瀬古歩夢は高校生のころからC大阪トップで活躍し、最終ラインで落ち着いたボールコントロール、正確なフィードを見せていた。2021年には東京五輪を戦うメンバーに選出され、大会後の2022年1月には日本代表に初招集された。
ところが、ちょうどこの時期にスイスのグラスホッパーへの移籍話が進行しており、代表合宿への参加を辞退。タイミングが合わず日本代表デビューはお預けとなっていたが、1年後のウルグアイ戦でようやく先発することとなった。
任されたポジションは左センターバックで、板倉滉とコンビを組んだ。足元が正確でボールをさばけるのはもちろん、対人プレイの強さも魅力。ウルグアイ戦では思い切りのいい深いタックルで相手を倒すシーンもあり、メンタルの強さを感じさせた。
グラスホッパーは3バックが基本で、瀬古歩夢は左右のセンターバックだけでなく、中央で出場することもある。さらに、チームが4バックで戦ったときにはアンカーを務めたこともあり、確実にプレイの幅を広げている。
森保一監督もこのあたりの能力に注視しており、6月のペルー戦では後半途中から遠藤航に代わって出場し、ボランチを務めている。ただ、その直後にマークを外してミドルシュートを許して失点しており、これは今後への反省材料となった。
「(代表に)食い込んでいくチャンス。競争に入っていかないと」
3月のシリーズで瀬古歩夢から聞かれた言葉である。左右両足を遜色なく使えて、センターバックとボランチができる。身体が強い選手が多いスーパーリーグ(スイス)でコンスタントに出場を重ね、経験を積んでいる。守備での安定感、簡単にシュートを打たせない厳しさがより磨かれたなら、日本代表での出場が増えていくに違いない。
3月のコロンビア戦で左サイドバックに抜擢されたのが、バングーナガンデ佳史扶だ。利き足である左足を駆使してのボールタッチが正確で、縦に攻め上がる迫力があり、自分でボールを前に運べる。FC東京では経験豊富な長友佑都を抑え、左サイドバックのポジションを獲得してシーズン当初から出場していた。サッカー選手として良い流れにあるなかコロンビア戦を迎えたが、難しい戦いを強いられた。このシリーズから日本代表はサイドバックが中央に入って攻撃を組み立てるスタイルにトライしており、バングーナガンデ佳史扶にも偽サイドバックの動きが求められた。斜めに攻め上がる場面が何度か見られるなか、持ち味である縦への突破力、自分で運ぶドリブルを見せる場面が少なく、59分には右ヒザを痛めてピッチを退いている。
「 戦術的にチャレンジしているところがあるなか、新たに組んだ選手もいました。新しい選手、新しい戦術で融合しないといけないです」(コロンビア戦後の森保一監督)
21歳のバングーナガンデ佳史扶はパリ五輪世代であり、今後はそちらがベースになるかもしれない。ただ、その能力を考えればゆくゆくは日本代表ということになる。右ヒザの負傷から復帰後、5月下旬に今度は脛腓靭帯を痛めていまは戦線離脱中となっている。
スピード、パワー、キレがあるため、自身が考える以上に下半身へ負担がかかっているのかもしれない。まずはコンディションを整え、強い身体を作ってピッチに戻ってきてほしい。