アーセナルに今夏8人の即戦力を連れてきた恐るべき手腕 “敏腕すぎる”SDベルタの巧みな交渉術に称賛

アトレティコでもその敏腕ぶりを発揮していたベルタ Photo/Getty Images

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インカピエ獲得にも交渉術が生きた

ヨーロッパの移籍市場がおおむねクローズしたが、アーセナルは選手の獲得において特に積極的に動いたクラブのひとつだ。GKケパ・アリサバラガ、DFクリスティアン・モスケラ、MFマルティン・スビメンディ、MFクリスティアン・ノアゴー、MFエベレチ・エゼ、FWノニ・マドゥエケ、FWヴィクトル・ギェケレシュに加えて、期限ギリギリでレヴァークーゼンからDFピエロ・インカピエを加入させた。実に8人の即戦力クラスの選手たちが加入することになり、アーセナルのスカッドは一気に厚みを増した印象だ。

選手獲得を主導したSDのアンドレア・ベルタは昨季末にアーセナルへの加入が発表されたが、アトレティコ・マドリードでも発揮していたその手腕は移籍市場で猛威をふるった。前任のエドゥ・ガスパールと異なるのは、エドゥが男子チームと女子チーム、そしてアカデミーの包括的責任を負っていたのに対し、ベルタの役割が今のところ男子のトップチームの編成だけに絞られていることだ。ベルタは男子チームだけに集中することができ、チームはその恩恵を受けることができたといえる。

『The Athletic』は、その交渉力が称賛されていると報じた。それが現れた一例が、ギリギリで実現したインカピエの移籍だという。
クラブはポルトへの移籍が進行していたヤクブ・キヴィオルの状況に合わせてインカピエとの交渉を進める必要があったが、ベルタはこれを同時並行でやり遂げた。特にベルタの交渉術が発揮されたのは、インカピエ獲得のためのキャッシュフローに関してだ。

インカピエは実質5200万ユーロ(4500万ポンド)で獲得されたが、今夏すでに2億5000万ポンドもの移籍金を費やしていたアーセナルは、同じ会計年度にその金額を支払うことを避けたかった。通常の買取義務つきローン契約であれば、契約の成立は保証されているため、契約は今年度の会計に計上されてしまう。買取オプション付きとすれば来年度の会計に計上されるが、レヴァークーゼンにとって買取の保証がなく満足いく取引にはならない。そこでベルタは一計を案じたという。

ベルタは、アーセナルとレヴァークーゼンの両クラブが完全移籍のオプションを保有するという形を提案したのだ。アーセナルが買取オプションを行使しない場合でも、レヴァークーゼンが行使すれば買取を強いることができる。事実上の完全移籍だが、会計は来年度に回すことができる。キヴィオルに関しても同じ取り決めがなされたようだ。ベルタのこういった創意工夫は、アーセナルの同僚たちを感銘させているという。

売却に関してはローン移籍という形が多く現時点での収入にはあまりなっておらず、「とりあえず整理した」という印象も否めないが、ベルタのおかげでアーセナルはスカッドの大幅強化に成功した。その働きぶりはまさに“敏腕”といえるが、あとはミケル・アルテタ監督と選手たちが結果を出すだけだ。

いよいよアーセナルはプレミア制覇を成し遂げるだろうか、ベルタの働きで下地は整った。

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