【特集/欧州が讃えたサムライたち#4】自らの足で未来を切り拓け! 今、注目すべき3人のヤングスター

続々と欧州へ渡る若手サムライ・フットボーラー

続々と欧州へ渡る若手サムライ・フットボーラー

ここまで(2月20日時点)で9ゴールをマークする中島翔哉は、ポルトガルでも注目の存在だ photo/Getty Images

年が明け、ワールドカップイヤーである2018年を迎えるとほどなく、その一報は飛び込んできた。森岡亮太のアンデルレヒト移籍である。アンデルレヒトと言えば、ベルギーを代表する名門クラブ。しかも、与えられた背番号は10なのだから、ちょっとしたビッグニュースだった。

2016年1月にヴィッセル神戸からポーランドのシロンスク・ブロツワフへと渡った森岡は、今季ワースラント・ベフェレンへ移籍し、戦いの舞台をベルギーに移したばかり。それから半年ほどでアンデルレヒトに引き抜かれたのだから、ベフェレンでの活躍がどれほど際立っていたのかがうかがい知れる。

森岡の武器と言えば、非常に優れた個人技術。ドリブルに加え、一撃で決定機を生み出すパスセンスは非凡なものを持っている。ベフェレンの半年間で記録した7ゴールもさることながら、11を数えるアシストがそれを物語る。アンデルレヒト移籍後は少なからず適応に苦労しているようだが、日本人らしい繊細な技術を武器に、着実にヨーロッパでステップアップしている様子は称賛に値する。
森岡のように、イングランド、スペイン、ドイツといったメジャーなリーグではないながらも、確実に結果を残している日本人選手は他にもいる。まずは、昨夏にFC東京からポルトガルのポルティモネンセへ移籍した、中島翔哉だ。

移籍決定から開幕まであまり間がなかった中島だが、実力を発揮するまでにさほど時間はかからなかった。デビュー戦となった今季開幕戦後には、現地紙が「NAKAJIMA」の名を大きく取り上げたほどだ。10代のころから海外志向が強かった中島は、非常に勝気な性格で、自ら積極的にゴールへ向かって仕掛けていくプレイスタイルと合わせ、海外でプレイする適性を備えていたと言える。

U-17ワールドカップやリオデジャネイロオリンピックにも出場しており、そうした経験が海外への欲求を高まらせ、それが今、爆発しているのだろう。現地紙の報道によれば、早くもポルトガル屈指の強豪、ポルトが獲得を企てているという。真偽はともかく、そう言わせるだけの活躍を見せていることは確かだ。

堂安が語る貪欲にゴールを狙う姿勢

堂安が語る貪欲にゴールを狙う姿勢

フローニンヘンでの挑戦を選んだ堂安 photo/Getty Images

そしてもうひとり名前を挙げたいのが、昨夏にガンバ大阪からオランダのフローニンヘンへと移籍した、堂安律である。

率直に言って森岡や中島と比べれば、次なる移籍が実現する、あるいは噂されるほどのインパクトは残せていない。しかし、19歳の堂安は3人のなかで最も若く、ただひとりの10代。悪くないステップを踏んでいると言っていいだろう。

過去に数々のタレントを輩出してきたガンバ大阪ユース出身の堂安は、元々技術的には図抜けた才能を持っていた。だが、その一方でオフ・ザ・ボール、つまりボールを持ってないときのプレイが物足りず、パスを出したらそれで終わり。そんな気を抜いたようなプレイも少なくなかった。

ところが、昨年あたりから本人が「数字(ゴール数)にこだわっている」と話していたように、ボールを持たないときも貪欲にゴールを狙う姿勢が目立つようになった。その結果、昨年のU-20ワールドカップでは強豪イタリアを相手に2ゴールを決め、自らの存在を世界に向けてアピールしている。

大会当時、堂安は「最後の1本の質が(世界と自分とでは)違う。守備の要ストーンズこれをカバーする手チャンスで決め切る選手が、『やっぱ、アイツ決めるな』と思われる」と話していたが、まさに今、堂安は「アイツ、決めるな」と思われようと、日々奮闘している。技術的には申し分ないものを持っているだけに、若くして厳しい環境に身を置く選択をしたことが、彼にとって大きくプラスに作用しているに違いない。

急成長遂げる3人 代表への招集はあるか

急成長遂げる3人 代表への招集はあるか

2017年11月の欧州遠征では、森岡がハリルのお眼鏡にかない招集された photo/Getty Images

さて、三者三様ではあるものの、これだけの活躍を見ていると気になるのは、彼らの日本代表選出はあるのか、だ。

3人のなかで唯一、すでに選出経験があるのは森岡だが、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が志向するサッカー(力強くボールを奪い、縦に速く攻める)を考えると、適性が高いとは言い難い。また、中島にしても突破力は魅力だが、左サイドからのカットインを得意とするだけに、原口元気、乾貴士、宇佐美貴史など同タイプのライバルは多い。後発で激戦区を勝ち抜くのは簡単ではないだろう。

むしろ意外に可能性が高いのは、最年少の堂安かもしれない。現在の日本代表は右FWの人選が固まっておらず、しかも左利きは大きな武器。試してみてもおもしろい。日本代表に選出されるか否かにかかわらず、彼らが独自のルートでステップアップを続けていることは間違いない。極東の国にいるとメジャーなリーグばかりに目が向きがちだが、それ以外の国で腕を磨いている選手たちこそ、これからの日本サッカーを担う大きな可能性を秘めている。

文/浅田 真樹

theWORLD195号 2018年2月23日配信の記事より転載

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