この冬にPSVからトッテナムへ移籍したステーフェン・ベルフワイン(22歳/オランダ代表)も、私が注目している選手のひとりです。絶対的エースのハリー・ケインが負傷離脱、エリック・ラメラとルーカス・モウラも好不調の波ありという問題を抱えているトッテナムにとって、攻撃的なポジションであればサイドや中央を問わずプレイできるべルフワインの加入は浮上のきっかけとなり得るでしょう。
今月2日のマンチェスター・シティ戦(プレミアリーグ第25節)を見ていて感じたのですが、彼は逆サイドや中央へ自由にポジションチェンジをするので、相手DFにとっては捕まえづらい選手ですね。ひと度サイドでボールを持てば縦に速いドリブルで敵陣の深い位置まで入れますし、鋭いターンでカットインもできる。攻撃面で“できる事が多い選手”という印象を持ちました。ただ、やはり左サイドからの仕掛けが彼が最も得意としているプレイだと思いますので、ソン・フンミンと共にトッテナムのサイド攻撃を牽引してほしいですね。シティ戦で強烈なミドルシュートを突き刺すという、鮮烈なプレミアデビューを飾った彼の今後のプレイぶりに注目です。
最後にご紹介するのは、今シーズン開幕前にPSVからマンチェスター・シティに加わり、この冬にシティからRBライプツィヒへローン移籍したDFアンヘリーニョ(23歳)です。開幕前はシティ期待の新サイドバックとして注目されていながら、ジョゼップ・グアルディオラ監督からの信頼を勝ち取るには至らなかった彼。シティでレギュラーを張るには、独力での局面打開力が足りなかったのではないかと、私自身感じています。
味方にはサイドのスペースや相手最終ラインの背後へパスを出してもらい、自分はそこへトップスピードで走る。そしてそのままワンタッチでクロスを上げるというのが彼の得意なプレイなのですが、ポゼッションサッカーを志向しているシティは攻撃がスローダウンしやすく、自陣に引きこもる相手をいかに崩すかが攻撃面での課題となります。
必然的にサイドにもあまりスペースがなく、シティのサイドバックには対峙DFを独力で剥がすスキルが求められるのですが、一度スローダウンさせられたところから自らのドリブルで密集地帯を掻い潜れるタイプではない彼にとっては荷が重かったのかもしれませんね。
ただ、先ほどご説明した通り彼はボールホルダーを追い越すランニングであったり、サイドのスペースや最終ラインの背後への侵入は得意なので、奪ったボールを“縦に速く”運ぶのが基本スタイルのライプツィヒのサッカーには合うと思います。左サイドバックの選手層が薄かったライプツィヒにとっても、アンヘリーニョは打ってつけの存在ではないでしょうか。捲土重来のための移籍を決断した彼が、直近のブンデスリーガで失速気味のライプツィヒの命運を握るかもしれません。
冬の移籍期間が終わり、来週にはUEFAチャンピオンズリーグとヨーロッパリーグの決勝ラウンドがスタートします。激闘必至のシーズン後半戦を、ぜひ皆さんも楽しんで下さいね。
ではでは、また次回お会いしましょう!
水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている。
●電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)最新号を無料で公開中!電子マガジンtheWORLD最新号は、セリエA! 昨季までとは打って変わって激しい優勝争いが繰り広げられるイタリア・セリエAは新フェーズに突入。ユヴェントスを止めるのはどこなのか。いま、再びイタリアが面白い!!
http://www.magazinegate.com/theworld/