[水沼貴史]W杯でヒーローとなった堂安律はブンデス後半戦も輝ける 4年後へ向けてさらなる進化を

水沼貴史の欧蹴爛漫074

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スペイン戦で強烈なシュートを叩き込んだ堂安 photo/Getty Images

2ゴールも悔しさ残ったカタールW杯

水沼貴史です。2022年のビッグイベントであったFIFAワールドカップ・カタール大会も先日、無事に幕を閉じました。約1カ月にわたって繰り広げられた激闘の末に、頂点に立ったのはアルゼンチン代表。あのリオネル・メッシが唯一手にしていなかった栄光を勝ち取り、世界中の感動を呼びました。

シーズン中の開催により、怪我などで欠場を余儀なくされた選手たちもいましたが、コンディションの良い選手も多く、素晴らしい大会でした。緊迫した試合や激しい試合も多かったですし、特にグループステージでは3戦目が終わるまで突破がわからない試合がほどんどだったので、これほどの大会に巡り合うことはなかなかないかなと思えるほど充実した大会でした。個人的にもとっても面白かったです。

日本代表に関しては、自分たちが目標に掲げていた「初のベスト8」は達成できませんでしたが、今回はただの「ベスト16止まり」ではありませんでした。優勝経験国であるドイツ代表、スペイン代表を破ったというのは、世界にも衝撃を与えたでしょう。そんな中で、特にインパクトを残した選手のひとりが、この強豪2国からゴールを奪った堂安律です。今回は、ブンデスリーガのフライブルクでプレイする彼に関して、少々お話をしたいと思います。
まず堂安のスゴいところは有言実行するところです。何かのインタビューで「自分は気にしいだし、心配性だし……」のようなことを言っていたのですが、そういった自分に対して「◯◯をやらなきゃダメだ」と言い聞かせて、自分を追い込むことができる。それが強みだと思いますし、今回のW杯でも結果へのこだわりを口にして、実際にピッチに立ったら結果を残して見せました。ひとつひとつのプレイを見ても、強い気持ちが前面に出ていることがわかります。

ただ、2ゴールを挙げたものの、本人として決して満足のいくW杯ではなかった、悔しさの残った大会だったでしょう。途中出場も多く、スタメンで出た試合ではチームを勝利へ導くことができなかったですからね。常に上を目指している堂安だけに、「スタートから出ても結果を残せる力をつける」だったり、「もっと決定的な仕事かできる」だったり……。こういったところにフォーカスしているんではないでしょうか。早くも4年後が非常に楽しみです。

ブンデスリーガで2位につけるフライブルクで主力として活躍 photo/Getty Images

後半戦ではチームとともにより高みを目指せ

そして、4年後の飛躍へ向けて重要となってくるのが、所属クラブでの活動です。堂安がプレイするフライブルクは現在、ブンデスリーガの2位(15試合消化して9勝3分3敗・勝ち点「30」)につけています。首位のバイエルン・ミュンヘンとの勝ち点差は「4」。堂安はこの好調なチームで、加入1年目ながら主力としてここまで全15試合に出場しており、2ゴール3アシストを記録しています。また、フライブルクはヨーロッパリーグでも無敗でグループリーグ突破していて、堂安も5試合に出場して1ゴール1アシストと、しっかり結果を残しています。すでに定位置を勝ち取ったといっていいと思います。

日本代表では出番が限られていた堂安のW杯での活躍に、驚きを隠せないようなファンの声がちらほら聞こえていましたが、普段からブンデスリーガの解説をさせていただいている私からすれば正直、今シーズンのここまでのプレイを見ていたら「まぁ活躍するよね!」、「結果を残して当然!」という感じでした。自信を持って素晴らしいシーズンを送っている中で迎えたカタールW杯でしたからね。

クリスティアン・シュトライヒ監督が長年築き上げてきたフライブルクというチームは、ハードワークが求められるチームです。試合中も非常に高い強度を見せていますし、試合でこれだけできるということは普段のトレーニングからそれなりのことをやっているはず。こういった厳しいトレーニング加えて、現在のブンデスリーガの順位を考えると、フィジカルや戦術面などだけではなくメンタリティも高いレベルを維持できるため、自分の身になる環境が整っていると思います。

さらに、スケジュールも堂安にはプラスに働いているかもしれません。W杯終了後すぐに再開されたプレミアリーグに対して、ブンデスリーガは1月の後半までウィンターブレイク期間でお休み。過密日程による疲労の回復はもちろんですが、W杯期間中も所属クラブの活動は行われているわけで、代表活動でチームを離れていた選手よりも、この期間に頭角を現した選手を監督がリーグ戦再開後から起用するケースもあると思います。特に、代表選手が決して多くはないフライブルクのようなクラブであれば、この中断期間により一層練度を高めたチーム編成で試合に臨みたいと考えるのは至極妥当かもしれません。

しかし、堂安はリーグ戦の再開へ向けて、しっかりチームメイトと合わせられる期間が1月の前半にある。これは非常に大きいことだと思います。代表活動でチームを離れていたら代わりに出た選手が活躍し、調子が悪いわけではないのに「帰ってきたら居場所がない」、チームが連勝して「監督がスタメンを変えづらくなった」という話もなくはないですからね。ブンデスは色んな意味で「整えやすい」日程と言えるでしょう。

さらなる飛躍を遂げるために、今季後半戦で求められるのは「結果」。本人も感じているかもしれませんが、やはり得点という部分ではこだわってほしいです。カタールW杯を通じて「自分の型」も周囲に知られたはずです。そこを抑えにくる対戦相手もいるでしょうが、うまく駆け引きをすれば優位にも立てるはずで、より強い武器にしてほしいです。

ローマやアーセナル、マンチェスター・シティなど欧州各国のビッグクラブが興味を示しており、移籍の噂もあります。ただ、チームの現状や加入1年目ということを考えると、今冬の移籍市場で無理に移籍する必要はない。今いる環境が素晴らしいので、あと半年はフライブルクで腰を据えてプレイし、しっかり結果を残すのが大事だと思います。欧州5大リーグでチームの主力として、欧州コンペティションの出場権を争うことはなかなか経験できることではないでしょうし、いい経験になるはずです。そうすれば、自ずとステップアップも現実のものとなるでしょうからね。

PSV時代の同僚で、ともにW杯でヒーローとなったオランダ代表FWコーディ・ガクポ(リヴァプールへの移籍が決定)の活躍も、もしかしたら良い刺激になっているかもしれません。後半戦はチームとともにより高みを目指してプレイし、堂安が今後さらに進化していくことを期待しています。

それでは、また次回お会いしましょう!

水沼貴史(みずぬま たかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。引退後は解説者やコメンテーターとして活躍する一方、青少年へのサッカーの普及にも携わる。近年はサッカーやスポーツを通じてのコミュニケーションや、親子や家族の絆をテーマにしたイベントや教室に積極的に参加。YouTubeチャンネル『蹴球メガネーズ』などを通じ、幅広い年代層の人々にサッカーの魅力を伝えている

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