のご尽力によってJリーグ再開の目処が立ったことを、私自身嬉しく思っています。
ぜひこの場で強調しておきたいのが、公式戦を再開するにあたって各クラブの関係者が「いち早く決めてほしい」と思っていることであったり、サポーターが「知りたい」と思っていることを素早く決めて明確な指針を発表できる、Jリーグの運営力の高さです。下部リーグへの降格制度を今シーズンに限り廃止することを早い段階で決めて発信したことも良かったですし、J1からJ3の各カテゴリーで「全日程の75%が消化され、かつ全クラブがホーム・アウェイを問わず50%の試合を開催した場合のみ順位決定をする」という大会成立要件を早期に示し、競技の公平性を担保したことについても素晴らしかったと私自身感じています。全国のJクラブを東西の2ブロックに分けて対戦カードを組み、感染拡大のリスクを減らそうというプランが持ち上がるなど、安全面に関しても申し分ない取り組みができていると思います。このJリーグの運営力であったり、サポーターに対する発信力というものは世界各国のリーグの中で高い部類に入るのではないでしょうか。J2とJ3は6月27日、そしてJ1は7月4日に再開予定ですが、全クラブが無事に再開初戦を迎えられることを願っています。
7月10日までは無観客で開催される予定ということで、日頃Jリーグの解説を担当している私としてはいかに視聴者の皆さんにその試合の熱気を伝えようかと今も考えているのですが、やはり無観客だからこそ聞こえてくる“音や声”を皆さんには楽しんで欲しいですね。選手同士が激しく体をぶつけ合った際に響く「ゴン!」という重い音、ある選手が味方を鼓舞するために発した力強い言葉、そして試合の流れを変えようと奮闘する監督の戦術的指示。視聴者に聞かれると恥ずかしい言葉もピッチ上で飛び交うかもしれませんが(笑)。プレイヤーや指導者としてJリーグに携わってきた私だからこそ深彫りできる音や選手たちの声というものを大事にして、彼らがどんな思いでその試合に臨んでいるかを伝えていきたいと思っています。現役Jリーガーの皆さんには過密日程の疲労からくる怪我に気をつけつつ、サッカーをできる喜びというものを噛みしめながら今シーズンのJリーグに臨んでほしいですね。彼らの全力プレイが、多くの人の心を打つと信じています。
ではでは、また次回お会いしましょう!
水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。
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