[カタール通信 01]現地取材はトラブルいっぱい カタールに乗り込んだライターたちの苦労とは!?

ラクダが整列するアルベイト・スタジアム前 photo/Kenji Iizuka

海外取材にはトラブルが付きものである

 経験を重ねたつもりのフリーランサーはいろいろと対策を練ってカタールに乗り込んでいる。いまほど円安が進んでいなかった時期にFIFAから案内のあったメディアホテル&アパートから吟味を重ね、ここだという一部屋を確保。キッチン付きのアパートを先発隊3人、期間中最大5人でシェアし、現地スーパーで食材を購入してできるだけ自炊して暮らす計画で乗り込んだ。

 しかし、計画はだいたいうまくいかないもので、アパート到着の約1時間後にトラブルが起こった。各自が荷物をほどき、しばしくつろいだのちに2つあるシャワールームへ分散して入った。ほどなくして悲鳴が聞こえてきた。

「ちょっと、大変!」
声の主は同居する還暦を越えたベテラン・ライターで、身体にバスタオルを巻いて部屋の床をマジマジと見つめていた。一目でわかる水浸しだった。排水トラブルで流れないどころか、逆流して溢れていた。もうちょっとでスーツケースも浸水するというところまできていた。こういうときに慌てないのが経験を重ねたつもりのフリーランサーの集まりで、部屋中のタオルを集めて応急処置などはせず、一人がすぐにフロントに走り、ルームクリーニング担当をともなって帰ってきた。被害状況および現状確認である。

いきなり部屋変更かと思われたが、4人~5人の寡黙な精鋭部隊によって排水トラブルは解消され、水浸しの床も清掃されていった。その間、約1時間である。バスタオルを身体に巻いたままだった還暦を過ぎたライターはいつの間にかTシャツに着替え、キッチンでお湯を沸かし、コーヒーを片手に作業が終わるのを待っていた。さすが、ベテランである。

海外取材ではさまざまなトラブルが発生する。宿泊先に関する不具合はとくに多く、別アパートに滞在する中堅ライターによれば、蛇口を普通にひねったら火傷しそうな熱湯が出てきた。さっそくフロントに伝えると、「そんなはずはない。どれ……アッチィ!」というコントのような光景が繰り広げられたという。

経験は財産であり、よほどのことがない限りフリーランサーは動揺しない。しかし、カタールW杯では立て続けにトラブルが起こる。

「ダメだ、この大会!」

 開幕戦が行われたアルベイト・スタジアムの駐車場でベテラン・ライターが夜空に向かってこう叫んだのは、排水トラブルの翌日である。これに関しては、次回またお伝えしたい。

文/飯塚 健司(ザ・ワールド編集ディレクター)

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