2020年代は“スローイン”がサッカーを変える? 「誰も議題には……」

これまでサッカー界ではスローインに焦点が当たることは非常に少なかった photo/Getty Images

リヴァプールを変えた男が熱弁

リヴァプールでちょっと変わった役割を任せられている人物が、その仕事について熱く語っている。その人物とは同クラブで“スローインコーチ”を務めているトーマス・グレネマルク氏だ。

2018-19シーズンからリヴァプールでスローインの指導にあたっているグレネマルク氏。就任が発表された際には“スローインコーチ”という役職に驚いた人も多いはずだ。しかし、この男こそが現在のリヴァプールの快進撃を支えていると言っても過言ではない。

それを示すデータとして、「スローイン時におけるボールポゼッション率」というものがある。これがグレネマルク氏の招聘前と後では雲泥の差なのだ。招聘前の2017-18シーズンにリヴァプールが記録していた数値は45.5%。これは当時プレミアリーグでワースト3の数字だ。一方で招聘後はこれがなんと68.4%にまで上昇。彼らはこのスタッツにおいて、たった1年で欧州5大リーグのトップにまで上り詰めてしまったのだ。今季はユルゲン・クロップ監督の下でポゼッションに比重をおきつつあるリヴァプール。この戦術が採用できているのは、グレネマルク氏の功績も大きいだろう。

そんなリヴァプールを変えた男が自身の仕事について語っている。英『Sky Sports』のインタビューに登場した同氏は、スローインがサッカーにおいていかに重要なプレイであるかを熱弁。これはもっと注目されるべきプレイだと次のように話した。

「これは文化だよ。フットボールは140年前に始まった。私は44歳になるけれど、記憶している限りでは誰もスローインを議題にあげることはなかったね。テレビで試合を見ていても、スローインからボールを失うチームがある。よく起こっていることが、コメンテーターはこれについて何も言及しないんだ。でも、数秒後に選手が足でパスミスを犯すと『ああ、これは悪いパスだったね』って彼らは言うのさ。それを2回もやれば『いい試合ではなかった』と言う。3回もすれば『チームにはいない』なんて言われることもあるね。それがサッカーの文化なのさ。私からしてみれば、それは全くおかしな話さ。少し主観的かもしれないけど、スローインで私が指導しているチームほどのクオリティを備えているクラブは、たとえプレミアであってもいないね。たとえ数十億ポンドを投資しているクラブであってもさ」

試合中に頻発するプレイを、なぜコメンテーターは取り上げないのか。グレネマルク氏は以前からその事が気になっていたようだ。少し手を加えればチームのポゼッションが劇的に変わることを証明しただけに、今後はそのようなこともなくなるか。今後はスローインがサッカー界における一大ムーブメントになる日も近いかもしれない。

その努力の甲斐あって、スローインの重要度を世に知らしめることに成功したグレネマルク氏。しかし、仕事内容の知名度はまだ高いとは言えないようだ。同氏は続けて人々が“スローインコーチ”と聞いた時、連想する仕事はほぼロングスローの指導だということを嘆いている。

「多くの人は私の仕事がロングスローを指導することだと思っている。もちろん指導はできるよ。それによってミッテュランは4シーズンで35ゴールを決めたんだ。適切な能力を持ったチームならそういったことも可能さ。ただ、オファーをしてきたクラブの多くがロングスローについてしか興味がなかったのにはイライラしたね。その点、クロップからの電話は私にとってブレイクスルーとなったよ。今ではリヴァプールとアヤックスを中心に世界中で8つのクラブを指導しているけど、この2クラブのスタイルはロングスロー向きではない。だから、私は2007年頃から取り組み始めた素早く、クレバーなスローインにもフォーカスしているのさ。すべてはポゼッションのためにね」

スローインを駆使した戦術はロングスローだけではない。グレネマルク氏はこの先入観にうんざりしている様子。しかし、そんな中できちんと同氏の能力を理解していたのがクロップ監督だったということか。やはりこの指揮官、人を見る目はずば抜けている。

スローインというプレイに情熱を傾け、少ない時間で大きな結果を出したグレネマルク氏。はたして、これから同氏の考え方は世界中でスタンダードなものとなっていくのだろうか。リヴァプールを変えた“スローインコーチ”。2020年代、欧州で再び戦術のブレイクスルーが起きるかもしれない。

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