[ロシアW杯#47]ヤヌザイ美弾でG組首位通過! 日本の対戦相手“タレント軍団”ベルギー

決勝Tを見据え大幅ターンオーバー決行

決勝Tを見据え大幅ターンオーバー決行

この日先発したラッシュフォードは、時おりスピードを活かしてチャンスを作る photo/Getty Images

イングランド、ベルギーともに決勝トーナメント進出を決めている。無理をする必要はない。累積警告、疲労度、負傷などを踏まえ、大幅なメンバーチェンジを図ったのは当然だ。イングランドはGKピックフォードとCBストーンズを残し、ベルギーもまたGKクルトワとCBボヤタが3戦連続の先発で、残り9人はテスト、および大会の雰囲気に慣れることが主目的だった。しかも、所属チームで気の合う仲間も少なくない。ワールドカップといっても、どことなくフレンドリーマッチのような趣だ。

さて、イングランドは右CBにフィル・ジョーンズ、左にはケイヒルを起用した。丁寧なビルドアップを志向するサウスゲイト体制下のチームには不釣り合いだ。とくにジョーンズはプレス耐性に乏しく、GKへのバックパスに逃げるケースが非常に多い。前半はストーンズが、後半はマグワイアが積極的なビルドアップを見せたものの、残念ながらジョーンズはまったく関与していない。決勝トーナメント以降の出場機会は限られてくるだろう。

たいした見せ場もないまま前半が終了したとき、会場からブーイングが鳴り響いた。点の取り合い、ゴール前の激しい攻防を期待するファンの気持ちも理解できるが、両チームの立場を踏まえるとボールサイドにガツンといくこともはばかられる。なおかつベルギーは19分にティーレマンスが、33分にデンドンケルがイエローカードを提示され、3戦を通じたフェアプレイポイントで3点のビハインドとなった。試合の興味はほぼ失せた。あとはお互いにケガしないように、ケガさせないように……。いわゆる〈忖度〉である。

動かない試合を動かしたヤヌザイの鮮烈ゴール

動かない試合を動かしたヤヌザイの鮮烈ゴール

51分に均衡を破ったヤヌザイ。ゴール後に喜びをあらわにする photo/Getty Images

ころが、フットボールは何が起きるか分からないものだ。51分、右サ
イドをスルスルと突破したヤヌザイが、ペナルティーボックス内からシュート。ベルギーに先制点をもたらす。マンチェスターU所属時に、「いまいち空気が読めていない」とルーニーに首を傾げさせた男が、動くはずがないゲームを動かしたのである。

1点をリードされたイングランドは当然……いや、流れに身を任せるだけだった。効果的な縦パスが入らない。攻撃のリズムは単調だ。スペースを埋めるベルギーに対し、バーディとラッシュフォードでは攻略法がない。狭いエリアでも自在に動けるスターリング、リンガード、そして大黒柱のケインを投入すべきだが、サウスゲイト監督はウェルベックに今大会初出場のチャンスを与えるに留まった。どうやら勝負は度外視。0-1で敗れたイングランドは、決勝トーナメント1回戦でコロンビアと対
戦することになった。

こうして、日本の対戦相手はベルギーに決まった。要所要所に実力者を揃える強豪とはいえ、E・アザールが中央に寄りすぎるため、左サイドの守りが手薄になりがちだ。原口と酒井宏で左ワイドのカラスコを挟み撃ちにすれば、攻撃のルートは見つけられるに違いない。セットプレイも比較的シンプルだ。付け入る隙はある。

[スコア]
イングランド代表 0-1 ベルギー代表

[得点者]
ベルギー代表:ヤヌザイ(51)

文/粕谷 秀樹
サッカージャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

theWORLD213号 2018年6月29日配信の記事より転載

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