[ロシアW杯#37]今大会初のスコアレス決着 フランスにとっては調整試合?

決勝トーナメントを見据え6名を入れ替えたフランス

3戦連続先発のグリーズマン。トップ下でプレイするも決定的なチャンス創出には至らなかった photo/Getty Images

ラウンド16進出を決めているフランスにとっては調整試合で、2戦目からGKも含めて先発6名を入れ替えていた。この時点で登録23名中、出場していないのは4名だけだったが、そのうちメンディが50分に投入された。つまり、グループステージ3試合で20名がピッチに立ち、首位通過を果たした。優勝を目指すフランスにとって理想的な勝ち上がりで、これからいよいよ本番を迎えるという雰囲気だ。

一方、デンマークは2戦を終えて勝点4。こちらも引き分ければラウンド16進出が決まる状況で、ムリをする必要がなかった。気にしなければならないのは勝点1のオーストラリアだったが、前半の早い段階でペルーに先制されていた。すなわち、キックオフからしばらくしてますますムリをする必要がなくなっていた。

こうした条件が揃えば、必然として試合は動きがなく、落ち着いたものとなる。前半はまだゴール前の攻防が多く、デンマークはブライスワイトが右サイドを突破し、フランスはグリーズマンが高い位置で存在感を示していた。

29分にはデンマークに決定機があった。左サイドに流れたコルネリウスがタテパスを受け、最終ラインの裏に抜け出してゴール前にクロスを折り返した。走り込んだエリクセンが先にボールに触れればというシーンだったが、飛び出したGK、戻ってきたDFに挟まれてシュートには至らなかった。

44分にはフランスにチャンスがあり、左サイドのレマルからのクロスを最終ラインの裏に抜け出して受けたグリーズマンがゴール前に折り返し、ジルーがワンタッチでフィニッシュした。しかし、グリーズマンの抜け出しはオフサイド。同点のまま前半を終えた。

無理せず、手堅く…… ともに決勝Tへの切符を手に

何はともあれ決勝T進出。サポーターに応えるシュマイケル photo/Getty Images

後半は時間が深くなればなるほど、お互いに引分けでOKという忖度が働いた展開となった。他会場ではオーストラリアが2点のビハインドとなり、デンマークのラウンド16進出がほぼ安泰な状態に。両者ともに“なにか”をする必要はなく、徐々に試合が動く気配はなくなっていった。

フランスは途中出場したフェキル、ムバッペがわずかにゴールを目指す姿勢をみせたが、もともと守備が固いデンマークにとって危険なものではなく、慌てるほどのものではなかった。だからといって攻めるわけでもなく、カウンターのチャンスがあってもバックパスを選択し、観衆から大ブーイングを浴びた。ただ、そこに血走った感じはなく、誰もが両チームが置かれた状況を理解したうえで「こういう試合には付き物だからしとこうぜ」という雰囲気だった。実際、試合が終わったあとのスタンドには拍手があり、笑顔が溢れていた。

「(デンマークは)守備の組織がしっかりしているので、破るのが難しかった」

試合後にこうコメントしたのは、選ぶのが大変だっただろうマン・オブ・ザ・マッチに輝いたカンテである。盛り上がりにかけたが、試合内容ばかりを楽しむのがW杯ではない──。ラウンド16に進出した両者の戦いは、いろいろな楽しみ方を提示するものだった。

[スコア]
デンマーク代表 0-0 フランス代表

文/飯塚 健司
サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より6大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。サンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載中。美術検定3級。Twitterアカウント : scifo10

theWORLD211号 2018年6月27日配信の記事より転載

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