【特集/プレミア6強戦国時代3】マンCではこれまでの戦術と違う!? ペップがカウンターを軸にする2つの理由

ビルドアップとフィニッシュからペップ・サッカーを解明

ビルドアップとフィニッシュからペップ・サッカーを解明

ペップはシティで新たなスタイルに挑戦する photo/Getty Images

ジョゼップ・グアルディオラ監督のチーム作りは2つに分けると理解しやすい。GKも含めた後方からのビルドアップで半分、そこからフィニッシュへ持っていくアプローチが半分。この2つを巧みにリンクさせて勝利へのプレイ循環を作る。

ビルドアップのところは妥協がない。必ずボールを確保して前線へつなげる 。 イングランド代表GKジョー・ハートでも、ビルドアップの点で不十分と判断すれば迷わず放出。相手のプレスに嵌められないよう分析し、有効なポジショニングとパスの回し方を用意する。バルセロナ、バイエルン・ミュンヘン、シティと、ペップの率いた3チームはビルドアップに関してはほボ同じといっていい。サイドバックがボランチ化するやり方などは、バイエルン時代に使っていたものをシティでもそのまま採用している。

バイエルンで遊軍的な働きをしたダビド・アラバの役割は、アレクサンダル・コラロフが受け持つことになりそうだ。選手たちの飲み込みも早い。ただ、まだ若干おぼつかないところも散見され、プレミア自体がプレッシャーの速いリーグということもあり、 バルセロナやバイエルンのときほどの完成度には至っていない。

バルセロナ、バイエルンにはない シティだけが持つ武器とは

バルセロナ、バイエルンにはない シティだけが持つ武器とは

シティのカウンターアタックではデ・ブライネが大きな存在に photo/Getty Images

フィニッシュへのアプローチは、ビルドアップとは対照的に「型」がない。なぜならアタッカーの特徴が最優先になるからだ。ビルドアップは数的優位を前提に、崩しの部分は質的優位を重視している。

バルセロナ時代のアプローチはリオネル・メッシの「偽9番」だった。 ウイングを高い位置に張らせ、相手のディフェンスラインを押しとどめた。 サイドバックが押し込まれれば、センターバックはそれより高い位置をとれないので必然的にディフェンスラインの位置が深くなる。そして、メッシが最前線を離れて浮いたポジションをとる。メッシの突破力、シュート力、ラストパスの能力を最大限に引き出すための仕組みである。

バイエルンにはアリエン・ロッベン、フランク・リベリ、キングスレイ・ コマン、ドウグラス・コスタなどの強力なウイングと、ロベルト・レヴァンドフスキ、トーマス・ミュラーらクロスボールを得点に変えるFWがいた。 その特徴を生かすため、ウイングが前を向いてドリブルを仕掛けられる状況を作った。サイドで1対1を作ることで、強力なウイングとクロスボールに強いFWを生かした。

では、シティではどうするのか。ラヒーム・スターリング、ノリート、レロイ・サネと、ワイドアタッカーの人材は豊富。1対1で勝てるFWがいるのはバイエルン時代と似ている。ただし、シティにはハイクロスを得点に変えるFWがいない。セルヒオ・アグエロの得点能力を生かすには低いクロスがメインになってくる。

バルセロナ、バイエルンと異なるシティの武器をあげるならカウンターアタックだ。バルセロナ時代は、メッシに良い形でパスを入れればチャンスは作れるので、それほどカウンターを仕掛けなかった。バイエルンではカウンターの回数は増えたが、シティにはバイエルン以上にカウンター向きの選手と状況がある。デ・ブライネはスペースを縦へ持ち出す推進力に優れ、精度の高いスルーパスを出せる。シティのFWは軒並み速く、デ・ブライネがいるのでカウンターは強力な武器になっている。

しかし、カウンターをメインに据えるのは、これまでのペップの戦術と矛盾する。ボールを保持することでコンパクトな距離を保ち、敵陣でボールを失ってもただちにプレスをかけられる。攻守を敵陣で完結させてしまうのが理想だった。ただ、シティはカウンターを躊躇しない。バルセロナよりもバイエルンよりも、カウンターのチャンスを逃すまいとしている。カウ ンターの機会が減少するポゼッションを変わらず重視するのに、カウンターを軸にする......。これは何を意味しているのか。

カウンター攻撃を軸にUCL&プレミア優勝争いへ

カウンター攻撃を軸にUCL&プレミア優勝争いへ

古巣バルセロナなどUCLでは様々な強豪と激突する photo/Getty Images

これまでのペップのスタイルは、1つの攻守循環で押し切ろうとしていた。 おそらくシティでは、2つの循環を結び合わせるつもりなのだ。つまり、従来のポゼッション&前進守備だけでなく、 カウンターの打ち合いを覚悟している。カウンターが途中で不発に終わると、カウンター返しを受ける。そして、それはシティの次のカウンターチャンスにつながる。ペップはこれまでよりもリスクを冒そうとしているようにみえる。

理由の1つはUEFAチャンピオンズリーグだ。UCLで優勝するには、 レアル・マドリード、バルセロナ、バイエルンをどこかで倒さなければならない。いずれもシティが圧倒できるような相手ではない。そのために打ち合いに強い体質を作ろうとしているのではないか。もう1つは、プレミアがこれまでと違い優勝を狙うライバルが1つや2つではないこと。戦い方の多様性はカギになってくる。ペップは自分の選手だけでなく、対戦相手とも化学反応を起こす。より厳しい環境の下で、シティはより大きなチームになっていくはずだ。

文/西部 謙司

theWORLD 2016年11月号の記事より転載

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