[ロシアW杯#14]これぞケイン! 土壇場でイングランドを救った“千両役者”

開始早々の勢いを削がれてしまったイングランド

開始早々の勢いを削がれてしまったイングランド

アディショナルタイムに決勝点。エースの責務を果たしたケイン photo/Getty Images

後半の追加タイムにケインのヘディングが決まっていなかったら、イングランドは決定的なピンチを一度も迎えることなく、GKピックフォードのプレー機会が極端に少なかったにもかかわらず、ポイントをロスしていた。

立ち上がりは悪くなかった。いや、心地よいリズムを保っていた。二列目がチュニジアDFラインの裏に飛び出し、両ワイドは積極的に攻めあがる。また、3バックも高い位置をとり、ビルドアップに関与。ケインの先制ゴール(11分)を誘発した左CKも、マグワイアの縦パスが起点となっていた。

しかし、チュニジアGKハッセンの負傷に伴う治療、交代などのインターバルが試合の流れを変えた。攻勢に水を注されたイングランドは、徐々にペースダウンしていく。足もとでボールを欲しがりはじめ、チュニジアDFラインの裏を取るケースが激減した。両ワイドと3バックは積極性が失われる。

そして迎えた35分、ウォーカーが不用意な対応でPKを与えた。からだを寄せるだけでF・ベン・ユセフのボディバランスを崩せたにもかかわらず、左エルボーを使うとは!?サシのキックがイングランドのゴールに吸い込まれていったとき、ウォーカーはいたたまれなかったに違いない。

後半になってもイングランドのペースは上向かなかった。フォーメーションを[4-5-1]から[3-5-2]に変え、噛み合わせてきたチュニジアの対応に後れをとり、ボールを持たされているような展開が続く。センターバック、両ワイドのスライドが遅れ、ヘンダーソンの両脇が空きはじめる。苛立つイングランド……。

サウスゲイト監督の采配が試合の潮目を変える

サウスゲイト監督の采配が試合の潮目を変える

ーナーキックから頭で押し込み、土壇場の決勝点を決めるケイン photo/Getty Images

嫌な流れを変えるには、選手交代が有効だ。68分、サウスゲイト監督は強引なドリブル突破でボールロストを繰り返したスターリングに代わり、スピードスターのラッシュフォードを投入。80分には右足に違和感を覚えたアリを下げ、鋭い切り崩しに定評があるロフタス・チークをピッチに送り込んだ。この采配が奏功する。ラッシュフォードとロフタス・チークがともにチュニジアDFラインの裏をとりにいった結果、イングランドの攻撃に試合開始早々の好リズムが少しだけ戻ってきた。後半の追加タイムに得た右CKも、ロフタス・チークの粘りによるものだった。

さぁ、仕上げはケインである。マグワイアが空中戦で競り勝ったボールを、ヘディングでニアを抜いた。さすがに千両役者というべきか。試合を通じてボールコントロールがままならなかったものの、終わってみれば2ゴール。イングランドに貴重な3ポイントをもたらした。しかし、ゲームメーカー不在のため、ビルドアップは相変わらず手詰まりになる。サウスゲイト監督は丁寧なつなぎにこだわっているが、パス能力の高いウォーカー、ストーンズによるミドルパス、サイドチェンジから前線のスピードを活かすダイナミックなプランのほうが、今回のイングランドには適しているように思える。再三にわたって決定機を逸したイージーミスも含め、反省材料は少なくない。

[スコア]
チュニジア代表1-2イングランド代表

[得点者]
チュニジア代表:サシ(35)
イングランド代表:ケイン(11、90+1)

文/粕谷秀樹
サッカージャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。

theWORLD203号2018年6月19日配信の記事より転載
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