【特集/欧州が讃えたサムライたち#5】豪州戦勝利の立役者3人が出した答え 移籍に踏み切った原口 、長友、井手口

出場機会を求めて原口、長友は新天地へ

出場機会を求めて原口、長友は新天地へ

カイザースラウテルン戦で1G1Aなど、早速結果で応えた photo/Getty Images

2018ロシアワールドカップまで約5か月となった今年1月、日本代表FW原口元気、MF井手口陽介、DF長友佑都の3人は移籍の決断を下した。

原口と長友はクラブでの出場機会を増やすことを目的とした移籍で、原口はヘルタ・ベルリンからブンデスリーガ2部のデュッセルドルフへ、長友はインテルからトルコのガラタサライへと向かった。現在のヴァイッド・ハリルホジッチ率いる日本代表は、4年前のザックジャパンと違ってスタメンが固定されていないため、ワールドカップのピッチに立つためにはクラブで出場機会を得ておくことが最低条件になると選手たちも理解している。シーズン途中の冬に移籍することはリスクも大きいが、原口と長友も危機感から移籍を決断したのだろう。

原口はブンデスリーガ1部から2部への移籍となり、これだけを聞くとステップダウンのようにも思える。しかしこの移籍は決してネガティブなものではない。1部の方が質の高いサッカーを経験できるのは間違いないが、原口の所属していたヘルタは中堅クラブだ。防戦一方になる機会も多く、これまで原口は左サイドを上下動する献身性を何より評価されてきた。その一方で左サイドハーフとしてゴールに絡む機会が少なく、2014-15シーズンからプレイしているブンデスリーガでは僅か4得点しか決めていない。原口個人の課題でもあるが、ヘルタでプレイしている以上得点チャンスが限られるのは仕方のないことでもあった。

しかし移籍したデュッセルドルフはブンデスリーガ2部で首位に立っているチームだ。2部でのプレイにはなってしまったが、ヘルタに在籍していた頃よりも攻撃の時間は確実に増える。原口もその期待に応えてカイザースラウテルン戦で1ゴール1アシスト、続くザントハウゼン戦でも1アシストを記録している。残念ながらザントハウゼン戦で頭部を強打したことが原因による脳震盪で離脱となってしまったが、デュッセルドルフでのスタートは期待以上のものがあった。

出場機会を確保することはもちろん、攻撃面を磨く環境が整っている。またデュッセルドルフも首位には立っているものの、得点数は35点とあまり多くない。2位のニュルンベルク、3位のホルシュタイン・キールはともに43点を記録しており、デュッセルドルフの得点数は10位ウニオン・ベルリンよりも4点少ない状況なのだ(2月20日時点)。

1部昇格を確実なものとするためには得点力アップが不可欠で、原口には攻守の献身性よりもゴールに絡む仕事が期待されている。1部の中堅クラブで守備にばかり走っているよりは、2部の上位クラブで攻撃的に振る舞えた方が良いと考えることもでき、デュッセルドルフへの移籍は面白い判断だ。

長友のオーバーラップはガラタサライの新たな武器となった photo/Getty Images

攻撃的に振る舞えるという点ではガラタサライに移籍した長友にも同じことが言える。ガラタサライはトルコ1部のシュペル・リグで首位を走っているチームで、当然ボールを支配する時間が長くなる。すでに長友のオーバーラップがチームの武器になりつつあり、ガラタサライのように攻撃の時間が長くなればなるほど個性を活かしやすい。

長友は名門インテルの一員として200試合以上に出場した実績を持っているが、タイプ的にはセリエAの文化にあまり合っていない選手とも言える。イタリアではサイドバックに守備的要素が求められることが多く、近年は長友のオーバーラップにも制限がかかっていた。

しかしガラタサライではその攻撃性を存分に発揮することができ、原口同様に攻撃面での貢献が求められている。トルコ最高のサイドバックとして圧倒的なスピードを武器にサイドを支配することこそクラブが期待していることで、名門インテルでのプレイにこだわりすぎるより欧州5大リーグを離れても自身の特性を活かせる環境でプレイする方がワールドカップへ良い準備となるはずだ。ガラタサライへの移籍は成功と捉えるべきだろう。

慣れ親しんだホームを離れ井手口は未知の世界へ

慣れ親しんだホームを離れ井手口は未知の世界へ

井手口を保有しているのはイングランドのリーズ・ユナイテッド photo/Getty Images

出場機会減少の危機感から移籍を決断した2人に比べ、日本のサッカーファンを驚かせる決断を下したのが井手口だ。井手口はガンバ大阪で絶対的な存在となり、日本代表でもハリルホジッチから信頼されている選手の1人だ。

このままガンバ大阪でプレイを続けていれば問題なくロシア行きの切符を掴めたことだろう。21歳という年齢を考えても海外挑戦を急ぐ必要はなく、ワールドカップが終わってからでも遅くはない。ワールドカップで活躍できれば、さらに多くのクラブからオファーが届いたかもしれない。しかし井手口はあっさりとプレミア・チャンピオンシップ(イングランド2部相当)に所属するリーズ・ユナイテッドへの移籍を決断し、現在はスペイン2部のクルトゥラル・レオネサにレンタル移籍している。危機感による移籍ではなく、ワールドカップまで5か月の段階で挑戦の移籍に踏み切ったのだ。

では、そんな井手口には何が求められているのか。まだ出場機会があまり多くないが、井手口はクルトゥラル・レオネサでボランチを任されている。違いはガンバ大阪や日本代表でプレイしていた時のようにゴール前まで駆け上がって攻撃参加する機会が少なく、まずは中盤の底からのゲームの組み立てが求められていることだ。

井手口はロングボールなども交えて求められた仕事をこなしているものの、ゲームメイクの部分にはまだまだ課題がある。気になるのは井手口が利き足のヘビーユーザーという点で、全てのことを右足でやろうとする傾向にある。利き足1本でもワールドクラスの選手になっている者もいるが、井手口の場合はサイドへのボールの展開が偏るなど問題を抱えている。井手口がよりハイレベルなボランチへ成長するにはトラップ時の体の向きやターンの早さと正確性、ポジショニングやゲームを読む能力など磨くべき要素が多い。現在の起用法は井手口の成長を促すうえでピッタリと言える。

また、守備面にも課題がある。日本代表ではインサイドハーフやトップ下など高い位置で起用される機会も多いが、クルトゥラル・レオネサでは最終ラインの前でフィルター役をこなさなければならない。常にアンカーが自身の後方にいるわけではないため、スペースの管理が求められる。井手口は人に対しての守備は強いが、スペースを埋める作業には課題がある。まだチームメイトと連携が取れていないこともあるが、クルトゥラル・レオネサでは何度か守備面で上手く立ち回れない場面もあった。ゲームメイクと守備の質を高めなければ、ポジションが保証されているとは言えない状況だ。

あの豪州戦を超える力強さを手に入れるには、原口、長友、井手口の成長は不可欠だ photo/Getty Images

原口、長友が即戦力として結果が求められているのに対し、井手口は修業に近い状況ということができ、この移籍が成功するかは未知数な部分が多い。慣れない初めての海外生活に戸惑う部分も多いはずで、ワールドカップまで時間がないことも考えると大きなリスクがある移籍と言える。

この3人はワールドカップ出場を決めた昨年8月のオーストラリア代表戦で大活躍したことも記憶に新しい。長友は浅野拓磨のゴールをアシストし、原口は泥臭いプレイで井手口の豪快なゴールへと繋げた。この3人が揃って今冬に移籍の決断を下すこととなり、まずはこれがワールドカップにどう繋がるかが楽しみだ。即戦力としての活躍が求められる環境に移った原口、長友、0からのチャレンジを選んだ井手口。彼らが再び輝くとき、日本代表はさらに逞しさを増すに違いない。

文/冨田 崇晃(theWORLD)

theWORLD195号 2018年2月23日配信の記事より転載

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