【特集/欧州が讃えたサムライたち#3】度肝を抜くゴール! 武藤嘉紀、危険なストライカーに成長中

度肝を抜くゴールで多くの観衆を魅了

度肝を抜くゴールで多くの観衆を魅了

シュツットガルト戦で豪快なミドルシュートを決め、喜びを爆発させる武藤 photo/Getty Images

背後から襲い掛かってきた相手DFの寄せをモノともせず、鋭いターンから迷うことなく右足を一閃。武藤嘉紀が放った無回転気味のシュートが、この日のオペル・アレーナ(マインツのホームスタジアム)を覆った雨雲を切り裂くような軌道を描き、シュツットガルトのゴールに突き刺さった。これでスコアは1-1と振り出しに戻る。

がっくりと肩を落とすのは、GKロン・ロベルト・ツィーラーだ。ペナルティエリア外から、しかも自身の正面に飛んできたブレ球に対処できなかったからだ。このブンデスリーガ第19節まで、致命的なミスが一、二度しかなかった実力者は試合後、武藤に決められたシーンをこう振り返った。

「ボールがちょっと傾いたんだ。でも止めなければいけなかったよ」

たしかにツィーラーほどのGKなら止めてしかるべきシュートだったかもしれないが、スコアラーを称賛しない理由はない。屈強な守備者に当たり負けしないフィジカル、一歩目でマーカーを振り切れる加速力と敏捷性、的確にボールの芯を捉えられるシュート技術、そして高いゴール意識。こうした特徴を持っている武藤だからこそ、決めることができた豪快弾だった。

今シーズンの武藤は観衆の度肝を抜くゴールを他にも決めている。第3節のレヴァークーゼン戦では華麗なジャンピングボレーで、ドイツ代表の名手ベルント・レノの牙城を崩した。第5節ホッフェンハイム戦で叩き込んだ一発も圧巻。眼前に立ちはだかる3人を抜き去ってから、左足のシュートでネットを揺らしたのだ。前述した多彩な持ち味だけでなく、ドリブル突破力も備えているのだから鬼に金棒だ。

第7節のヴォルフスブルク戦で技ありのヘディングゴールも披露した武藤だが、その後の出場6試合で無得点。腰痛で欠場した13〜16節を含めれば、ブンデスリーガで10試合もゴールから遠ざかった。ただ、マインツのチャンスメイク力が高くないうえ、前線で孤立しがちな傾向もあったからだろう。前線での激しい守備も評価するサンドロ・シュヴァルツ監督の、武藤への信頼は揺るがなかった。

その指揮官の期待に応えたのが、怪我からの復帰2戦目となった第18節ハノーファー戦だった。0-0で迎えた26分、ペナルティエリア内でボールを受けると冷静なコントロールを見せ、二度のシュートフェイントで敵を翻弄してからゴールをこじ開けたのだ。チームの勝利には繋がらなかったが、バイエルンのロベルト・レヴァンドフスキを連想させる一撃を決め、2018年の初戦で好印象を残してみせた。

相手DFの警戒が以前より格段にアップ

相手DFの警戒が以前より格段にアップ

ゴールのバリエーションが豊富。積極的にシュートを狙う武藤

続くシュツットガルト戦での2ゴールもあり、2月20日時点で昨シーズンを上回る6得点(マインツの最多得点者)を挙げている武藤。それもゴールのバリエーションが実に豊富で、過去2シーズンに数多く見られたワンタッチゴールは減っている。その要因として考えられる理由はいくつかある。

まずは環境面だ。就任1年目のシュヴァルツ監督率いる今シーズンのマインツは、頻繁に2トップを採用している。年明け以降はこの傾向が顕著で、守備時は[5-3-2]、攻撃時は[3-5-2]となるシステムが基本。武藤が務める2トップに求められる主な役割は、カウンターの仕上げ役となることや前線でボールを収めることで、1トップに課されるタスクと大きな違いはない。ただ、武藤にとっては2トップを組む相棒がいれば、相手DFの警戒が分散されるメリットがある。

実際、今シーズンの6ゴール中4ゴールは、2トップの一角として先発出場した試合で決めたもの。昨シーズンもジョン・コルドバ(現ケルン)とコンビを組む機会はあったが、より周囲を使う技術も意識もあるロビン・クアイソンというパートナーを得て、伸び伸びとプレイしている印象だ。そのクアイソンに加え、エミル・ベルググレーンや今冬に加入したアンソニー・ウジャーらFWのレギュラーを争うライバルが多い事実も、武藤の発奮材料としてプラスに働いているはずだ。

もちろん、環境面の変化だけが結果を残せている理由ではない。過去2シーズン悩まされた膝のトラブルによる離脱はなく、腰痛以外の理由で先発を外れたのは3試合のみ。純粋なパフォーマンスレベルの向上は数字にも表れており、例えば、ドイツで重要視されるツヴァイカンプフ(1対1)の勝率は、昨シーズンの35パーセントから42パーセントまで上がっている。

もう一つ興味深いデータが、被ファウルの数だ。ここまでのプレイタイムは1426分で、マインツ1年目のそれ(1487分)とほとんど変わらない。ただ、被ファウルの数は22回から37回と倍近く増えている。この統計から読み取れるのは、武藤自身のファウルの貰い方が上手くなっていることであり、武藤に対する相手の警戒が以前より格段に強まっていることだ。

マインツでの活躍が日本代表でのプレイに直結

マインツでの活躍が日本代表でのプレイに直結

日本代表での活躍にも期待がかかる武藤。ロシアW杯でキーマンになる可能性も photo/Getty Images

マインツは現在16位で、残留争いの渦中にある。チームの戦術はカウンターが主体で、1試合に生み出すチャンスの数は決して多くない。点取り屋にとっては、ゴールを量産するのが難しい環境だ。このチームで二桁得点をマークした暁には、日本代表でのレギュラー獲りも見えてくるだろう。もちろん、大きな自信を携えて、ロシアワールドカップに臨めるはずだ。

その大舞台での日本代表はアジア予選時に比べれば、攻勢より守勢に回る時間が長くなることが予想される。もし、武藤が受け身の戦い方が多いマインツで今後も結果を残すようなら、本大会で頼もしい存在になりそうだ。

文/遠藤 孝輔

theWORLD195号 2018年2月23日配信の記事より転載

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